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千葉学長第2期就任挨拶 ■    ■    ■    ■    ■    ■    ■    ■    ■


『学都・岡山大学』の創成に向けて

国立大学法人岡山大学長 千葉喬三

 このたび,平成20年4月1日付けで,文部科学大臣より国立大学法人岡山大学長を拝命しました。 今後3年間,引き続き本学の舵取りの任に就きますので,構成員の皆様には従前にもまして ご支援,ご鞭撻をお願いいたします。
 改めて申すまでもなく,平成16年の国立大学法人化は,単なる名称や組織管理体制 の変更にとどまるものではありません。個々の大学にとっては,その浮沈にも関わる厳し い環境が現出したことを常に意識しておかねばなりません。
 確かに,高等教育や学術研究は国家的な課題ではありますが,国立大学時代と異な り,それを全ての国立大学法人がほぼ同じ条件で担い,同じような成果が生まれることは 想定も期待もされていないと考えておくべきです。国家・社会が想定しているのは,大学 間に厳しい競争的関係を強要することにより,大学はそのストレスによってより新しい成 果を生むだろうという期待です。
 このような状況は世界的にはもはや常識化しており,一人わが国の大学とその構成員 が駘蕩とした夢想の中にいたようです。国家のため,また大学のためにも早く夢から覚め ねばなりません。「知」を巡る競争に勝ち残ったもののみが,国も大学も制する時代になっ ているのです。
 私は,平成17年6月に学長に就任して以来,本学の存続・発展を期して,運営費交付金第12 位の大学に相応しい大学となるべく,その運営プロセスの基軸として,P(計画)・D(実行)・C(点 検・評価)・A(改善)サイクルを意識的に導入し,人材育成・学術研究・管理運営の各領域におい て,様々な戦略的な施策の立案とその実現に向けて努力をして参りました。この間に理事各位な らびに教職員のご理解とご協力により挙げました成果は,文部科学省はじめ学外から高い評価を 得ており,確実に本学のステイタスを一段押し上げることができたと考えております。
 平成22年度からは法人化二期目が始まります。これは本格的な大学間競争の幕開けでもあり ます。本学も本年度からの2年間を,法人第二期への助走期間としてとらえ,第一期の成果を基 礎に,新たな挑戦を始めたいと思っています。挑戦する目標は,「学都・岡山大学」です。大規模 総合大学である特性を活かし,本学を中国四国地域の「学都」(Center of Regional Excellence in universities in Chugoku-Shikoku area)」として機能させるという構想です。そもそも「都」の本来の 意味は,「集める」とか「統べる」であり,「学都・岡山大学」は岡山大学が中国四国地域の 学術センターとして機能することを意味しています。本学が真に社会から期待される大学 となる道はこれ以外にないと確信します。
 古来より,物事を成就させる要件として,天の時,地の利,人の和が求められてきまし た。ここで,天の時とは国立大学が法人化され個別に特性を出さねばならないこと,地の 利は大学のロケーションの利便性,人の和とは学術研究遂行上の人材資源量,をそれぞ れ指すと考えれば,岡山大学は,中国四国地域においてこの3要件を具備する唯一の大 学であり,「学都」としての資質を十分備えています。
 ただ,いくら潜在的に条件を備えているといっても座していては目標は達成されません。
 今後,本学が自他共に認める「学都」となるために,私は以下の諸点について努力して いかなければと考えています。


【教育・学生支援】             【研究・社会貢献】             【大学運営・管理】


【教育・学生支援】
 教育領域における大学の使命は,社会が要望する優秀な課題発掘・解決型人材を育て社会 に供給することに尽きます。そのためには,教育に関して高い質の保証が不可欠の要因となり ます。本学は,学士課程教育の質の向上による信頼される学部教育の実現を図ると共に,大 学院においては,インタ−デシプリナリな総合大学院教育を推進し,中四国の大学院教育の中 核拠点大学としての学都・岡山大学とするための基盤の確立を目指し,次の事項を強力に推 進します。

  1. 社会や経済動向を踏まえた多様なカリキュラム改革による国内外から優秀な学生の確保
     我が国から世界に通じる多様で実践且つ創造的なカリキュラム(課題発掘・課題解決型の教育システム) の構築を行い,国内外の優秀な学生の確保に努めます。
  2. 厳しい卒業(修了)認定システムの導入による教育の質保証
     卒業認定を厳格にするGPA(Grade Point Average)制度を導入するなど,世界に通じる教育評価システムで 学生の質の向上を図り,本学で学生の実力を伸ばす信頼される教育を実 施します。
  3. 学士教育における教養教育及び専門教育内容の質的向上と充実
     文系理系の区分にとらわれない多様な知の継承を目指した教養教育(教養ある社会人の 育成),そして専門分野に関する基礎的な教育や社会で生きていくための基礎的能力教育 の質的向上を目指します。
  4. インタ−デシプリナリな総合大学院システムの整備と教育プログラムの質的充実
     他大学からの優秀な大学院入学者を呼び込める,異分野融合型大学院教育カリキュラム 等の学位プログラム中心のコース等を設置し,組織的・体系的な高度専門職業人教育を徹 底した,教育の質に重点を置く魅力ある「インターデシプリナリな総合大学院大学」を目指しま す。
  5. 学生の勉学意欲向上のための支援体制と学習及び生活環境整備の充実
     奨学金,RA,授業料免除制度の学部生や大学院生への拡充など,学生の経済的支援や 学習環境整備として図書館や総合情報基盤センターの充実を通じて学生の生活安定や学 習意欲の向上に努めます。
  6. 教員の教育力向上に対する支援体制の充実
     全学にわたりファカルティ・ディベロップメント(FD)の義務化と教育手法に関する研究プロ グラムの開発等を支援し,教員の採用・昇任の際に活用し,教育に力点を置く教員の活躍の 機会の拡充を図ります。


【研究・社会貢献】
 学術研究活動は大学の知的活動の源泉であり,その成果は大学の格付けやブランド力に直 結し,各大学に対する「法人評価」においても,研究実績が主たる評価軸となり,次期中期計画 の予算配分に反映される可能性が高い状況にあります。大学における基盤的な学術研究活動 は,教員の内在的な興味や関心と密接に関わるため,大学はそのための環境整備と競争的研 究資金獲得の支援を行うことを主体とします。

  1. 先端的研究プロジェクトの認定と経営資源を重点的・戦略的に投入する研究体制の整備
     競争的環境のもとに,大学の研究ブランドなる先端・先進的プロジェクトを大学資源の選択 と集中により全学展開する組織である「プロジェクト研究組織」の構築とその運営を行います。
  2. 研究推進産学官連携機構の整備とその活動の拡充
     全学的な学術研究推進及び産学官連携活動支援組織の実質化に向けて,研究推進産 学官連携機構の部局化とその整備を行います。さらに,研究シーズの創出や活用に向け て,目利きとしての専門家を学内外から積極的に登用します。
  3. 知的財産(特許)の質的向上と知財を基軸とした共同研究等の促進
     大学保有特許を世界に通用する基礎特許及び早期活用可能な特許に限定することにより, 特許の質の向上と知的財産をベースとした共同研究などの展開を推進します。
  4. 国内外の研究機関とのグローバル研究ネットワークの構築による研究の多様化と協働
     各部局や附置研究所等のオリジナルな基礎・先進研究を基礎とした研究拠点の形成を学 内外へ展開し,グローバルな研究ネットワークの構築と多様な研究展開や人的交流を行いま す。
  5. 学内外の人材や包括連携を活用した組織対応型産学連携による研究交流の強化
     教員個人の人脈による従来の共同研究(賜り型研究)以外に,企業などとの包括連携等を 通じた組織対応型(マニフェスト型)共同研究を展開することにより,研究交流の強化と外部 人材の活用を実施します。
  6. 大学の各種資産や成果を活用した社会価値の創成と社会貢献の促進
     本学における様々な研究成果を,社会的価値のあるものへの橋渡しや,地域社会への還 元・貢献に活用します。また,科学技術における成果を社会への理解を得るよう活用し,青 少年の関心を引く活動等を推進します。


【大学運営・管理】
 国立大学法人に対する運営費交付金の削減や競争的環境下での教育研究支援事業の拡 大など,大学運営が財政的に圧迫される傾向は今後さらに顕著になると考えます。このような 状況下で大学をさらに発展させるために,大学はよりレベルの高い「知の経営体」に脱皮しなけ ればいけません。そのための対応として以下の諸措置を講じます。

  1. 全ての経営資源の再点検に基づき経費全般の縮減のための全学体制の構築とその実施
     本学財政の健全化には,経営資源の再点検に基づいた経費全般の削減策の数値目標 を決めて,これらを可視化した上で,実施評価します。その成果に応じて,各部局等にイン センティブを付与します。その対象は,人件費,適正な人員配置,物品購入,システム構築 費,施設の改修,省資源,省エネルギー,リサイクル等を含みます。
  2. 「優秀な学生を育てる」視点(教育の質保証)での教育経費配分に高い優先順位の設定
     本学は,教育・人材育成に視点をおいた活動を行う観点から,学内経費を極力教育分野 に投資する方向での検討とその実施を行います。
  3. 教員の教育と研究のエフォ−ト管理による教員機能分化と教育力・研究力の向上
     教員の効果的教育研究能力発揮のために,従来の教育研究教員組織と研究に特化した プロジェクト研究教員組織を全学管理で構築し,教育と研究等のエフォート管理による教員 の機能分化を実施します。
  4. 外部教育・研究資金導入促進に向けての支援組織と情報網の整備
     全学教育及び研究支援組織の充実(本部組織,各部局組織の連携強化)や国内外サテラ イト組織の充実等で,教育研究情報の収集・分析・活用システムの構築とその運営を行いま す。
  5. 将来のトップリサーチャーを目指す若手・中堅教員に対する支援体制と研究環境の整備
     世界で活躍できる若手研究者・教員の育成のため,テニュア・トラック制の適用とスタートア ップ研究資金の援助や研究スペースの提供を行います。さらに,中堅研究者には, トップリサーチャーとしての大型外部研究資金の獲得支援やサバティカルリーブの導入等に より,研究力の向上を図ります。
  6. 事務力向上を目指した事務職員活動の活性化とその支援体制の整備
     「事務改善の指針」に基づいた,業務の改善,事務組織の再構築,事務職員制度の見直 しや事務専門職の養成など,事務改善を着実且つ継続的に推進し,大学運営の要となる事 務力の向上に努めます。
  7. 全学同窓会の活性化と同窓生を通じた産学連携や学生支援活動の促進
     昨年創立した岡山大学同窓会を整備し,同窓会と本学との連携システムを構築・充実さ せることにより,同窓生を通じた産学連携や学生支援活動の活性化等を図ります。
  8. 魅力ある大学キャンパスの整備による快適なキャンパスライフの提供と支援
     本学図書館時計台を中心とした津島キャンパスの美化・環境整備の統合化と,学生生活 環境向上を意図した鹿田キャンパスの美化整備を行います。さらに,既存の部局建物・文化 財指定建築物や学内史跡等を活用した全学博物館(University Museum)構想の実現を目指 します。
  9. 共同利用施設・設備の活用による研究環境の整備と充実
     学内にある大型施設・設備の学内外有料解放による有効活用を通じて,施設・設備管理 の効率化と新たな研究組織の構築等を行います。
  10. 岡山大学の資産及び経済効果の試算による大学の価値の認識
     文部科学省の地方国立大学の経済効果の試算をベースにすると,岡山大学の生産誘 発額は,約980億円そして雇用創出数は,1万3千人と試算され,岡山県及び岡山市の経 済安定化に寄与しています。これらの事実をもとに,地方自治体による岡山大学支援策の 強化を誘導し,本学の基盤強化に役立てます。

 この他,文部科学省が提案している大学間連携事業や,中国四国地域内において本学を中核 とする連携事業に積極的に取り組みます。さらに,今後社会情勢に合わせて対応しなければなら ないことも種々出来することと思います。また,教職員の皆様からの要望事項も多々あると思われ ます。いずれにしても,岡山大学が輝ける「学都」としての地位を得るためには,不断の改革が必 須です。教職員の皆様には従前にも増してご協力をお願い申し上げ,学長第二期就任のごあいさ つといたします。



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