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国際原子力機関 IAEAと新しいがん治療法に関する協定を締結

 岡山大学と国際原子力機関 IAEA は10 月 26 日、最新のがん治療法であるホウ素中性子捕捉療法(BNCT)について、協定を締結しました。調印式には岡山大学から森田潔学長、山本進一理事・副学長(研究担当)、IAEA から原子力科学・応用局物理化学部 Meera Venkatesh(メーラ・ベンカテッシュ)部長が出席して協定書に署名しました。BNCTに関するIAEAとの協定締結は世界初です。
 森田学長は「ホウ素中性子捕捉療法BNCTの協力協定が締結されたことは、極めて名誉なことです。BNCTは期待の大きいがん治療法であり、現代の素粒子物理学と新しい薬学的な細胞生物学の幸福な出会いがもたらした治療法でもあります。この度の協定が、IAEAとのさらなる連携強化と、BNCTの新たな発展につながることを期待しております」とあいさつ。山本理事は放射線医療分野において広範に知識が共有されることを望むとした上で、「BNCTは医学、薬学、物理学を総合した技術である。我々は、IAEA との本協定を通してこの革新的分野の教育研究に貢献することを目標とする」と話しました。
 また、ベンカテッシュ部長は「IAEA は原子の有するエネルギーを平和と健康及び開発に向けて加速し、貢献することに注力している。がん治療は近年、長足の進歩を遂げているが、未ださまざまな挑戦が必要である。IAEA の加盟国にとって、国際的にも認知された岡山大学のような機関と協働することは意義があると思っている。BNCT は過去 20~30 年はそれ程の進歩をしていない。しかしながら、この 9 月の IAEA 総会において実施したサイドイベント を通し、新規ホウ素薬剤開発と効率的な加速器中性子源の開発があいまって、BNCT の技術を緊急に再評価する必要があることを理解した」と述べました。
 がんの細胞核にまで到達するホウ素薬剤を開発している本学大学院医歯薬学総合研究科の松井秀樹教授は「BNCT は最も将来性のあるがん治療法となるであろう。B-10 を有する薬剤をがん細胞に注入し、中性子線を照射すれば、がん細胞の中のホウ素・中性子反応でがん細胞を殺すことができる」としています。
 本学と IAEA は本協定を締結する以前から協力関係にあります。これまでに、IAEA から専門家を招聘して 2 回の共同シンポジウムを実施しているほか、2015 年には国際ワークショップ「放射線の現在と未来」、2016 年にはシンポジウム「放射線と放射線治療の現在と未来」を開催してきました。これらの活動を通して、BNCT に関する研究、教育 プログラムの確立・導入にとって相互協力は有用であることが証明されています。松井教授とともに研究推進産学官連携機構の市川康明教授(特任)がIAEA とのさらなる協力活動に従事しています。

ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)
ホウ素の同位体・B10をがん細胞にのみ特異的に吸収させ、中性子を照射して核分裂を起こしてがん細胞のみを殺傷する放射線治療法

【本件問い合わせ先】
研究推進産学官連携機構社会連携本部
教授(特任)市川康明
TEL: 086-251-8460

(16.10.28)


協定書に調印したIAEAのベンカテッシュ部長(左)と森田学長、山本理事


関係者による記念写真


IAEA 総会におけるサイドイベント「研究炉と加速器を利用したホウ素中性子捕 捉療法の最近の進歩」の様子(9 月 26 日)