国立大学法人 岡山大学

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Okayama University Medical Research Updates(OU-MRU) Vol.30 発行

2016年11月14日

 本学は10月27日、本学の強みである医療系分野の研究成果について、革新的な基礎研究や臨床現場、医療産業等に結びつく成果を英語で情報発信するWebレター「Okayama University Medical Research Updates(OU-MRU)」をVol.30を発行しました。
 2012年より本学では、研究成果や知的財産活動などを英語で情報発信するWebマガジン「Okayama University e-Bulletin」を年4回発行。国際科学雑誌「Science」を扱うAAAS(米国科学振興協会)のメーリングリストを利用し、世界の研究者等にニュースやトピックスを交えて配信し、本学の海外への情報発信を強化と国際的知名度の向上を推進しています。
 OU-MRUは、e-Bulletinの姉妹誌として、強みある医療系分野の更なる増強と本学研究者が同分野で発表したイノベーティブな研究成果を世界にタイムリーに発信するために発行。
 本号では、大学院自然科学研究科(工学系)ナノバイオシステム分子設計学研究室の妹尾昌治教授らの、がん幹細胞が血管の細胞へ分化して腫瘍内で血管系を形成することをマウスiPS細胞により世界で初めて証明した成果を紹介しています。
 これまで、腫瘍細胞の血管内皮細胞への分化や疑似血管の構成に、がん幹細胞が関与していると考えられていましたが、詳しい関連性は分かっていませんでした。今回、妹尾教授らの研究において、一つのがん幹細胞から血管内皮細胞と疑似血管細胞の両方が作り出され、腫瘍内での血管系が形成されることを、マウスのiPS細胞を用いて世界で初めて証明しました。これにより、腫瘍の血管を標的とする新たな制がん剤開発の基盤を提供し、より効果的な制がん剤開発への応用が期待されます。
 妹尾教授らの研究グループは2012年、iPS細胞からがん幹細胞を世界で初めて作成することに成功しました。その後、産業革新機構による「LSIPファンド」、さらに本学が推進する特別プロジェクトとして文部科学省の支援を受けて、これまでにiPS細胞を使って性質の異なるがん幹細胞を人為的に作成していくことで、多種多様ながん幹細胞を調製できることを示し、この技術の蓄積とさまざまな研究成果を発表して来ました。今後、この一連の研究の下で調製されるがん幹細胞を標準品として用い、がん患者の組織内に存在する細胞との関連を明らかにしていくことで、これまでにない診断アプローチの実現と、それを応用した画期的な「個の医療」につながる可能性があります。将来、多くのがん幹細胞を準備して、制がん剤をスクリーニングする「がん幹細胞パネル」や実験動物モデルなどへの応用も期待されます。今後も、私たちの生命を脅かすがんの制圧を目指し、精力的に研究を進めています。
 本学は、平成25年8月に文部科学省がわが国のさらなる大学研究力向上や国際的な研究競争力強化等のために全国の大学・研究機関から選定した、「研究大学強化促進事業」の選定大学(国内19大学)です。世界で研究の量、質ともに存在感を示す「リサーチ・ユニバーシティ(研究大学):岡山大学」の構築のため、強みある分野の国際的な情報発信を力強く推進していきます。また、強みある医療系分野や関連する異分野科学から生み出される成果を社会や医療現場などが求める革新的技術としてより早く届けられるように研究を推進していきます。
 なおOU-MRUは、文部科学省「研究大学強化促進事業」の一環として実施されています。

Okayama University Medical Research Updates(OU-MRU) Vol.30:Cancer stem cells’ role in tumor growth revealed


<Back Issues:Vol.21~Vol.29>
Vol.21:Combined gene transduction and light therapy targets gastric cancer (大学病院香川俊輔准教授、大学院医歯薬学総合研究科(医学系)石田道拡医師)
Vol.22:Medical supportive device for hemodialysis catheter puncture Combined gene transduction and light therapy targets gastric cancer (大学院医歯薬学総合研究科(医学系)大原利章助教)
Vol.23:Development of low cost oral inactivated vaccines for dysentery (大学院医歯薬学総合研究科(薬学系)三好伸一教授)
Vol.24:Sticky molecules to tackle obesity and diabetes (大学院医歯薬学総合研究科(医学系)和田淳教授、村上和敏医師)
Vol.25:Self-administered aroma foot massage may reduce symptoms of anxiety (大学院医歯薬学総合研究科(医学系)江口依里助教)
Vol.26:Protein for preventing heart failure (大学院医歯薬学総合研究科(医学系)片野坂友紀助教)
Vol.27:Keeping cells in shape to fight sepsis (大学院医歯薬学総合研究科(医学系)西堀正洋教授)
Vol.28:Viral-based therapy for bone cancer (大学院医歯薬学総合研究科(医学系)藤原俊義教授)
Vol.29:Photoreactive compound allows protein synthesis control with light (大学院自然科学研究科(工学系)大槻高史教授)


<参考>
Okayama University e-Bulletin://www.okayama-u.ac.jp/user/kouhou/ebulletin/

【本件問い合わせ先】
広報・情報戦略室
TEL:086-251-7293
E-mail:www-adm@ ※
           ※@の後に adm.okayama-u.ac.jp を付加してください

(16.11.14)


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