国立大学法人 岡山大学

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一酸化窒素はDNA修飾の制御因子であることを発見 特異的阻害薬の開発に成功し、がんなどの疾患治療薬としての応用に期待

2023年02月14日

岡   山   大   学
米 国 ス ク リ プ ス 研 究 所
東  京  薬  科  大  学
理  化  学  研  究  所
鳥   取   大   学
徳   島   大   学
東京大学農学生命科学研究科


◆発表のポイント

  • DNAのメチル化修飾は遺伝子発現を制御していますが、環境やストレスによって変化し、様々な疾患発症に関与しています。
  • この修飾が体内でどのように制御されているかは不明でしたが、一酸化窒素(NO)がDNAメチル基転移酵素の活性を抑制していることを初めて見出しました。
  • 阻害薬の開発に成功し、酸化ストレスによる発がんモデル(腫瘍形成)に対して極めて有効的に作用することを確認しました。

 岡山大学学術研究院医歯薬学域(薬) 上原孝教授と米国スクリプス研究所 スチュアート・リプトン(Stuart A. Lipton)教授、東京薬科大学生命科学部 伊藤昭博教授、理化学研究所生命機能科学研究センター Kam Y.J. Zhangチームリーダー、鳥取大学医学部 岡田太教授、徳島大学先端酵素学研究所 片桐豊雅教授、東京大学大学院農学生命科学研究科 内田浩二教授らの国際共同研究グループは、一酸化窒素(NO)がDNAの脱メチル化を引き起こし、その結果、疾患関連遺伝子が誘導されることを突き止めました。この現象を阻害する薬の開発にも成功し、NOによる腫瘍形成が劇的に抑制されることを明らかにしました。この研究成果は2023年2月4日、英国の総合科学雑誌「Nature Communications」にArticleとして掲載されました。
 高等生物はDNAやヒストンの化学修飾によって遺伝子発現レベルを調節するエピジェネティクス2)と呼ばれるシステムを備えています。この機構の破綻は多くの疾患発症に関連していることが分かりつつあります。NOは血圧調節、記憶形成、殺菌などの重要な役割を担っていることが知られていますが、今回、DNAの化学修飾を調節する生体内因子であることが明らかになりました。
 本研究成果は、NOがゲノムDNAメチル化調節を介して様々な遺伝子発現を調節していることや病態発症にも関与していることを示しました。今後、健康維持だけでなく、がん、中枢神経変性疾患、新型コロナウイルス感染症などの発症原因の解明に繋がることが期待されます。

◆研究者からひとこと

論文を投稿して追加実験をする段階でコロナ禍となり、研究室の閉鎖などでなかなか捗らず苦労しました。この成果が得られたことにより、追求すべきテーマが増え、現在、精力的に取り組んでいます。
上原教授

■論文情報
論 文 名:Pivotal role for S-nitrosylation of DNA methyltransferase 3B in epigenetic regulation of tumorigenesis
掲 載 紙:Nature Communications
著  者:Kosaku Okuda, Kengo Nakahara, Akihiro Ito, Yuta Iijima, Ryosuke Nomura, Ashutosh Kumar, Kana Fujikawa, Kazuya Adachi, Yuki Shimada, Satoshi Fujio, Reina Yamamoto, Nobumasa Takasugi, Kunishige Onuma, Mitsuhiko Osaki, Futoshi Okada, Taichi Ukegawa, Yasuo Takeuchi, Norihisa Yasui, Atsuko Yamashita, Hiroyuki Marusawa, Yosuke Matsushita, Toyomasa Katagiri, Takahiro Shibata, Koji Uchida, Sheng-Yong Niu, Nhi B. Lang, Tomohiro Nakamura, Kam Y. J. Zhang, Stuart A. Lipton & Takashi Uehara
D O I:10.1038/s41467-023-36232-6
U R L:https://www.nature.com/articles/s41467-023-36232-6
下線は岡山大学当研究室に所属している(いた)大学院生・学部生です。

■研究資金
 本研究は、文部科学省科学研究費補助金(基盤研究B(15H04649)(18H02579)、挑戦的萌芽研究(25670029) (15K14952)、 基盤研究S(17H06170))、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)次世代がん医療創生研究事業 (P-CREATE)「酸化によるDNA メチル基転移酵素活性抑制を特異的に阻止する世界初の化合物を用いた最新バイオマーカー開発とがん治療戦略構築」 (19cm0106436h0002)、JST橋渡し研究戦略的推進プログラム(16lm0103011j0003)、徳島大学先端酵素学研究所「共同利用・共同研究」制度 などの支援を受けて実施しました。

<詳しい研究内容について>
一酸化窒素はDNA修飾の制御因子であることを発見 特異的阻害薬の開発に成功し、がんなどの疾患治療薬としての応用に期待

<お問い合わせ>
岡山大学学術研究院医歯薬学域(薬)
教授 上原 孝
(電話番号) 086-251-7939
(FAX) 同上

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