国立大学法人 岡山大学

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小惑星リュウグウに記録されたアミノ酸生成の痕跡~初期太陽系における水-有機物反応のスナップショット~

2023年03月31日

◆発表のポイント

  • 地球上のすべての生命は、アミノ酸が長い鎖状に結合したタンパク質により構成されています。
  • これまでに、地球生命の起源となり得るアミノ酸が地球外環境から供給された可能性が言及されています。
  • リュウグウから回収された二粒子に含まれるアミノ酸の濃度を求めたところ、いくつかのアミノ酸の濃度が粒子間で異なることがわかりました。これらのアミノ酸はリュウグウ前駆天体(小惑星)の中、前駆物質が流体と反応した結果形成したと考えられます。小惑星や隕石に含まれるアミノ酸の一部が氷天体で形成されたことが示されました。
  • アミノ酸の一部は、小惑星などの氷を含む小天体で形成され、このアミノ酸が衝突イベントなどを通じ地球に運ばれた結果、地球生命をもたらしたのかもしれません。

 岡山大学惑星物質研究所のクリスチャン・ポティシェル助教らの研究グループは、二つの異なる地点より採取したリュウグウ粒子に含まれるアミノ酸の濃度をそれぞれについて求めました。炭酸塩を多く粒子には、アミノ酸ジメチルグリシンが多く含まれ、他方の粒子にはアミノ酸ジメチルグリシンが検出されませんでした。この結果は、太陽系初期の小惑星でアミノ酸が形成され、この時に水が重要な役割を果たしたことが明らかにしました。
 これらの研究成果は3月17日、Nature Communications誌にオンライン掲載されました。

◆研究者からひとこと

遥か昔、小惑星リュウグウでアミノ酸が生成されたことをわかった時は、研究室のみんなと狂喜乱舞しました。お祝いの席ではしゃぎ過ぎて日本酒を飲み過ぎてしまいました。この成果は、小惑星や彗星が生命の源を形成する環境であることをサポートする、重要な発見です。引き続き、太陽系小天体の進化を実験的に理解していこうと思います。
ポティシェル助教

■論文情報
論文名: Insights into the formation and evolution of extraterrestrial amino acids from the asteroid Ryugu
邦題名「小惑星リュウグウ回収試料の総合解析から理解する地球外環境におけるアミノ酸の形成及び進化」

掲載誌: Nature Communications
著者: Christian Potiszil, Tsutomu Ota, Masahiro Yamanaka, Chie Sakaguchi, Katsura Kobayashi, Ryoji Tanaka, Tak Kunihiro, Hiroshi Kitagawa, Masanao Abe, Akiko Miyazaki, Aiko Nakato, Satoru Nakazawa, Masahiro Nishimura, Tatsuaki Okada, Takanao Saiki, Satoshi Tanaka, Fuyuto Terui, Yuichi Tsuda, Tomohiro Usui, Sei-ichiro Watanabe, Toru Yada, Kasumi Yogata, Makoto Yoshikawa and Eizo Nakamura
DOI: https://doi.org/10.1038/s41467-023-37107-6
URL: https://www.nature.com/articles/s41467-023-37107-6

<詳しい研究内容について>
小惑星リュウグウに記録されたアミノ酸生成の痕跡~初期太陽系における水-有機物反応のスナップショット~

<お問い合わせ>
岡山大学惑星物質研究所
助教 クリスチャン・ポティシェル (English)
(メール)cpotiszil◎okayama-u.ac.jp
※@を◎に置き換えています。

岡山大学自然生命科学研究支援センター
特任教授 中村栄三 (日本語)
(電話番号)0858-43-3745(FAX番号)0858-43-3745
 (メール)eizonak ◎misasa.okayama-u.ac.jp
※@を◎に置き換えています。

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