国立大学法人 岡山大学

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IgG4関連疾患におけるサイトカイン産生細胞を世界で初めて特定

2014年01月22日

 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科病理学分野の佐藤康晴講師、竹内真衣大学院生、吉野正教授らの研究グループは、IgG4関連疾患におけるサイトカイン産生細胞がマスト細胞であることを世界で初めて突き止めました。
 本研究成果は2014年1月3日、米国・カナダ病理学会公式雑誌『Modern Pathology』の電子版に公開されました。
 現在、IgG4関連疾患は世界的に注目されている原因不明の疾患で、Th2およびTregサイトカインが病因に大きく関与していると考えられてきましたが、これらを産生する細胞は明らかになっていませんでした。しかしながら、今回の研究でマスト細胞がこれらサイトカインを産生していることが明らかとなりました。
 今後、本研究成果をもとにIgG4関連疾患の新規治療薬の開発が進むと期待されます。
<業 績>
 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科病理学分野の佐藤康晴講師、竹内真衣大学院生、吉野正教授らの研究グループは、IgG4関連疾患で病因に関与しているTh2およびTreg系サイトカインをマスト細胞が産生していることを世界で初めて突き止めました。
 これまでIgG4関連疾患の患者では、Th2およびTreg系サイトカインが上昇していることがわかっており、Tリンパ球がその産生細胞と考えられていました。しかしながら今回の研究結果からはTリンパ球ではなく、アレルギーと関係が深いと言われているマスト細胞がこれらのサイトカインを産生していることが判明しました(図1)。
 IgG4関連疾患は、2001年に日本人がはじめて発見した病気で、全身のさまざまな臓器(涙腺、唾液腺、皮膚、肺、膵臓、肝臓、胆管、リンパ節など)に腫瘤(コブや腫れ)をつくる良性の病気です。しかし、腫瘤をつくるためCTなどの画像検査でしばしば「がん」と間違われることもあります。この病気が知られる以前は、がんを疑われて病変部を切除される患者も多くみられました。なお、この病気になると、例えば、膵臓では黄疸が出たり、涙腺や唾液腺では視力障害やドライアイ、ドライマウスが起こることがあります。

図1. マスト細胞がインターロイキン4、インターロイキン10、TGFβなどのTh2やTreg系のサイトカインを産生することで、IgG4関連疾患の特徴所見である腫瘤(コブ)を作ったり、血液中の免疫グロブリンであるIgG4やIgEの上昇、あるいは白血球の1種である好酸球が増加する
<見込まれる成果>
 IgG4関連疾患は、一般的にステロイドによる治療が効果的ですが、100%治るわけではなく、しばしば再発する例もみられます。また、最近ではIgG4関連疾患になると発がんリスクが高まる、という統計学的なデータも報告されており、悪性腫瘍との関係も注目されています。そのため免疫力を抑えるステロイドを長期間服用することは体に悪影響を及ぼすことも考えられます。
 そのためIgG4関連疾患の根本的な治療法の開発が望まれますが、本研究結果はマスト細胞をターゲットとした、ステロイドに代わる新規治療法の開発への糸口になる可能性が考えられます。

<補 足>
 現在、IgG4関連疾患は世界的に注目されている疾患で、日本においても厚生労働省の「難治性疾患等克服研究事業」の中で研究班が設置されています。また、ハーバード大学医学部においてもこの病気の解明に取り組んでおり、2011年にはハーバード大学医学部主催でIgG4関連疾患に関する第1回国際会議(The 1st International Symposium on IgG4-Related Diseases & Associated Conditions)が開かれています。佐藤講師と吉野教授はこの厚生労働省研究班、国際会議ともに参画しており、本年2月にハワイで開催される第2回国際会議でも招待講演を行う予定です。

 第2回国際会議はこちらからご確認いただけます

 本研究は、独立行政法人日本学術振興会(JSPS)科研費(C)(no.24591447)ならびに厚生労働省難治性疾患等克服研究事業の助成を受け実施しました。

発表論文はこちらからご確認いただけます
発表論文:Takeuchi M, Sato Y, Ohno K, Tanaka S, Takata K, Gion Y, Orita Y, Ito T, Tachibana T. Yoshino T. T helper 2 and regulatory T cell cytokine production by mast cells: A key factor in the pathogenesis of IgG4-related disease. Mod Pathol 2014 Jan 3. doi: 10.1038/modpathol.2013.236. [Epub ahead of print]

報道発表資料はこちらをご覧ください


<お問い合わせ>
(所属)岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 病理学分野(腫瘍病理) 講師
(氏名)佐藤 康晴
(電話番号)086-235-7150
(FAX番号)086-235-7156
(URL) //www.okayama-u.ac.jp/user/path/

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