国立大学法人 岡山大学

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主要組織適合抗原クラスIIの輸送と分解の制御機構を解明

2014年02月20日

 本学医歯薬学総合研究科生体応答制御学分野の古田和幸助教らの研究グループは、樹状細胞に発現し病原体などの抗原提示を担うタンパク質である、主要組織適合抗原クラスII (MHC-II)の、細胞における輸送と分解の制御機構を解明しました。本研究では役割を終え不要になったMHC-IIが積極的に分解されるのに対し、病原体を結合する前の前駆体MHC-IIは分解されないことを見いだし、そのメカニズムを明らかとしました。
 本研究成果は『米国科学アカデミー紀要(PNAS)』(12月10日号)に掲載されました。
<業績>
 生体内に細菌やウイルスなどの病原体が侵入したり、がん化した細胞が発生すると、それらを排除するために、まず樹状細胞がそれらを取り込み細胞の表面に提示します(抗原提示)。これをT細胞が認識することで病原体に特異的な免疫応答が誘導され、生体は病原体を排除します。このとき樹状細胞に発現し抗原を提示するタンパク質が主要組織適合抗原クラスII (MHC-II)です。抗原を結合したMHC-IIの形成は、小胞輸送という細胞内での物質輸送の機構によって制御されています。すなわち、抗原を結合する前の前駆体MHC-IIと細胞外から取り込まれた病原体などの抗原が、細胞内を輸送され会合することで、抗原を結合したMHC-IIを形成します。この抗原を結合したMHC-IIは細胞表面へと輸送され、T細胞に抗原を提示します。その後、抗原を結合したMHC-IIは、役割を終え不要になると分解されます。これまでに抗原を結合したMHC-IIの分解についてはMARCH-Iと呼ばれるタンパク質が、ユビキチンという分解の目印となるタグをMHC-IIに付加する必要があることが明らかとなっていました。一方、抗原を結合する前の前駆体MHC-IIには不必要な分解が起こらず、それはユビキチンが付加されないためであると予想されていましたが、細胞内において、前駆体MHC-IIと抗原を結合したMHC-IIが区別される詳細な機構は不明でした。今回、本研究グループは、前駆体MHC-IIに結合しているインバリアント鎖という膜タンパク質が前駆体MHC-IIの輸送を制御することで、前駆体MHC-IIがMARCH-Iの存在する場所へと輸送されないために前駆体MHC-IIにはユビキチンが付加されず、前駆体MHC-IIは分解されないことを明らかとしました。本研究は、米国国立衛生研究所(NIH)、Paul Roche博士らとの共同研究により行なわれました。

<見込まれる成果>
 MHC-IIによる抗原提示は、生体に有害な細菌やウイルスなどの病原体や、がん細胞の排除に重要な役割を持つことが知られています。そのため、本研究成果はこれらの病態の原因を解明する新たな手がかりとなることが期待されます。

発表論文はこちらから確認いただけます。



報道発表資料はこちらをご覧ください


<お問い合わせ先>
岡山大学医歯薬学総合研究科
生体応答制御学分野 助教
古田 和幸
電話番号:086-251-7962

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