国立大学法人 岡山大学

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ヒト血液中から抗腫瘍効果をもつタンパクを発見

2014年09月25日

 岡山大学病院消化器内科の三宅康広助教のグループが、ヒト血液中より“がん”細胞の増殖を抑制する抗体を発見しました。この抗体は、“がん”細胞に高発現するリボソームタンパクL29(RPL29)を認識し、一部の“がん”患者の血液中にも存在します。抗RPL29抗体が血液中に多く存在する“がん”患者では、同じ治療を受けた場合でも予後が大幅に良好であることが解りました。本研究成果は、本年10月15~17日にパシフィコ横浜で開催されるBioJapan 2014で発表されます。
 血液中抗RPL29抗体を測定することで、個々の“がん”患者に適した治療方針の決定が可能になると考えられます。また、RPL29タンパクを標的とする“がん”治療についても研究を進めています。
 岡山大学病院消化器内科の三宅康広助教のグループが、ヒト血液中より“がん”細胞の増殖を抑制するタンパクを発見しました。このタンパクは、リボソームタンパクL29(RPL29)を認識する抗体です。
 ヒトの体内では、毎日数千個の“がん”細胞が生じていると言われていますが、日本人が生涯で“がん”に罹患する確率は約50%と報告されています。これは、生体内に存在する腫瘍免疫システムが“がん”細胞を排除するためと考えられています。しかし、生体内の腫瘍免疫システムが如何様にして“がん”細胞を排除しているかについては解明されていません。生体内で機能している腫瘍免疫システムを解明することは、より安全で効果的な“がん”治療の開発につながると考えられます。
 三宅助教らは、培養癌細胞を用いた研究により、ヒト血液中に存在する抗RPL29抗体に膵癌や肺癌、乳癌、肝癌、大腸癌、前立腺癌の細胞増殖を抑制する効果のあることを発見しました。また、膵癌患者105例について検討した結果、血液中に抗RPL29抗体を多く有している患者では、同じ病状で同じ治療を受けた場合でも明らかに生存期間が長いことが解りました。これらの結果より、抗RPL29抗体は、生体内の腫瘍免疫システムを構成する物質の一つと考えられます。

<見込まれる成果>
 血液中抗RPL29抗体を測定することにより生体内で機能している腫瘍免疫システムの状態を評価することで、個々の“がん”患者に適した治療方針を決定することが可能になると考えられます。また、ヒト血液中から発見された抗RPL29抗体自体に “がん”細胞の増殖を抑制したり“がん”細胞を細胞死(アポトーシス)に誘導したりする効果のあることから、抗RPL29抗体は安全性の高い新規の抗腫瘍薬としても期待されます。現在、抗体医薬やがんワクチンの開発を目指して研究を進めています。

<補足>
 RPL29:リボソームは細胞内でタンパク合成に関わっている小器官であり、RPL29はリボソームを構成するタンパクの一つです。一方、RPL29は、細胞内のみならず細胞表面にも発現しており、特に“がん”細胞で高発現していることが知られています。また、遺伝子操作によってRPL29の発現を低下させたマウスでは、①胎生致死には至らない、②明らかな奇形を認めない、③発育不全を示す、ことが報告されています。よって、RPL29は、生命の維持に必須とまでは言えず、細胞の増殖に関与していると考えられています。
 
<以下、該当ある場合は適宜追記>
 本研究成果について2014年10月15日から17日に横浜市のパシフィコ横浜で開催されますBioJapan 2014で発表します(発表日:10月16日午後)。

 また、一部は、2014年10月23日から26日に神戸市のポートピアホテルで開催されます第22回 日本消化器病学会週間(JDDW2014)でも発表します(発表日:10月23日午後)。
JDDW2014ホームページ:http://www.jddw.jp/jddw2014/nittei/index.html

報道発表資料はこちらをご覧ください


<お問い合わせ先>
 岡山大学 消化器内科
助教 三宅 康広
(電話番号)086-235-7219
(FAX番号)086-225-5991

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