国立大学法人 岡山大学

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植物の木部分化を促進する生理活性物質ザイレミンを開発

2016年02月19日

 岡山大学大学院自然科学研究科(理)の髙橋卓教授、本瀬宏康准教授、髙村浩由准教授の共同研究グループは、植物の維管束木部分化を促進する生理活性物質「ザイレミン」の開発に成功しました。本研究成果は2月16日、英国の科学雑誌「Scientific Reports」電子版に掲載されました。
 研究グループは以前、実験植物シロイヌナズナを用いて、維管束の木部分化を抑える植物ホルモン「サーモスペルミン」を世界に先駆けて発見していました。今回の研究では、その合成阻害剤を人工合成して木部分化を促すことを突き止め、木部(ザイレム)の誘導にちなんで「ザイレミン」と名付けました。ザイレミンの利用は植物の発生研究にとどまらず、木質バイオマス生産などへの応用も期待されます。
<業 績>
 髙橋教授、本瀬准教授、髙村准教授の共同研究グループは、植物ホルモン「サーモスペルミン」の合成阻害剤「ザイレミン」を人工合成して開発。実験植物シロイヌナズナを用いて、この阻害剤に木部分化を促進する効果があることを突き止めました。
 本物質は、植物の細胞増殖に必須なホルモン「オーキシン」の誘導体と併用することにより、劇的な木部誘導効果を持つことを他の植物でも確認しました(図)。

<背 景>
 研究グループは以前、サーモスペルミンを世界に先駆けて発見していました。サーモスペルミンはポリアミンと総称される低分子塩基性化合物の一つで、これを作れないシロイヌナズナの変異体は木部の異常増殖に伴う矮化を示します。その詳しい作用機構は不明ですが、同研究グループではサーモスペルミンの合成阻害剤を開発できれば、同様に木部分化を促進できると予想していました。

<見込まれる成果>
 ザイレミンの利用は、サーモスペルミンがどのように木部分化を抑えるのかという作用機構の解明に重要な手がかりになることが予想されます。また、植物の細胞分化の基礎研究にとどまらず、木材由来の資源エネルギーとして注目されつつある木質バイオマスの生産調整などへの応用も期待されます。

<論文情報等>
掲 載 誌  Scientific Reports
タイトル  Chemical control of xylem differentiation by thermospermine, xylemin, and auxin.
著  者  Yoshimoto K, Takamura H, Kadota I, Motose H, Takahashi T (2016)

発表論文はこちらからご確認いただけます。
www.nature.com/articles/srep21487

本研究は、文部科学省/科研費新学術領域研究「植物発生ロジック」#26113516の助成を受けて実施しました。


<補足・用語説明>
[1]維管束木部
維管束は植物体内の物質輸送に関わる通道組織で、木部は主に水と無機イオンを根から全身に運ぶ道管とその周囲にあって体を支える繊維から成っています。道管や繊維は細胞外にリグニンを蓄積して木化し、死細胞化します。

[2]植物ホルモン
植物の成長調節物質。

[3]矮化
植物の茎の伸長が阻害されて草丈が短くなること。


<お問い合わせ>
岡山大学大学院自然科学研究科(理)
教授 髙橋 卓
(電話番号)086-251-7858
(FAX番号)086-251-7876

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