国立大学法人 岡山大学

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活性型ビタミンB12がラジカル酵素反応を制御する仕組みを世界で初めて発見-高品質衣料用繊維の原料生産への応用に期待-

2018年05月29日

  兵庫県立大学・理化学研究所客員研究員(研究当時) 柴田直樹准教授、樋口芳樹教授らと岡山大学 虎谷哲夫名誉教授は、活性型ビタミンB12がラジカルを制御しつつ酵素反応に利用する仕組みを世界で初めて発見し、2018年5月25日「 Angewandte Chemie 国際版(ドイツ化学会誌)」にオンライン発表しました。
 ビタミンB12の活性型の1つであるアデノシルB12は、化学的に達成が難しい反応を触媒するため、ラジカルという超活性種を利用して酵素反応を行います。酵素がラジカルを利用することによって、高い反応性が得られるというメリットがある反面、その代償として副反応を起こして不活性化され易くなります。これまでアデノシルB12酵素には副反応を起こりにくくする仕組みがあると考えられていましたが、酵素とアデノシルB12との複合体の精密な立体構造が不明であったためにその詳細は明らかではありませんでした。今回、アデノシルB12酵素ジオールデヒドラターゼおよびエタノールアミンアンモニアリアーゼについて、アデノシルB12との複合体の原子レベルでの精密な立体構造を、大型放射光施設・SPring-8を利用して解析しました。その結果、アデノシルB12の核であるコリン環のアミド側鎖の1つが周囲のアミノ酸残基と連携し、アデノシルB12が活性化されて生成したアデノシルラジカルの構造を安定に保つことで副反応を起こりにくくする働きがあることを世界で初めて明らかにしました。
 今後、アデノシルB12やその周囲に存在するアミノ酸残基の役割をより詳しく解析することにより、アデノシルB12酵素を利用した有用物質の生産をより効率的に行えるようになる可能性があります。特に、ジオールデヒドラターゼはバイオディーゼル燃料の製造過程で発生する副生成物グリセロールから、丈夫さと高い伸縮性や肌触りの良さを併せもつ衣料用繊維ポリトリメチレンテレフタレートの原料である1,3-プロパンジオールの生産への利用が期待されます。

a: アデノシルB12の構造
(a)~(g)はアミド側鎖(青色は側鎖(a))、赤はアデノシル基、コバルト(Ⅲ)、コバルト-炭素共有結合を表す。
b: ジオールデヒドラターゼが触媒する反応
c: エタノールアミンアンモニアリアーゼが触媒する反応
d: アデノシルB12による触媒反応の概略


<発表論文情報>
タイトル:Direct Participation of a Peripheral Side Chain of a Corrin Ring in Coenzyme B12 Catalysis
著  者:Naoki Shibata, Yui Sueyoshi, Yoshiki Higuchi, Tetsuo Toraya
掲 載 誌: Angewandte Chemie International Edition (ドイツ化学会誌国際版)


<詳しい研究内容について>
活性型ビタミンB12がラジカル酵素反応を制御する仕組みを世界で初めて発見-高品質衣料用繊維の原料生産への応用に期待-


<本件お問い合わせ>
岡山大学
名誉教授 虎谷哲夫

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