国立大学法人 岡山大学

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故障した葉緑体を取り除く植物オートファジーの駆動プロセスを解明-オートファジーが壊れた葉緑体だけを選別していることを証明-

2018年05月31日

【概要】
 オートファジーは、生物が自らの細胞内部の成分を消化するための機構です。東北大学学際科学フロンティア研究所の泉 正範 (いずみまさのり) 助教、同大学大学院生命科学研究科の日出間純(ひでまじゅん)准教授、大学院生の中村咲耶(なかむらさくや)氏、同大学大学院農学研究科の石田宏幸(いしだひろゆき)准教授、岡山大学資源植物科学研究所の坂本 亘(さかもとわたる)教授のグループは、研究用モデル植物であるシロイヌナズナに強い光ストレスを与えると、膜の傷を蓄積した一部の葉緑体が大きく膨張し(図1)、そのような異常葉緑体だけがオートファジーに選び取られ除去されるプロセスを解明しました。本成果をさらに発展させることで、植物体内での葉緑体の新陳代謝をコントロールし作物の生産性やストレス耐性を改善しようとする新たな応用研究の実現が期待できます。本成果は、米国植物生理学会誌Plant Physiology電子版に5月10日に掲載されました。
【発表のポイント】
・植物体内で光合成を行う「葉緑体」が、太陽光によるダメージを受けた植物体内で積極的に取り壊される現象を見出していたが、その駆動プロセスは不明であった。
・光ストレスによる膜の傷で大きく膨張してしまった葉緑体だけが選び取られ除去される新しいオートファジーのプロセスを発見した。
・今後、オートファジーが膨張した葉緑体を選別するメカニズムを解明することで、作物の葉緑体の新陳代謝を効率化し生産性やストレス耐性の改善を目指す新しい研究が発展する可能性がある。


図1. 膨張した葉緑体の観察画像
通常の葉緑体は楕円型を示す (写真左) が、光ストレスを受けた葉緑体は大きく膨張した形態を示す (写真右)。


図2. 膨れた葉緑体が運ばれるプロセスの観察画像
健全な葉緑体は楕円型を示す (写真左) が、光ダメージを受けた葉緑体は大きく膨張した形態を示し (写真中央)、液胞膜に直接包み込まれるようにして液胞内へと運ばれ、分解されていく (写真右)。マゼンタの構造が葉緑体、緑の構造が緑色蛍光タンパク質(GFP)で光らせた液胞の膜。

【論文題目】
著者:Sakuya Nakamura, Jun Hidema, Wataru Sakamoto, Hiroyuki Ishida, Masanori Izumi
表題:Selective elimination of membrane-damaged chloroplasts via microautophagy
雑誌:Plant Physiology
DOI:https://doi.org/10.1104/pp.18.00444

<詳しい研究内容について>
故障した葉緑体を取り除く植物オートファジーの駆動プロセスを解明-オートファジーが壊れた葉緑体だけを選別していることを証明-


【問い合わせ先】
(研究に関すること)
東北大学 学際科学フロンティア研究所
助教 泉 正範 (いずみ まさのり)
電話番号:022-217-5745

岡山大学資源植物科学研究所
副所長・教授 坂本 亘(さかもと わたる)
電話番号:086-434-1206

(報道に関すること)
東北大学 学際科学フロンティア研究所
特任准教授(URA) 鈴木 一行 (すずき かずゆき)
電話番号:022-795-4353

年度