国立大学法人 岡山大学

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軟部組織のがんにおける血液中がんマーカーを発見!~がんから分泌されるエクソソームを利用した新しい診断法への期待~

2021年06月30日

◆発表のポイント

  • 軟部組織のがん(肉腫)の一つである滑膜肉腫から分泌される細胞外小胞「エクソソーム」(1)や肉腫細胞に、モノカルボン酸トランスポーター1(MCT1)が高度に発現していることを発見しました。
  • 血液中を流れるMCT1を発現する「エクソソーム」の量は、滑膜肉腫の患者や動物モデルにおいて腫瘍の量に相関し、治療にも反応して変動していることが分かりました。
  • 将来、滑膜肉腫に対する治療効果・再発のモニタリングや治療にも役立つことが期待されます。

 岡山大学学術研究院医歯薬学域(医)・岡山大学病院整形外科学分野の藤原智洋助教、尾﨑敏文教授、岡山医療センター整形外科の横尾賢医師らのグループは、軟部肉腫の一つである滑膜肉腫から分泌されるエクソソームのタンパク質解析から、その表面に高度に発現するモノカルボン酸トランスポーター1(monocarboxylate transporter 1: MCT1)を特定し、患者の血液を流れるMCT1陽性エクソソームの量が体内の腫瘍量と相関していることを発見しました。
 これらの研究成果は令和3年4月2日、欧州の腫瘍学雑誌「Cancers」に掲載されました。
 軟部肉腫には有用な血液腫瘍マーカーがほとんど存在しません。本研究成果は、滑膜肉腫における治療効果や再発・転移を反映する新たなモニタリングツールとなることが期待されます。また、滑膜肉腫の組織自体にも高度に発現していることが分かり、新たな治療標的となる可能性も秘めています。

◆研究者からのひとこと

軟部肉腫には、主要臓器(肺、胃、大腸など)のがんと違い、がんの存在を示唆する血液腫瘍マーカーがほとんどありません。そこで私たちは、がん細胞の遺伝子やタンパク質の異常を搭載して分泌される「エクソソーム」に着目しました。私たちの期待通り、滑膜肉腫から分泌されるエクソソームが血液で検出され、その表面に発現する分子が腫瘍細胞自身にも発現していました。推理小説の謎が解けたときのような清々しい気分です。新しい血液腫瘍マーカーや治療の標的として応用できるよう研究を重ねて参ります。
藤原助教

■論文情報
 論 文 名:Liquid Biopsy Targeting Monocarboxylate Transporter 1 on the Surface Membrane of Tumor-Derived Extracellular Vesicles from Synovial Sarcoma
 邦 題 名「滑膜肉腫由来の細胞外小胞の膜表面に存在するMonocarboxylate Transporter 1を標的としたリキッドバイオプシー」
 掲 載 紙:Cancers
 著  者:Suguru Yokoo , Tomohiro Fujiwara, Aki Yoshida, Koji Uotani, Takuya Morita, Masahiro Kiyono, Joe Hasei, Eiji Nakata, Toshiyuki Kunisada, Shintaro Iwata, Tsukasa Yonemoto, Koji Ueda, Toshifumi Ozaki
 D O I:https://doi.org/10.3390/ cancers13081823
 U R L:https://www.mdpi.com/2072-6694/13/8/1823


<詳しい研究内容について>
軟部組織のがんにおける血液中がんマーカーを発見!~がんから分泌されるエクソソームを利用した新しい診断法への期待~

<お問い合わせ>
岡山大学学術研究院医歯薬学域(医) 助教 藤原 智洋
(電話番号)086-235-7273 (FAX)086-223-9727

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