国立大学法人 岡山大学

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指定難病“特発性多中心性キャッスルマン病”の国際診断基準を確立!

2021年07月29日

◆発表のポイント

  • 指定難病“特発性多中心性キャッスルマン病”の一亜型である、“TAFRO症状を伴う特発性多中心性キャッスルマン病”の国際診断基準を欧米の研究者と共同で策定しました。
  • この病気は、①稀な疾患であること、②悪性腫瘍や膠原病、感染症といった他の疾患でも類似した臨床症状を呈することから、正確な診断が難しく世界的に問題となっていました。
  • 臨床所見と、特徴的な病理組織所見を組み合わせた診断基準を確立したことで、この病気を正確に診断することができるようになりました。

 岡山大学医学部医学科 非常勤講師の西村義人医師、岡山大学病院病理診断科の西村碧フィリーズ医師、学術研究院保健学域の佐藤康晴教授らの研究グループが、TAFRO症状を伴う特発性多中心性キャッスルマン病(iMCD-TAFRO)の国際診断基準を、欧米の研究者とともに策定しました。本研究成果は7月15日、米国学術雑誌「American Journal of Hematology」にオンラインで早期公開されました。
 TAFRO症状とは、血小板減少(Thrombocytopenia)、胸腹水の貯留(Anasarca)、発熱(Fever)、骨髄細網線維症または腎機能障害(Reticulin fibrosis or Renal insufficiency)、臓器腫大(Organomegaly)を指し、その頭文字に由来してこう呼ばれています。TAFRO症状自体は、悪性腫瘍や膠原病、感染症といった原因の異なる疾患によっても引き起こされます。TAFRO症状を呈する疾患(TAFRO症候群)のうち、特発性多中心性キャッスルマン病(iMCD)に合致する特徴的なリンパ節の組織所見を疾患するものをiMCD-TAFROと呼びます。iMCD-TAFROは、しばしば急激に全身状態が悪化し、死に至る可能性もある原因不明の炎症性疾患です。そのため、正確な診断と早期の適切な治療が重要で、科学的な根拠に基づいた国際的な診断基準が求められてきました。今回確立された国際診断基準が、iMCD-TAFROの診療に携わる世界各国の多くの関係者に広く普及すれば、適切な診断と治療が行われるようになり、この病気で苦しむ方々の役に立つことが期待されます。

◆研究者からのひとこと

今回私たちが策定したiMCD-TAFROの基準が広く用いられるようになれば、患者さんを適切な診断に導くことが可能になると期待しています。今後は、未だ議論が尽きない「iMCD-TAFROの最適な治療」についても研究を行っていきたいと思います。
西村義人 医師

西村碧フィリーズ 医師
TAFRO症状を呈する疾患はiMCD以外にも存在しますが、リンパ節や骨髄の生検を行い、顕微鏡で組織像を観察すること(病理診断)が鑑別に役立つと考えています。本診断基準を反映した病理診断で、患者さんの診療に貢献していきたいと思います。

■論文情報
論 文 名:Validated International Definition of the TAFRO clinical subtype of idiopathic multicentric Castleman disease
掲 載 紙:American Journal of Hematology
著  者:Nishimura Y, Fajgenbaum DC, Pierson SK, Iwaki N, Nishikori A, Kawano M, Nakamura N, Izutsu K, Takeuchi K, Nishimura MF, Maeda Y, Otsuka F, Yoshizaki K, Oksenhendler E, van Rhee F, Sato Y.
D O I:10.1002/ajh.26292
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34265103/

<詳しい研究内容について>
指定難病“特発性多中心性キャッスルマン病”の国際診断基準を確立!


<お問い合わせ>
岡山大学学術研究院保健学域(分子病理学)
教授 佐藤 康晴
(電話番号)086-235-6896
(FAX)086-235-7156

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