国立大学法人 岡山大学

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自己多層乳化を用いたマトリョーシカ微粒子の調製〜油と水を混ぜてすぐ固めるだけ〜

2021年12月24日

◆発表のポイント

  • マイクロ流路と呼ばれる細い流路内で、油と水を混ぜた後、液滴を固化することで、マトリョーシカのような構造の多層マイクロカプセルを調製しました。
  • 実験によって、カプセルの直径や膜の層数を制御する条件を明らかにしました。カプセルの構造を維持したまま、膜の膨潤特性や分子透過性も制御できることを示しました。
  • 本技術は、高分子微粒子材料の構造制御に関する研究成果で、化粧品、化成品、医薬品などの多用な分野において、内包物の徐放挙動を高度に制御する技術として応用が期待されます。

 岡山大学学術研究院自然科学学域(工)の渡邉貴一研究准教授と同大学院自然科学研究科博士前期課程の安原有香大学院生と同学術研究院自然科学学域(工)の小野努教授は、マイクロ流路と呼ばれる髪の毛ほどの細い流路内で油と水を混合した後、液滴を紫外光で固めるという簡便な手法を用いて、大きさのそろった多層構造のマイクロカプセルを連続的に調製する技術を開発しました。また、原料の送液速度や初期組成、膜物質の化学構造を変えることによって、マイクロカプセルの直径や膜の層数、分子透過性などを精密に制御できることも示しました。
 これらの研究成果は12月22日、アメリカ化学会の「ACS Applied Polymer Materials」誌に掲載されるとともに、アメリカ化学会(ACS)が発行する全雑誌から編集委員の推薦に基づき1日1論文のみが選出されるACS Editor’s Choiceに選ばれました。今回見いだした研究成果は、高分子微粒子の新たな構造制御法として、化粧品、化成品、医薬品などの分野で応用展開が期待されます。

◆研究者からのひとこと

自己多層乳化現象に関して、膜の層数を制御する手法の確立、形成過程の観察やカプセル化の実現に価値があると思います。ACS Editor’s Choiceにも選ばれ、膨大な実験条件に挫けず研究を続けて本当に良かったと思います。支えてくださった研究室の皆様に感謝します。
安原 大学院生
サラダ用ドレッシングを混ぜるような簡単な操作で、従来法では作りにくい複雑な構造を作ることに取り組んだ研究です。研究室の有する高度なマイクロ流体工学技術と安原さんの絶え間ない努力の融合によって、非常に興味深い現象を解析・制御することができました。
渡邉 研究准教授

■論文情報
論文名:Multilayer Poly(ionic liquid) Microcapsules Prepared by Sequential Phase Separation and Subsequent Photopolymerization in Ternary Emulsion Droplets
掲載紙:ACS Applied Polymer Materials
著  者:Takaichi Watanabe, Yuka Yasuhara, Tsutomu Ono
DOI:10.1021/acsapm.1c01315
URL:https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acsapm.1c01315

<詳しい研究内容について>
自己多層乳化を用いたマトリョーシカ微粒子の調製〜油と水を混ぜてすぐ固めるだけ〜


<お問い合わせ>
岡山大学学術研究院 自然科学学域
研究准教授 氏名 渡邉 貴一
(電話番号)086-251-8072
(FAX)086-251-8083

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