ベクターとラスター
画像ファイルには、ベクターとラスターという二つの表示方式があります。私たちが「お絵かきソフト」などで一般的に使っているのはラスター方式で、画像のドットの1点ごとに色の情報を与えます。それに対して、ベクター方式は、点ならば、その点の座標と色情報を与え、線ならば始点と終点の座標と線の色情報だけを与えます。多角形の場合には、それぞれの角の座標と多角形の色情報を与えます。そこで、よほど複雑な画像でない限り、ベクター方式のほうが、小さいファイルですむことになります。しかし、両者には、それぞれ長所と短所があります。
ベクター方式の場合、座標は画面のドットとは別に指定することができます。たとえば、400×300ドットの画像でも、X軸を0から1000mに、Y軸を0から750mに指定し、直線は、始点を(482.3418,284.1149)、終点を(198.2276,726.3356)というように、座標を与えて描くことができます。この場合、画像を100倍に拡大しても、直線がギザギザになることはありません。多角形の面積を求める場合でも、きわめて正確な数値を得ることができます。ラスターはドット単位ですから、ドット以上に正確な座標の指定はできません。その点では、GISには、ベクター方式のほうが向いているようにもみえます。
しかし、ベクターにも、いくつかの難点があります。第1は、入力に手間がかかることです。川を描くにも、岸を片方ずつ短い直線で結んでいって、最終的には多角形をつくる必要があります。デジタイザを使って細かい等高線を入力する場合には、それなりの時間を費やす決意がいります。第2は、スキャナによって入力した画像や、航空写真・衛星写真などが、いずれもラスター形式であり、ベクターだけですべてを処理するわけにはいかないことです。また、ラスター方式なら、画像ソフトで作成した画像も、さまざまに利用することができます。そして、第3に、さまざまな複雑な処理を行っていく場合には、ラスターのような、ドット程度の単位のほうが、かえって簡単に処理を行えるという点があります。IDRISIが、ほとんどの処理をラスター画像上で行っているのも、そうした理由によります。いずれのGISソフトウェアも、このように、ベクターとラスターをうまく組み合わせて使っています。
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