マイクロステップについて
★学習の効果は自覚できないレベルで確実に積み重なっています
最近の記憶研究では、潜在記憶という、自覚できない学習の効果に関する研究が注目されています。そこでは、思ってもみないような学習経験の影響が、多様な認知判断に影響を与えている事実が多数報告され始めています。例えば、単語カードを1度めくるような、わずかな学習の効果が、数ヵ月後の記憶テストの成績に現われる事実なども報告されています。つまり、記憶はすぐには消えず、想像を超える期間頭の中に残り続けているわけです。
これまで、国の助成を受けて、高校生を対象にごく簡単なドリル学習を長期にわたって継続していく学習実験を実施し、一般的な学習内容を使って、日常的な学習状況で、記憶(学習の効果)が数ヵ月単位で積み重なっていく事実を実験的に確認してきました。そこでは、学習者には自覚できませんが、様々な指標に、わずかな学習の繰り返しの効果が明確に現われてきています。マイクロステップは、この自覚できない学習段階のことをさしています。
★マイクロステップ計測技術について
一般的な学習場面では、英単語のような膨大な学習内容の一つ一つを何十回も繰り返し学習します。マイクロステップ計測技術は、何万という学習(イベント)の全てが、いつどのように生起するのかを年単位で制御し、なおかつ、学習を行った後、どのくらいの期間をおいてテストを行うのかといった、インターバルも全て制御する技術です。
現在の教育評価は、学習内容の一部に限定してテストは作られています。また、テストの問題には前日に学習した問題や1ヶ月前に学習した問題などごっちゃになっています。さらにまた、現在の教育評価は、学習イベントがいつ、どのように、どんなタイミングでなされているかなどは一切考慮されていません。それに対して、全ての学習内容を評価の対象にし、また、学習とテストのインターバルを考慮し、さらに、時系列的な変化を描き出せるような学習イベントの生起スケジュールを生成する、新しいスケジューリング方法とデータベース技術が、マイクロステップ計測技術です。
★参考文献
まだ、研究段階で、あまり一般的になっていませんが、以下の一般書には紹介があります。
◎「記憶の心理学と現代社会」 太田信夫(編) 有斐閣
◎「おもしろ記憶のラボラトリー」 森敏昭(編著) 北大路書房
○「理論からの心理学入門」 森正義彦(編) 培風館
○「心理学科をめざすあなたへ」 教学社