第5回生殖生命科学セミナー
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演題: 家畜繁殖技術開発の動向と卵子研究
演者: 佐藤英明(東北大学院農学研究科
         動物生殖科学分野・教授)
日時:2005年10月6日(木)15:30-16:30
場所:農学部1号館 第3講義室
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 家畜生産に生殖細胞や胚を操作する技術が応用され、成果を挙げているが、新たな開発課題も誕生している。卵子の体外成熟・体外受精・胚移植は優良雌を用いた家畜改良に貢献しているが、1頭から生産される卵子の数は少なく、潜在的な力を発揮するには至っていない。体細胞クローン技術は、今後、医薬品生産家畜やヒトへ移植可能な臓器生産家畜の作出において存在感を増すだろう。しかし、作出効率は低く、ミトコンドリアDNAから見ると遺伝的に不均一な個体が多い。今後、ミトコンドリアDNAからみても遺伝的に均一になるような技術開発が必要であり、さらに作出効率の上昇のため「体細胞初期化能」の高い卵子の作出法の確立が必要である。一方、体外で形成された精子を用いて、顕微授精により子どもを得る技術、すなわち雄の飼養が不要になる技術が登場することが期待される。また、単為発生による家畜個体の誕生やオーダーメイドのES細胞株の樹立にも期待が集まっている。これらを実現するには受精能、初期化能の高い同一個体由来の卵子を多数準備する技術が必要である。すなわち、家畜繁殖技術の改良やその新たな技術誕生には卵子研究が重要は位置を占めている。
 以上のような問題意識の下で私達は家畜の卵子形成・死滅・成熟の制御について解析を進めている。卵子形成・死滅・成熟は卵胞の中で誘起される現象であることから、その解明は卵胞構造を念頭におくことが必要であるが、卵子形成・死滅・成熟を誘導するホルモンは、血管網を通って卵胞に届き、顆粒膜細胞に作用し、顆粒膜細胞で産生したシグナルはギャップ結合を通って卵細胞に作用する。卵子形成・成熟を制御するには、これらの過程を明らかにすることが重要であるが、特に今回、血管網を制御して卵胞発育促進・閉鎖抑制を行う技術とギャップ結合の閉鎖を誘導するヒアルロン酸・CD44に関する私達の成果を紹介したい。
                                               

世話人:奥田 潔  
連絡先:251-8333 


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