第7回生殖生命科学セミナー
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演題: 脊椎動物の排卵研究
   −メダカが教えてくれた排卵酵素の正体と作用機構−
演者: 高橋孝行先生 (北海道大学大学院理学研究科教授)
日時:2005年12月20日(火)15:00-16:00
場所:理学部1号館 第25講義室
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 生物にとって生殖は,有限の寿命をもつ生物が自らの種を維持するための根本的な活動であると同時に,その種に多様性を導入するプロセスとしても重要である。卵巣は次世代のための卵を供給するという役割があるが,その一連の過程は排卵によってクライマックスを迎える。
排卵は、卵巣を包む最外層の固い被膜(濾胞壁)が溶解され、濾胞内の受精可能な卵が放出される過程であり、これには魚類から哺乳類に至るまで脊椎動物に共通する基本的なメカニズムがあると考えられている。しかし, 排卵時の濾胞壁溶解の分子機構は今なお不明である。その最大の理由は、排卵酵素の正体が明らかにされていないことによる。
 我々は,哺乳類を用いて排卵酵素を追求するというこれまでの考えに囚われず,排卵研究に適するメダカを実験材料として,生殖生物学の長年の課題である「排卵酵素の同定」に挑戦した。
 メダカのin vitro排卵実験系を用い,これに分子生物学的および生化学的手法を組み合わせることによって,メダカの排卵酵素の正体が明らかになった。「gelatinase A」、「MT1-MMP」および「MT2-MMP」の3つのマトリックスメタロプロテアーゼが協調的に作用してメダカの排卵が実行される。さらに排卵のタイミングの調節にはマトリックスメタロプロテアーゼの内在性阻害タンパク質「TIMP-2b」が関与している。脊椎動物で初めて明らかになった排卵実行の巧妙な仕組みについて紹介する。また排卵酵素の同定が生殖生物学の今後の研究にどのような意味をもつかについても議論したい。

世話人:高橋純夫 
連絡先:251-7866 

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