第12回生殖生命科学セミナー
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演題: ウシ体細胞クローン胚の遺伝子発現とその制御機構
演者: 澤井 健 博士
(北海道立畜産試験場 基盤研究部 遺伝子工学科)
日時: 2006年8月11日(月)15:30-16:30
場所: 農学部1号館 第3講義室

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 ウシの体細胞クローン技術においては、胚の受胎能力が低い、高頻度で流産が発生する、産子の過大化および生後直死が頻発するなど様々な異常がみとめられます。体細胞クローン技術を効率的に利用するために、これら異常の原因を究明し、異常を回避できる新たな技術開発が必要とされています。
 体細胞クローンは、核を取り除いた卵子 (レシピエント卵子) に体細胞核を移植することによって作出され、移植された体細胞核はレシピエント卵子内で発生可能な状態にリセット (初期化) されます。この核の初期化が不十分 (不完全) であると、その後の胚発生過程において様々な遺伝子の発現異常が起こり、クローン胚・胎子および産子にみられる異常が引き起こされると考えられています。しかしながら、胚および胎子の遺伝子発現に関しては、正常な胚発生にはどのような遺伝子がどの時期にどのくらい発現する必要があるのかなど、その詳細は明らかではありません。クローン胚における遺伝子発現の解明には、胚発生に関与する遺伝子の探索、それら遺伝子の通常胚 (体内受精胚など) での発現動態の解明、通常胚とクローン胚の比較解析などに取り組む必要があります。
 現在、澤井博士らはウシ初期胚を用いて細胞分化、着床・妊娠認識、胚・胎子発育に関連する様々な遺伝子の発現解析を進めており、そのうちのいくつかの遺伝子において体細胞クローン胚特有の発現動態が認められています。また、澤井博士らは遺伝子発現の制御機構の一つであるゲノム DNA のメチル化に着目しウシ初期胚の DNA メチル化レベルの解析を行い、胚発生にともなう DNA メチル化レベルの変化と DNA メチル基転移酵素遺伝子の発現動態に関していくつかの興味深い知見を得られています。本セミナーではウシ体細胞クローン胚の遺伝子発現動態と遺伝子発現制御機構について最近の研究結果を中心に紹介していただきます。

世話人:奥田 潔
連絡先:251-8333

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