生殖機能は脳によって制御されている。生殖機能は生存には寄与しない機能であり、様々な危機に直面して停止し、また再開される。たとえば、成熟雌にみられる規則的な性周期は飢餓時には停止する。飢餓つまりエネルギー不足という情報が脳で処理され、生殖機能を一時的に停止して、エネルギーの消費を減らそうとしているのだろう。さて、生存に対する危機という観点から性成熟を考えると、充分に成長していない雌には妊娠、分娩、泌乳といった膨大なエネルギーの必要な生殖機能を発揮することは適応的でなく、まずは成長にミルクや餌から得たエネルギーを配分するほうがよいだろう。実際、動物は充分に成長した後に性成熟に達し、成長が遅いものは性成熟のタイミングも遅い。
未成熟な動物においてGnRH分泌は検出できないほど低いレベルであり、性成熟期にはGnRHパルスが検出されるようになる。つまり、性成熟とはパルス状GnRH分泌のはじまりである。このGnRHパルスの高進のタイミング制御にステロイドホルモンのフィードバック作用が重要な役割を果たしている。本セミナーでは性成熟のタイミングを制御しているステロイドホルモンの作用部位と、低栄養条件下でのそのメカニズムの変化について紹介したい。
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