第15回生殖生命科学セミナー
Supported by 岡山大学重点プロジェクト


演題: 骨誘導因子(BMP)の生体内での機能解析
     〜骨特異的、月齢特異的なノックアウトマウスシステムを用いて〜
演者:
神谷 宣広 (アメリカ国立環境衛生科学研究所(NIEHS/NIH))
日時:
2007年 3月1日(木)14:00-15:00
場所:
岡山大学農学部 一階 第2講義室

  骨形成因子(BMP; Bone Morphogenetic Protein)はTGF??スーパーファミリーに属する分泌タンパク質である。皮下に移植した場合、異所性骨化を起こすことで発見された(1965年)。このBMPは骨だけでなく他の様々な組織で発現が認められ、BMPやその受容体のノックアウトマウスの多くは胎生致死をきたした。そのため骨発生や骨修復、骨の維持におけるBMPの生体内での役割は解析が遅れていた。我々はBMPの生体内での機能を解析するため数多くあるBMPが収束するBMP受容体に着目した。生体内における骨の特性は年齢とともに変化することを考慮し、Cre/loxPの手法を用いて骨特異的かつ月齢特異的にノックアウト可能なマウスを作成した。胎生期の骨発生過程においてBMP受容体の一つ(Bmpr1a)を骨芽細胞特異的にノックアウトすると骨量の増加が見られた。この場合、骨吸収を担う破骨細胞の分化が抑制されており、Wntシグナルの亢進が確認された。BMPシグナルが Wntシグナルを介して骨量を制御している可能性が示唆された。また、成獣について同様にノックアウトすると肋骨や脊椎における石灰化の亢進と脊椎の変形が著名であり雄の方が強い表現型であった。CT撮影や骨形態計測などにより脊椎では海綿骨と皮質骨の両方が、大腿骨では主に海綿骨の増加がみられ、骨形成能の低下と骨吸収能の亢進が確認された。これらから、成獣についてBMPシグナルは部位特異的かつ性差特異的に骨の質を規定する可能性が示唆された。以上異なった月齢のノックアウトマウスの解析より、BMPシグナルは骨量を負の方向に調節すると考えられた。現在、 他のBMP受容体のノックアウト、あるいはBMP受容体の過剰発現の系を用いて生体内でのBMPシグナルの働きをさらに解析中である。

世話人: 辻 岳人
連絡先: 251-8325

このページをWordファイルで開く(印刷用)