文部科学省・組織的な大学院教育改革推進プログラム｢アジア環境再生の人材養成プログラム―循環型社会形成学と持続発展教育(ESD)の融合―｣では、21世紀COEプログラム｢循環型社会への戦略的廃棄物マネジメント｣(平成15年度〜19年度)の際に構築したアジア・太平洋廃棄物専門家会議、及び岡山大学ユネスコチェアが連携する｢持続発展教育(ESD)｣推進機関の専門家を招聘し、｢アジア環境再生コロキアム｣を開催することとしている。コロキアムは、当該分野における知識交換の場だけでなく、本プログラムのアドバイザリー会議及び評価委員会としても機能させることを目的として実施した。

平成20年度のアジア環境再生コロキアムは、韓国、台湾、中国、ベトナム、タイ、マレーシア、インドネシア、インド、トルコ、ニュージーランドの11カ国から16名の研究者を招聘し、｢アジアにおける環境教育｣を総合テーマとして開催した。

Education for Sustainable Development and Support Program for Improving Graduate School Education at Okayama University

Prof. Hirofumi Abe (Okayama University, Japan)

岡山大学における環境学分野の教育研究拠点形成プロジェクトの経緯が紹介され、続いて、平成20年度に採択された文部科学省・組織的な大学院教育改革推進プログラム｢アジア環境再生の人材養成プログラム―循環型社会形成学と持続発展教育(ESD)の融合―｣の目的と事業概要について説明があった。

Asian Cooperation for Promoting Education for Sustainable Development

  Education for Sustainable Development from the Perspective of

Economics and Environment

Prof. Lawrence Surendra (University of Mysore, India)

環境と経済の関わりの中で人類社会の持続可能な発展を考えることが重要であるとの指摘があり、続いて、持続発展教育(ESD)の意義、アジア地域におけるESDへの取組と課題、ESDにおける高等教育機関の役割等が述べられた。

Environmental Education in Transition: Strengthening the Intangibles and

Immeasurables

Dr. Zainal Abidin Sanusi (Universiti Sains Malaysia, Malaysia)

　これまでの環境教育(EE)の歴史的変遷と課題、新たな環境教育の必要性と持続発展教育(ESD)との関連、及びESDの意義等について説明があり、高等教育機関における環境人材育成に向けた教育システム再構築の必要性が提言された。

Environmental Education in Korea  

Prof. Min Boo Lee (Korea National University of Education, Korea)

　韓国における環境教育の発展経緯について説明があり、中学・高校のカリキュラムにおいて環境や生態学が正式の選択科目になるとともに、大学においても環境教育学科が新設されていることが紹介された。また、韓国の学校教育における環境の取り扱い及び教育方法について特徴が述べられた。

Environmental Education in China

Prof. Jianhua Li (Tonji University, China)

　中国の大学教育における環境科学及び環境教育の導入経緯と今後の展望が述べられ、続いて、同済大学における環境教育と持続発展教育(ESD)への取り組み概要について紹介があった。

Environmental Economics Education at Universities and Collegesin Vietnam

Prof. Bui Dung The (Hue University, Vietnam)

　最近の環境問題の特徴と環境経済学によるアプローチの必要性が説明され、続いて、ベトナムの大学カリキュラムに対する環境経済学の導入状況、政策実務担当者に対する環境経済学の教育システム、教育方法改善に向けた取り組み等の紹介があった。

　Review of Enviromental Education in Taiwan

Prof. Hurng-Jyuhn Wang (National Dong-Hwa University, Taiwan)

　台湾政府による環境教育への取り組みと行政施策の展開が説明され、続いて、学校教育で使用されている環境教材、体験型環境学習の具体事例、台湾の環境教育に関する今後の展望等が述べられた。

Environmental Education in Thailand on the Strength of Environmental Research and Environmental Problem

Prof. Orawan Siriratpiriya (Chulalongkorn University, Thailand)

　タイにおける環境問題の現状をふまえた環境教育プログラムの展開と特徴が説明され、続いて、チュラロンコン大学における環境科学分野の教育研究への取り組み、環境教育に対するサポート等の紹介があった。

Environmental Education in Malaysian Universities

Prof. Agamuthu Pariatamby (University of Malaya, Malaysia)

　マレーシアの教育制度、学校外でのインフォーマル教育としての環境教育、学校教育における環境学習の導入状況、大学における環境教育への取り組み等について、事例紹介をふまえた説明があった。また、マレーシアの現状では、環境教育の成果が環境保全に結びついていない等の課題が述べられた。

Prof. Enri Damanhuri (Institut Teknologi Bandung, Indonesia)

　インドネシアの環境問題とバンドン工科大学(ITB)における環境工学分野のカリキュラムの紹介があり、高等教育機関における環境専門家の育成に関する特徴が述べられた。

Nagpur Institute of Technology, a Step Towards Globalization of Knowledge

  & Environmental Education

Prof. Dr. Ashok V. Shekdar (Nagpur Institute of Technology, India)

　インドにおける環境問題の現状と環境保全に向けた人材育成の必要性について説明があり、続いて、新設されたナグプール工科大学のカリキュラムと教育の特色が紹介された。

Sweden as Environmental Superpower: Environmental Education in Theory and Practice

Prof. Dr. Sang-Chul Park (Korea Polytechnic University, Korea)

　スウェーデンの環境政策における環境保護庁(EPA)の役割、学校教育における環境教育への取り組みの特徴等について紹介があった。

＜問題提起＞

Educational Collaboration for Environmental Education through University Network in Asia

Coordinator: Prof. Masaru Tanaka

Capacity Building to Create a 3R Society

Prof. Masaru Tanaka (Tottori University of Environmental Studies, Japan)

　廃棄物問題の現状と廃棄物マネジメントの視点からみた環境教育と専門家育成の要点について説明があった。

Concept of Asian Interuniversity Network for Environmental Education

Prof. Takeshi Fujiwara (Okayama University, Japan)

　アジアにおける環境教育推進ための大学間ネットワークの必要性が説明され、具体案として大学間クラスルームの構築、e-ラーニングシステム・インターネット会議システムの活用、ラーニング・マネジメントシステム構築等の提案があった。

＜パネル討論＞

藤原健史教授からの提案に対しては、以下のコメントがあった。
・単位認定、学位認定との関連を明確にする。
・授業実施上の問題(使用言語、時差等)への対応が必要である。
・学生がコースに参加するメリットを明確にする。
・段階的なネットワーク構築とシステムの導入を考える。
・実施に際しては、改善に向けた評価とモニタリングのシステムが重要となる。