平成19年度文部科学省現代的教育ニーズ取組支援プログラム
晴れの国より巣立つ水環境スペシャリスト
岡山大学環境理工学部 岡山大学
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取組について

ごあいさつ

岡山大学環境理工学部教授
沖  陽子

 岡山大学環境理工学部は国立大学で初めて「環境」を正面から取り扱う学部として平成6年に設置されました。しかしながら、その教育体系は座学が中心で専門的な実験や演習は行って参りましたが、断片的な知識詰め込み型教育に流れることが多く、刻々と変化する身近な環境に即応できる、現場を習熟した環境学士を育てることは難しい状況でした。

 そこで、学部の環境教育の根幹に実践型教育手法を取り入れて、社会に通用する人材を育成することに教育目標を設定いたしました。環境理工学部のこの試みに環境問題を扱う農学部も賛同していただき、協力していただくことになりました。

  さて、実践型環境教育と申しましても、その課題設定が人材育成に大きく係わって参ります。地球温暖化に伴い、最も懸念される問題は水問題です。「水の惑星」が直面する課題、つまり気候変動問題の克服には自然環境の構成要素として考えられる生物圏の水循環、そこに人間活動が関与する水循環の変動を的確に把握し、管理することが必要不可欠になります。水の質的・量的な課題解決ができる水環境スペシャリストの輩出が重要で、かつ以外とそのような人材が少ないと考えたわけです。

 一方、岡山は「晴れの国」といわれるように、降水量が少ない県です。都市と農村地域が混在し、湖沼やため池等の閉鎖水域の環境問題が未解決の地域です。さらに、瀬戸内海の水位上昇、ゲリラ的な降雨等から、今後の温暖化に伴う水環境変化の把握と予測が望まれています。

 また、岡山県の南部には指定湖沼である面積1000ha程度の児島湖が存在します。指定湖沼に指定された昭和60年頃から平成7年頃まではワースト5に入るほど富栄養化の進んだ人工淡水湖でした。ところが、現在、関係機関と県民等の協働下により、徐々に水質改善傾向が進んでおり、水資源として活用する、つまり地域資源として活用する長期ビジョンが県の施策の下に展開されようとしています。

  そこで、我々は地域性に基づいた素材をモデルに人材育成を考えました。本取組では、「データの収集と解析力」、「体系的な思考力」「問題解決のための計画性と行動力」そしてコミュニケーション能力を付加した水環境スペシャリストを「晴れの国」の財産である児島湖の環境保全・地域資源活動のフィルターを通して国内外に輩出することを目論みました。水環境問題を総体的に捉えながら技術的に解決し、各主体で活躍できる人材の輩出です。

 最近、環境省から「21世紀環境立国戦略」の概要が発表されました。そこには、地球温暖化や資源の浪費、生態系の危機を克服するために重点的に着手すべき戦略が述べられており、「環境を感じ、考え、行動する人づくり」が入っております。さらに、持続可能な社会の「日本モデル」の構築を行い、その環境立国を世界へ、とくにアジアへと発信することが望まれています。本取組は、まさにその姿勢を先取りするような環境教育プログラムです。

 このプログラムは文部科学省の平成19年度現代的教育ニーズ取組支援プログラム(環境教育)いわゆる現代GPとして認定される運びとなりました。本プログラムの概要はHPで紹介致しておりますが、骨子は児島湖をフィールド実習現場に活用し、生態系の概念や水環境の質や量のシミュレーションを学内水循環施設で会得させると共に、ESDや環境NPO組織との地域連携並びに国際交流締結校との協力体制も取り込むものです。

 平成19年度の準備・試行を踏まえて、平成20年度からは環境理工学部の正規の授業科目として「実践型水環境演習」および「タイ国カセサート大学特別コース」を実施し、本取組を地域連携および国際連携の取組として拡充していきます。今後、その行程や活動をHPにて刻々とお伝えします。開かれた大学を目指して、国内外の学生同士、地域住民や教職員とのコミュニケーションを通じて、個々人が豊かな人間性を醸成できるように支援する所存です。興味のある方は是非、本学部を訪れてください。ご一緒に水環境スペシャリスト候補生と21世紀の水環境を論じましょう。高校生の諸君はキャンパス内の水循環施設に足を運んでください。お待ちしております。

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Faculty of Environmental Science and Technology, Okayama University