岡山・小学校の国語を語る会について
 「岡山・小学校の国語を語る会」(通称、語る会)は、平成七年に始まった。月に一回、通算200回を超えて続いている。これまでに『メモに関する学習の理論と実践』(平成十年八月.私家版)、『小学校国語科教育の課題 実践的探究』(平成十四年十月.私家版)、『直観からの出発 読む力が育つ「丸ごと読み」の指導』(平成二十年三月.三省堂)、『読む力が育つ「おもしろ見つけ」 読者反応理論を取り入れた物語の授業』(平成二十四年十一月.三省堂)の四冊を成果として出版してきた。小川孝司先生と私が代表を務め、附属小学校の先生に代々事務局をお願いしている。毎回二〇人前後の教員が集まって、実践報告と教材研究を中心に行っている。こんな授業が必要だという概念的な話から、それはこんな授業のことを言うのかという挑戦的な実践報告が生まれ、その実践報告の成果と課題を確認し、教材研究を共同で行い、課題解決を試みた実践報告がなされるというサイクルで展開している。先に示した四冊の成果も、そういった研究活動の集積である。
 理論的な刺激を得るために、毎年八月には、外部講師として国語教育研究者あるいは実践者をお招きして、それぞれご専門のお話を伺う機会を設けている。これまでに、植山俊宏先生、山元髀t先生、山元悦子先生、三浦和尚先生、大槻和夫先生、村井万里子先生、余郷裕次先生、牧戸章先生、上田祐二先生、田中俊弥先生、間瀬茂夫先生、信木伸一先生、住田勝先生、櫻本明美先生、守田庸一先生、渡邊春美先生、寺田守先生のお話を伺った。
 この研究会で取り上げた課題には、学習生活に活かすメモの能力、多様な読書力、蓄積し活用する学習記録などがある。いずれも前期義務教育の国語学習として、生活者としての国語能力に培う学習に取り組んでいる。たとえば、多様な読書力では、感性的な認識を大事にしながら、学び合う授業を中心に構想している。批判的な思考も生活読書の視点からその必要性が認められる。作品の表現に着目するメタ認知的思考も、その学習が、直観的な認識を確かで豊かなものにする見通しがあって必要なものとなる。
 現代社会を生き抜き、そして住みよい社会を思い描き実現できる人材になるような教育を、独りよがりにならないように仲間と一緒になって考える努力を続けていきたい、そういう研究会でありたいと願っている。

田中 智生 (岡山大学大学院教育学研究科)