じぶん更新日記

1997年5月6日開設
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桃太郎フォーラムXI:受けたい授業を創る:教授法改善のヒント


2008年9月12日(金)


目次

【思ったこと】
_80913(土)[教育]桃太郎フォーラムXI:受けたい授業を創る:教授法改善のヒント(1)

 9月12日(金)、岡山大学で表記のFD研修会が開催された。なお、こちらに概要が紹介されている。

 このFD研修会にはほぼ毎年参加しており、特に昨年度は、基調講演(の前座?)という大役を仰せつかった。今年度は、一参加者としてじっくり聴かせてもらおうと思っていたところであったが、5月頃になって分科会座長をやれという話が舞い込んできた。午前中の講演と、私が座長を引き受けた分科会の内容は以下の通りであった(公式サイトからの転載)。

■特別講演1 司会:天野憲樹(FD委員会委員,教育開発センター)

  演題:「授業応答システム”クリッカー”による能動的学習授業−簡単に実現する双方向性授業−」
  講師:北海道大学 大学院理学研究院 准教授 鈴木久男

■特別講演2 司会:佐々木健二(FD委員会委員長,医歯薬学総合研究科(薬学系))

  演題:「橋本メソッドと学生の主体的学び−150人ゼミの有効性−」
  講師:岡山大学教育開発センターFD部門 部門長 橋本 勝




第1分科会: 大規模授業における双方向性確保の工夫 (会場:D217)
  座長:長谷川芳典(社会文化科学研究科(文学系))
         
「クリッカーはあなたの授業に使えるのか?−クリッカーの導入法を考えてみよう−」
  【話題提供】 鈴木久男(北海道大学大学院理学研究院)

「橋本メソッドの応用可能性を探る−午前の講演を受けて−」
  【話題提供】 橋本 勝(教育開発センター)

「岡山大学e-Learningシステムを活用する方法」
  【話題提供】 山口晴久(IT活用教育委員会委員長,教育学研究科)


 今回のフォーラムは、タイトルの「受けたい授業を創る:教授法改善のヒント」にも表れているように、FDの最も基本中の基本である教授法改善の話題が中心であった。制度や組織についての話題に比べるとそれだけ身近であり、具体的な内容に突っ込んで討論ができたと思っている。

【思ったこと】
_80914(日)[教育]桃太郎フォーラムXI:受けたい授業を創る:教授法改善のヒント(2)授業応答システム”クリッカー”による能動的学習授業(1)

 午前中の特別講演の1番目は、鈴木氏による

●授業応答システム”クリッカー”による能動的学習授業−簡単に実現する双方向性授業−

という話題提供であった。私個人は、昨年12月の研修セミナーでも“クリッカー”の講演を拝聴したことがあり、今回は2回目ということで、その仕組みがよく理解できた。

 クリッカーのメリット、デメリット、疑問などについては、昨年12月12日の日記、およびその続編に記したので、ここでは繰り返さない。若干補足させていだくと、
  1. クリッカーは、教養教育の大規模授業の一部では大いに有効。また、国試関連科目のように、四択や五択の問題を解く必要のある専門科目でも有効。そのいっぽう、論述型や、解法のプロセスを重視するような科目(例えば数学)ではあまり有効とは言えない。もっともその場合でも、受講生の眠気覚ましの効果は期待できる。
  2. 鈴木先生の授業では、クリッカーは、授業開始時に受講生に配布し、最終試験時まで受講生個人で保管することになっているという。これにより、どの受講生が何番のクリッカーで応答しているのかが把握できるので、出席点や、クリッカーを利用した小テストに利用できる。
  3. 上記2.は、当該授業科目以外の授業ではクリッカーを使えないというデメリットがある。但し、当該クリッカーの学籍番号を学部ごとに管理しておけば、ある程度の共用は可能。
  4. クリッカーを利用するにあたって必要なものは、1個8000円程度の端末と、ノートパソコン、レシーバー、フリーの管理プログラム、パワーポイント。パワーポイントにアドイン設定することで、パワーポイント編集画面で、簡単に設問を追加することができる。また、集計データはそのつど、データファイルとして保存される。


【思ったこと】
_80915(月)[教育]桃太郎フォーラムXI:受けたい授業を創る:教授法改善のヒント(3)授業応答システム”クリッカー”による能動的学習授業(2)

 すでに何度か述べたことであるが、“クリッカー"が大学の授業改善に有効かとうかという一般的な議論はあまり意味が無い。重要なことは、どういう学生に、どういう授業で、どういうタイミングで使えば効果を発揮できるかという点にある。

 このうち、学生のレベルということに関しては、鈴木氏の講演の中でアメリカでのFD活動の流れについて言及があった。
  • 1960年代 「学者の時代」 すぐれた研究者イコールすぐれた教師
  • 1970年代 「教師の時代」 ベビーブームによる学生数増加 研究と教育の考え方の分離
  • 1980年代 「FD開発者の時代」 FD活動の組織確立。予算も増加
  • 1990年代 「学習者の時代」 大学のユニバーサル化 どれだけ教えたかではなく、どれだけ学んだか
 日本の大学では年代は10〜20年ほど遅れているようなふしもあるが、とにかく、今の時代は学習者の時代であり、「教員は、理解できる学生数を最大にするような授業を行うこと」を念頭に授業を進めていかなければならない。これがすなわち「大規模授業の民主化」や「学生と教員とが共に成長し、共に輝く授業」の実現にも繋がるというわけだ。

 もっとも、この考え方から直ちにクリッカー導入が正当化されるわけではない。授業内容が分かりにかった場合、もちろん、その内容を分かりやすくするために最大限の努力をすることは必要であるが、このほかに
  • 予習・復習をどのような形で徹底させるか
  • 習熟度・理解度に合わせたクラス編成
  • 伝授型の講義と、プロジェクト型演習の併用
といった工夫も考えられる。

 鈴木氏の話題提供では、こうした点に関連して、能動的学習授業とはどのようなものかについても言及された。そのやり方には、10通り以上の方式があり、特にHarvard大学やMTIで実施されている方式が知られているという。いずれも、「自ら考え、議論することが中心」、「学生の疑問にリアルタイムでフィードバック」という特徴を備えている。

 しかし、能動的学習授業は殆どの場合に難があるという。すなわち、教え方の上手な教員が担当すればうまく運用できるが、下手な教員ではむしろ一方的講義のほうがマシだと言われる。また、概念の定着率は高いといっても、時間がかかるなど効率性に問題があるようだ。

 いっぽう、クリッカーによるクイズ形式の授業では運用が非常に楽という利点がある。ちなみに、単にクイズをするだけならば、挙手やプラカードでもよいが、クリッカーのほうが、匿名性、返報性に優れていると言えるだろう(2007年12月13日の日記参照)。

 クリッカーを導入して講義を行うということは、結果的に、
  • 対話型の問いかけの場をつくる
    →受講生と共に考える場、時間
  • 15分に1度程度のまとめ
    →クイズを出す必要上、その前にまとめが必要
  • リアルタイムフィードバックの効果
    →受講生自身は、周りの人がどの程度理解しているのかが分かる。自分だけ間違えていれば必死に理解しようとするし、皆が間違えていれば安心する。また教える側にとっては、受講生の理解度をリアルタイムで把握しながら、説明の量を増やしたり減らしたりすることができる。
といった効果が期待できる。

 反面、クリッカーを導入した授業では
  • 込み入った問題は出せない。
  • 問題を解く力は向上するが、企画力は育成できない。
といった欠点もある。それを補うために、Webによる小テストやリポート出題、クイズ問題を作ること自体を宿題にするといった工夫も行われているということであった。




 なお、2007年12月14日の日記(続編あり)でも述べたが、クリッカー活用の理論的根拠については、私個人はしっくりこない点がいくつかある。但し、どのような理論に依拠しても、実践場面で決定的な違いをもたらすということはあまり無さそうだ。実践場面での効果検証サイクルがしっかりしていれば、理屈はむしろ後付けでも事足りる。諸々の学習モデルや記憶理論などは啓蒙普及のための説得ツール(=権威づけ)にしかならないという気がしないでもない。

【思ったこと】
_80916(火)[教育]桃太郎フォーラムXI:受けたい授業を創る:教授法改善のヒント(4)橋本メソッドとは何か?(1)

 午前中の特別講演の2番目は、橋本勝氏による、

●「橋本メソッドと学生の主体的学び−150人ゼミの有効性−」

というタイトルの話題提供であった。1番目の授業応答システム”クリッカー”による能動的学習授業と異なり、こちらのほうは、講義ではなく、グループ別のプロジェクト学習型の形態となっている。その点では、学部横断型の基礎ゼミ初年次少人数ゼミグループ型学習などと共通しているようにも思えた。但し、1つ大きく異なっているのは、受講生の適正規模として120〜150人を標榜している点である。受講生が50人を下回るとやや効果が下がるとも言明されていた。




 さて、今回の御講演でまず驚いたのは、講演者の外見上の変化であった。橋本氏は大学教育関連の学界ではかなり名前が知られているのではないかと思われるが、そのトレードマークは「おヒゲ」であり、橋本氏の御名前をご存じない方でも「あの、ヒゲをはやした人」と言えば通じることがあるくらいであった。

 ところがその橋本氏が、なっなんと、当日、ヒゲを剃って登場された。このため、かなりの人には、御本人の自己紹介があるまで、別人だと勘違いされたようである。この衝撃的なヒゲ剃りの真相はイマイチ不明である。御本人の弁によれば、「人間は変わろうと思えば変わる。もっとも、外見は変わっても本質は変わらない」ということを示す御意図があったということだが、その程度の「実験」であるなら、こういう格好(右側の写真が私)をするだけでも済むはずである。
 余談だが、以前、「橋本先生はいつもネクタイをしておられるが、ノーネクタイでヒゲを生やした格好は、どこぞの路上生活のオッサンみたいに見えますねえ」と、からかったことがあった。そのことにショックを受けてヒゲを剃られたとしたら私の責任ということになるが、どうやらその可能性は無さそうである。




 講演ではまず、「橋本に関する4つの誤解を解く」という導入があったが、これは個人情報に関わるのでここでは省略させていただく。続いて、「20世紀の橋本」が21世紀になってなぜ大転換したのかという、やはり導入的なお話があった。この部分も一部個人情報に関わりそうな気もするが、FDへの取り組みを活性化するという一般的な意義がありそうなので、以下に、少しだけ言及させていただく。

 橋本氏によれば、「20世紀の橋本」は、日本一の楽勝科目推進論者であり、学生からは絶大な「人気」があり、1コマの最大受講者(但し、非常勤講師先の大教室)は、なっなんと1600人にも及んだという。ところが、その「20世紀の橋本」が21世紀になって大転換をされた。橋本氏によれば、その理由は、
  1. 初代の全学FD委員になったこと→「そういうあんたはどうなんや」と訊かれる
  2. 学生の真面目度と成績が対応しない→真面目に出席している学生が必ずしも良い評価にならない
  3. 何かもっと楽しくできないか
という3点にあったという。もっとも、私個人としては、上に挙げられた御理由だけでは、どうも納得しがたいところがある。なぜなら、「初代の全学FD委員」なら私自身もそのメンバー6名の1人に含まれていたが、私自身は、(もちろん、それなりに努力はしているつもりだが)そんなに大転換はしていない。上記2.に関しては、もともと出席重視の成績評価をしているので、真面目に出席し、シャトルカードにきっちり解答している受講生は、成績評価が高くなる傾向があり、その種の矛盾でストレスを感じたことはなかった。ひょっとすると、3.の理由が、橋本氏と私のいちばんの違いなのかもしれない。御講演の終わりのほうで橋本氏は「授業はノルマではなく権利→楽しまなきゃ損!」と言っておられたが、うーむ、私自身は、元来せっかちな人間であり、良い意味でも悪い意味でも、「遊び心」を持つというほどの精神的余裕は出てこないなあ。




 最後(←「最後」といっても御講演導入部分についての感想の最後であり、本論はこれから)にもう1つ、「橋本メソッド」という固有名詞を冠した呼称の由来であるが、これは、ご自身が以前「橋本方式」として紹介していたものを、ある大学の有名な先生が「橋本メソッド」と言い換えて言及し、そのまま定着したことによるものであるという。

 一般論として、ある特定の方式(実施スタイル、方法など)に固有名詞を冠することには一長一短があるように思われる。

 まずメリットとしては、多くの人に「それなあに」という関心を引き起こす効果があることだ。また、ある程度確立し、普及している方式の場合には、特段の説明を付け加えなくても、何を行ったのかを相手に伝えやすいというメリットがある。

 いっぽう、デメリットとしては
  • 「○○メソッド」と、そうでない方法を区別する客観的基準が見えにくい。○○さんがやっていれば何でもそれに包含され、○○さんが「これは○○メソッドではない」と否定するだけで除外され、科学的・客観的な再現可能性、同一性、内部的整合性、外的妥当性などの検証が困難になる恐れがある。
  • 固有名詞の御本人のイメージと結びつきやすい。御本人に魅力があれば普及しやすい反面、御本人のカリスマ性と、「○○メソッド」自体が有する有効性が混同される恐れがある。
  • 著作権や商標が関わってくると、第三者が、創始者の承諾無しに「○○メソッド」を改善・工夫・発展させることが困難になる。
 じっさい、今回の1番目のご講演の「“クリッカー”による能動的学習授業」も、鈴木氏ご自身のオリジナリティがかなり含まれており、「橋本メソッド」と同じ意味で「鈴木メソッド」と呼べないことはないとは思う(←但し、「橋本メソッド」は今のところFD用語であるのに対して「鈴木メソッド(スズキ・メソード)」はすでに音楽教育のほうで定着しており、いまさらFD用語として使えないという難点がある)。但し、仮に「鈴木メソッド」と呼んでしまうと、クリッカーを使用した多種多様な授業改善の工夫を包含しきれなくなるという別の問題が出てくるだろう。

【思ったこと】
_80917(水)[教育]桃太郎フォーラムXI:受けたい授業を創る:教授法改善のヒント(4)橋本メソッドとは何か?(2)

 さていよいよ本題の「橋本メソッドとは何か?」についてだが、ネットで検索したところ、すでにいくつかの大学のFD研修会でその概要が紹介されていることが分かった。このうち、法政大学FD推進センターのコンテンツには、
...【略】...。「橋本メソッド」とは、「多人数によるゼミ」という形式をとる授業スタイルのことです。これは、数十人から200名程度まで可能とのことです。第1回目の講義で、学生は3〜4名のチームに分かれ、あらかじめ設定されているテーマから2つ選びます。チームで協同して、期日までに資料原稿案を教員に提出し、発表の「エントリー」をします。エントリーされた中から、教員に選抜された2チームが授業当日に発表を行います。授業の最後に、全員が「シャトルカード」と呼ばれる用紙に感想や意見を書いて提出します。発表だけでなく、質疑応答やシャトルカードのコメントが評価の対象で、最終試験も行われます。
と、簡潔にまとめられていた。

 午後の分科会で私自身からも発言させていただいたところであるが、上記の「メソッド」には少なくとも
  • 3〜4名のグループに分かれて課題研究を行う。
  • 研究発表を行う。
  • 担当教員に選抜してもらわないと発表できない(いい加減な研究では発表機会が与えられない)。
  • 毎回、シャトルカードに感想や意見(記述内容は何でもいいらしい)に記入。
  • シャトルカードに対しては、担当教員が丁寧にコメントや返事を書き込む(300〜400枚のカードにコメントを書き込む時間は、毎週30時間前後に及ぶという)。
  • 最終試験も行う。
といったコンポーネントから成り立っている。もちろん、「橋本メソッド」として行うからにはそのどれも欠かすことができないであろうが、その一部を独立して導入することも可能である。例えば、シャトルカード自体は、私(長谷川)の大部分の授業でも導入している。今年度前期は、行動分析学と統計学の中規模授業で導入し、毎回、すべての受講生の書き込み内容に目を通し、必要に応じてコメントを書き込んだ。私の場合は、30〜50人規模の授業であったが、それでも毎週3〜5時間程度は要した。

 いっぽう、3〜4名のグループ学習あるいはグループ研究は、昨日も述べたように、すでに多くの大学で行われている。このうち昨年4月24日の日記(続編あり)でも言及したが、グループ学習・研究では一般に、「フリーライダー(=他のメンバーに任せっきりで何もせず、単位だけもらう学生)」と「リタイア(グループ活動に馴染めず離脱してしまう学生)」が出るという問題が指摘されている。大規模授業となれば、その恐れはさらに大きいのではないかと思われるのだが、橋本氏ご自身の授業ではほぼ全員が最後まで授業に集中しているとのことであった。しかしそれが、
  • 受講生全員が橋本氏の熱意と人柄に惹かれたため。
  • シャトルカードで、橋本氏が長時間をかけて懇切丁寧に書き込みをしてくれるので、それに恩義を感じた。
  • 授業運営についての橋本氏の名人芸。
  • 授業内容そのものが面白いので、出たくてたまらなくなる。
のいずれによるものか(複合的な原因もあり)は、まだ十分に検証されていないように思えた。もし、橋本氏ご自身の人柄や名人芸が大きく寄与しているとすると、他の教員がマネをしてもうまくいかない可能性が大である。

 あと、「橋本メソッド」が注目を集めている理由の1つは、120〜150人というような大規模授業で実施が可能という点にあるのではないかと思うが、50人を下回るとなぜ「やや効果が下がる」のかがイマイチよく分からなかった。例えば

●(週2コマの授業 3時間)+(シャトルカードコメント書き 30時間)=週33時間

を要するというのであれば、50人ずつの授業を6コマ開いて

●(週6コマの授業 9時間)+(シャトルカードコメント書き 24時間)=週33時間

としても時間的負担は同じことになる。シャトルカードコメント書きの時間は減るが、そのぶん、受講生が発表や討論に参加できる機会も、担当教員が授業の中で学生と質疑をする機会も増えるはずである。ま、狭い教室での発表と、数百人が入れる大ホールでの研究発表では学生の意気込み、緊張度、達成感が段違いに異なると言えないこともないが。

【思ったこと】
_80918(木)[教育]桃太郎フォーラムXI:受けたい授業を創る:教授法改善のヒント(6)「橋本メソッド」とは何か?(3)/e-Learningシステムの活用

 今回は2つほど疑問点を述べさせていただく。

 まず、橋本メソッドがどのような授業科目において有効であるのか、という点である。教養教育科目で、課題探究型のグループ研究を行う場合は大いに有効であろうが、専門科目や、体系的知識を学ぶ必要のあるような科目ではどうだろうか。橋本氏のお話では、従来講義形式で行われていたような統計学の授業でも適用可能ということであったが、心理統計学を担当している私としては、これはちょっと信じられないことであった。いずれ機会があれば、「橋本メソッドによる統計学」の授業を参観させていただこうと思っている。

 第2の疑問は、「橋本メソッドの3つのポイント」:
  1. 競争原理
  2. ゲーム感覚
  3. 自由度の大きさ
のうち、1.の「競争原理」が本当に働いているのかという点である。授業に競争場面を持ち込んだ場合、金メダルや銀メダルを争うような上位チームは、熱心にグループ研究に取り組むであろう。反面、あまり勝ち目のないことがわかった下位チームでは、しらけムードや、「できるだけ労力を節約して最低限レベルの単位獲得を目指す」という省エネ型の受講態度が出てくることは無いのだろうか。9月17日の日記でも述べたが、グループ学習・研究では、「フリーライダー(=他のメンバーに任せっきりで何もせず、単位だけもらう学生)」と「リタイア(グループ活動に馴染めず離脱してしまう学生)」が出るという問題がしばしば指摘されているようだが、これが本当に解消できるのだろうか。橋本氏の話では、期末試験である程度チェックできるということであったが、ここにも何か、橋本氏の名人芸(あるいは、秘伝)が関与しているような気がする。なお、2006年11月20日の日記にも書いたように、別の大学のプロジェクト学習では、各グループあるいは個人に対して
  • 週報:毎週提出
  • 最終報告書:個人単位で執筆箇所を明記。
  • 欠席をしない:欠席した場合は欠席理由を担当教員に報告し、週報に理由を明記。
  • 週2回 合計6時間の活動時間確保
  • 自己評価、教員による評価、共同作業者によるコメント記載による適切な評価
といった工夫が紹介されていた。併せて参考にしていただければ幸いである。




 さて、午前の特別講演者お二人のほか、午後の分科会では、山口晴久氏から

●岡山大学e-Learningシステムを活用する方法

という話題提供もいただいた。e-Learningシステムのインフラが十分に整備され、試行段階から本格導入段階に入ろうとしているが、インフラの存在そのものの認知度が低く、これを学内にどう普及させるかが課題となっているというお話であった。時間の関係で詳しい言及は避けるが、私自身が考えるには、普及の初期の段階では、「システムを活用する」行動を付加的に強化する手段がやはり必要である。具体的には、活用を希望する教員へのサポート体制(たとえばTAやGAの配置)、また、そのような取り組みを行う教員に対する、何らかの負担軽減策(他のの授業の担当コマ数の軽減など)が求められる。ある程度の支援を行えば、そのあとの活用行動は、付加的な強化無しで「自走」できるのではないかと思われる。




 以上、勝手な感想をいくつか書かせていただいた。まだまだ書き足りないことはあるが、日本心理学会72回大会が9月19日からのまったこともあり、これをもって最終回とさせていただく。