岡山大学医学部・歯学部附属病院

腎臓・糖尿病・内分泌内科

下肢の閉塞性動脈硬化症に対するHGF遺伝子による血管新生治療の第3相臨床試験

 閉塞性動脈硬化症による下肢の安静時疼痛(Fontaine III)や皮膚潰瘍(Fontaine IV)に対して、保存的治療に加えて、従来、経皮的血管形成術(ステント)、バイパス手術、交感神経節切除術などが実施されています。また、難治性高コレステロール血症を合併する場合は、当科でLDLアフェレーシスを実施します。しかし、重症例の救肢率は十分でなく切断術が絶えません。最近、こうした重症虚血肢に対して、細胞移植療法(自家骨髄や臍帯血中に存在する血管内皮前駆細胞を患肢に筋注して血管新生を誘導する治療)が臨床応用され、当院(心臓血管外科)でも有望な成績が得られています。一方、血管新生作用をもつ遺伝子を用いる治療法の開発も進んでおり、すでに第3相臨床試験(治験)で有用性を検証する段階にきています。遺伝子による治療は、簡便かつ低侵襲であり、安全性と有効性が実証されれば多くの患者様にとって大きな福音となるでしょう。

 「HGF遺伝子プラスミドを用いた末梢性血管疾患(慢性閉塞性動脈硬化症・ビュルガー病)の治療のための遺伝子治療臨床研究」は、2001年6月から大阪大学で、従来の内科的治療に反応せず外科的治療が困難な症例(22例)に対して実施され、60%以上の症例で症状の改善を認めています。この間、HGF遺伝子に関連する重篤な副作用はみられず、同学遺伝子治療審査委員会の審査を経て、このほど厚生労働省による行政確認が終了し、いよいよ第3相試験(多施設共同プラセボ対照無作為化二重盲検比較試験)が開始されることになりました。当院もこの治験の実施施設(責任医師:腎臓・糖尿病・内分泌内科 槇野博史教授)に参画しています。

 遺伝子治療薬を動脈硬化というcommon diseaseに応用することは、わが国では初の試みです。それ故、本治験は、プラセボ対照-二重盲検というデザインに加えて、症例適格性判定委員会による事前審査が諮られます。当院では、本治験に限らず、細胞移植療法も実施(心臓血管外科)しておりますので、既存の治療法で改善の見込めない重症虚血肢の患者様がおられましたら、当科または心臓血管外科までご相談ください。