・体性感覚誘発電位(Somatosensory Evoked Potentials : SEP)

1) 定義
 SEPは、上肢または下肢の感覚神経に電気的あるいは機械的な刺激を与えることによって誘発される電位で、末梢神経から脳幹、大脳皮質に至る長い神経路の機能障害の検索などに用いられる。SEPは、以下のように分類される。

SEP 中潜時、長潜時SEP 皮質SEP(cortical SEP)
短潜時SEP 脊髄SEP(spinal SEP)
遠隔電場SEP(far-field SEP)

(2) 臨床応用
 SEPの異常は末梢から大脳の感覚野にいたる感覚神経の伝導路になんらかの障害を与える病変が存在するときに出現し、次のような疾患でSEP異常が報告されている。
1. 末梢神経障害
2. 脊髄障害
3. 脳幹障害
4. 視床病変
5. 大脳半球病変

(3) 上肢刺激の皮質SEPの検査
皮質SEPは主に視床レベルより上の大脳半球機能の検索に用いられ、皮質機能の低下に伴う精神障害などの検出にも利用される。また、皮質SEPの波形は潜時が遅いものほど、意識状態や検査の慣れ、薬物の影響などを受け易く、個人差も比較的大きいため異常の判定には注意を必要とする。

1. 被検者
 
被検者は臥位とし、筋電図、眼球運動などのアーチファクトの混入をできるだけ小さくするため、肩の力を抜き軽く開口し、閉眼させる。
2. 刺激方法
 
単相性矩形波を用いる。近位部を陰性とし、刺激幅は200〜300usec、頻度は1Hzとする。刺激痛軽減のため接触インピーダンスを下げる。刺激強度は当該筋に軽い収縮がおこる程度とする。アース電極は、帯状のものを用い、刺激電極より中枢側につける。通常は正中神経を手首で電気刺激する。目的に応じて尺骨神経手首部を電気刺激する場合もある。
3. 記録電極
 
導出電極は、刺激と反対側の頭頂と外耳孔を結ぶ線上で、頭頂から7cm外側、2cm後方の点(Shagassの点)。時にC3’、C4’(C3、C4の後方2cm)を用いることもある。基準電極は、導出電極と同側の耳朶、または両側耳朶連結を用いる。通常の測定は2chで行う。
 モンタージュは、(1)C4’-A2 (2)C3’-A1、アースは刺激肢の近位部。
4. 記録条件と記録波形
 
加算回数は、50〜200回。記録用フィルタ帯域は、0.5-1.0〜500-3000Hz。記録波形の特徴は、刺激反対側の頭皮上からP14、N18、P24、N33、P45、N55(N60)といった比較的安定した波が100msec以内に出現するが、P24は二峰性のこともありP24、N33には個人差がある。意識状態に左右される皮質SEPの分析では潜時の絶対値の変化よりも波形の左右差が重要視される。振幅の絶対値は個人差が大きく、左右差のみが異常判定基準になる。

上肢SEP

5. 岡山大学医学部附属病院中央検査部での記録および結果表示
・ 記録条件
記録フィルタ帯域 0.8〜300Hz
加算回数 100回
解析時間 400msec
刺激神経 正中神経
刺激電圧 筋収縮が起こる程度
刺激頻度 1Hz
・ モンタージュ (G1-G2)
(1) C4’-A2
(2) C3’-A1
アース電極は手首にまく。
・ 記録波形

980630G15IH
SEP(右上肢刺激)

 

(3) 下肢刺激の皮質SEPの検査
 
脛骨神経あるいは腓骨神経を刺激することによって頭頂部を中心に頭皮上の広い範囲から誘発電位が記録される。上肢刺激のSEP同様に末梢神経から大脳皮質までの深部感覚系の異常をとらえることができるが、意識状態や検査の慣れによる影響を受ける。多発性硬化症の検索に有用な検査。

1. 被検者
 
被検者は臥位とし、筋電図、眼球運動などのアーチファクトの混入をできるだけ小さくするため、肩の力を抜き軽く開口し、閉眼させる。
2. 刺激方法
 
単相性矩形波を用いる。近位部を陰性とし、刺激幅は200〜300usec、頻度は1Hzとする。刺激痛軽減のため接触インピーダンスを下げる。刺激強度は当該筋に軽い収縮がおこる程度とする。アース電極は、帯状のものを用い、刺激電極より中枢側につける。膝窩部で総腓骨神経を刺激する方法と足関節部で脛骨神経を刺激する方法がある。誘発される波形は基本的には同じですが、脛骨神経刺激の方が筋収縮が小さく不快感も少ない。
3. 記録電極
 
導出電極は、刺激と反対側の頭頂と外耳孔を結ぶ線上で、頭頂から2cm外側、2cm後方の点。または刺激と反対側のCzとC3、C4の中点C1、C2より後方2cmを用いることもある。基準電極は、導出電極と同側の耳朶、または両側耳朶連結を用いる。通常の測定は2chで行う。
 モンタージュは、(1)C2’-A2 (2)C1’-A1、アースは刺激肢の近位部。
4. 記録条件と記録波形
 
加算回数は、50〜200回。記録用フィルタ帯域は、0.5-1.0〜500-3000Hz。記録波形は、片側の刺激でも頭皮上の広い範囲でSEPの波形が記録され、しかも刺激と同側の頭皮上から明瞭な波形が記録されることもある。P1〜N3の波形。P1は内側毛帯系、N1は体性感覚野由来ではないかと予想されているが振幅が小さく正常人でも不明瞭なことがある。意識状態に左右される皮質SEPの分析では潜時の絶対値の変化よりも波形の左右差が重要視される。末梢から脊髄、大脳皮質に存在する機能障害の検索に用いられるが、脊髄誘発電位と併用して用いることによってその有用性を増します。

 

下肢SEP


5. 岡山大学医学部附属病院中央検査部での記録および結果表示
・ 記録条件
記録フィルタ帯域 0.8〜300Hz
加算回数 100回
解析時間 400msec
刺激神経 脛骨神経
刺激電圧 筋収縮が起こる程度
刺激頻度 1Hz
・ モンタージュ (G1-G2)
(1) C2’-A2
(2) C1’-A1
アース電極は足首にまく。
・ 記録波形

 

980421B11TH
SEP(右下肢刺激)



(3) 上肢刺激の短潜時SEP(short Latency SEP : SSEP)の検査
 
正中神経刺激後約20msec以内に刺激反対側頭皮上から電位が記録される。この電位は末梢の神経を刺激することによって引き起こされる興奮が、大脳皮質感覚野に達するまでの短い時間内に深部感覚神経系から誘発されたもので、脳幹部など脳深部で誘発された電位が遠隔電場電位として頭皮上に広く分布している。意識状態や検査の慣れ、薬物の影響などを受けにくく安定した再現性を示し、誘発される各波形の起源が比較的明瞭なことから、波形の消失や潜時の延長を見ることによって障害の部位と程度が把握可能です。

1. 被検者
 
被検者は座位または臥位とし、筋電図、眼球運動などのアーチファクトの混入をできるだけ小さくするため、肩の力を抜き軽く開口し、閉眼させる。短潜時成分の解析であるので軽眠状態でも波形には影響がほとんどない。
2. 刺激方法
 
単相性矩形波を用いる。近位部を陰性とし、刺激幅は200〜300usec、頻度は3〜5Hzとする。刺激痛軽減のため接触インピーダンスを下げる。刺激強度は当該筋に軽い収縮がおこる程度とする。刺激のアーチファクトを小さくするため、刺激肢のできるだけ近位部に接地電極を置く。通常は正中神経を手首で電気刺激する。目的に応じて尺骨神経手首部を電気刺激する。
3. 記録電極
 
導出電極はチャンネル数が4chと限られた場合には、その施設の目的によって方法も変える必要がある。Fzを基準として用いることにより頸部、皮質電位ともに雑音が小さく、しかも振幅が大きく記録できる方法(A案)と、
4. 記録条件と記録波形

 

上肢SSEP


5. 岡山大学医学部附属病院中央検査部での記録および結果表示
・ 記録条件
記録フィルタ帯域 (1)8〜1500Hz、(2)〜(4)32〜1500Hz
加算回数 1000回
解析時間 40msec
刺激神経 正中神経
刺激電圧 筋収縮が起こる程度
刺激頻度 5Hz
・ モンタージュ (G1-G2)
(1) C3’(4’)-Fpz
(2) C3’(4’)-Lt.(Rt.)Erb
(3) C5S-Fpz
(4) Rt.(Lt.)Erb-Fpz
アース電極は手首にまく。
・ 記録波形

 

980710G16TM
SSEP(上肢刺激)



(4)下肢刺激の短潜時SEP(short Latency SEP : SSEP)の検査

1. 被検者

2. 刺激方法

3. 記録電極

4. 記録条件と記録波形


5. 岡山大学医学部附属病院中央検査部での記録および結果表示
・ 記録条件
記録フィルタ帯域 (1)8〜1500Hz、(2)〜(4)32〜1500Hz
加算回数 1000回
解析時間 40msec
刺激神経 正中神経
刺激電圧 筋収縮が起こる程度
刺激頻度 5Hz
・ モンタージュ (G1-G2)
(1) C3’(4’)-Fpz
(2) C3’(4’)-Lt.(Rt.)Erb
(3) C5S-Fpz
(4) Rt.(Lt.)Erb-Fpz
アース電極は手首にまく。
・ 記録波形

 

980710G16TM
SSEP(下肢刺激)

(NECメディカルシステムズ "SEPポケット知識:"より)

 

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