・視覚誘発電位(Visual evoked potentials : VEP)

(1) 定義
網膜に光刺激を与えた時に大脳視覚領に生ずる反応。

(2) 検査の臨床応用及び適用

検査名 刺激の種類 臨床応用 適用
視覚誘発電位
(VEP)
パターンリバーサル
全視野刺激
視神経の機能検査 視神経病変(脱髄、中毒、圧迫、虚血など)、視交叉部病変(下垂体腫瘍など)、視交叉後病変(脳梗塞など)、パーキンソン病、ヒステリーの鑑別など
パターンリバーサル
半視野刺激
視交叉部ならびに視交叉後伝導路の機能検査 視交叉部病変(両耳側半盲例)、視交叉後病変(同名半盲例)、視神経病変と視交叉後病変との鑑別など
フラッシュ刺激 協力が得られにくい患者(意識障害、痴呆)や視力障害が強くパターンを認識できない患者(高度の白内障など)の視機能検査、光に対する反応性ミオクローヌス例の検査 網膜疾患と視神経疾患の鑑別、視交叉後病変(後頭葉病変など)、光反射性ミオクローヌス、視神経病変と視交叉後病変との鑑別など

・パターンリバーサルVEP

 大脳の視覚領のニューロンは網膜の均一な照射による刺激には鈍感で、輪郭やコントラストを有する図形による視覚刺激に対して高い感受性を持っている。この原理を利用して考えられたのがパターンリバーサル刺激であり、この刺激は白の格子と黒の格子が一定の時間間隔で互いにその位置を交換する方法で、比較的弱い光エネルギーで効果的に視覚領のニューロンを刺激できる優れた方法。


(3) パターンリバーサル刺激による検査(全視野刺激)

1. 刺激方法
 白黒の格子縞模様(市松模様)checkerboard patternを反転させる図形反転刺激を用いる。散瞳剤は使わず、片目ずつ開眼で検査する。被験者には刺激視野の中心に視点を固定させる。刺激視野の視角は8度以上がよく、格子縞模様の大きさcheck sizeは視角30分くらいがよい。15分、30分、60分など数種類の大きさで検査する事もある(註. 1度未満の視角θ(分)の計算式 : θ=3450×(r/d) r:一辺の長さ、d:距離、単位mm)。コントラストは50%以上とする(註. コントラストC(%)の計算式 : C=(Lmax-Lmin)/(Lmax+Lmin) Lmax:白の輝度、Lmin:黒の輝度)。近視や遠視がある場合は、眼鏡で視力を矯正した状態で検査する。白黒反転1周期(この間、2回転)をd秒としたとき、反転頻度は、1/d(Hz)となる。通常、dは1秒以上とする。(註. これをtransient型誘発電位と呼ぶ。これに対し、4Hz以上の図形反転頻度により生ずる誘発電位はsteady-state型と呼ぶ)。

2. 記録方法
1) 記録電極
 脳波用銀皿電極を用い、電極抵抗が5kohm以下になるようにする。記録電極は後頭結節inionから上方5cmの部位(MO)と、その左右に5cm側方(LO、RO)の合わせて3ヶ所に置く。基準電極は鼻根部nasionから上方12cmの部位(MF)とする。接地電極はCz(註. 脳電位分布の分析が一般化した今日、基準電極を両耳朶連結電極に、接地電極を後頭部に置く施設もある)。
2) 導出モンタージュ
 a)LO-MF b)MO-MF c)RO-MF
3) 記録用増幅器
 周波数帯域は低域が0.2〜1.0Hz、高域が200〜300Hz(-3dB)くらいがよい。
4) 加算回数と分析時間
 加算回数は100〜200回。左眼と右眼を交互に2回、あるいはそれ以上検査する。分析時間は250〜300msecくらいがよい。

3. 記録波形
 MOを中心にしてN-P-Nの三相性波形(N75、P100、N145)が現れる。

 

図1.全視野刺激VEP

4.岡山大学医学部附属病院中央検査部での記録および結果表示

・記録条件
記録フィルタ帯域 0.8〜300Hz
加算回数 100回
解析時間 400msec
刺激頻度 1Hz
・ モンタージュ
(1) RO-Fz
(2) MO-Fz
(3) LO-Fz 接地電極はCz。
・ 記録波形

図2.970507P13YS.pVEP(右眼全視野刺激)

(4) パターンリバーサル刺激による検査(半側視野刺激)

全視野刺激図形反転視覚誘発電位の場合と違う点だけを述べる。

1. 刺激方法
 刺激視野/非刺激視野の境界線の中点を1度だけ、非刺激視野側にシフトした点に被験者の視点を固定させる。刺激視野の視角は10度以上がよく、格子縞模様の大きさcheck sizeは視角50〜90分くらいがよい(註. 1度以上の視角θ(度)の計算式 : θ=57.3×(r/d) r:一辺の長さ、d:距離、単位mm)。

2. 記録方法
1) 記録電極
 記録電極はMO、LO、ROのほかにMOの左右10cm側方(LT、RT)を加えて5ヶ所に置くことができる。
2) 導出モンタージュ
 a) LT-MF b)LO-MF c)MO-MF d)RO-MF e)RT-MF
 4チャンネルの増幅器を使用する場合、刺激視野と同側の側頭部導出(LTとかRT)を省略してもよい。
3) 記録用増幅器、加算回数と解析時間
 全視野刺激図形反転視覚誘発電位の場合と同じ。

3. 記録波形
 刺激視野と同側の頭皮上導出と正中後頭部(MO)からN-P-Nの三相性波形(N75、P100、N145)が現れる。これを"paradoxical lateralization"と呼ぶ。刺激視野と対側の頭皮上導出からはP-N-Pの三相性波形(P75、N105、P135)が現れる。

 

図3.半視野刺激VEP

4.岡山大学医学部附属病院中央検査部での記録および結果表示

・記録条件
記録フィルタ帯域 0.8〜300Hz
加算回数 100回
解析時間 400msec
刺激頻度 1Hz
・ モンタージュ
(1) RT-Fz
(2) RO-Fz
(3) MO-Fz
(4) LO-Fz
(5) LT-Fz 接地電極はCz。
中央検査部では4ch記録装置であるため刺激視野側の側頭部を記録している。右眼右半視野の場合は、(1)〜(4)で記録する。
・ 記録波形

図4.970225P1KK.pVEP(右眼右半視野刺激)

・フラッシュVEP

 フラッシュ刺激によるVEP波形は複雑で個人差も多く視覚神経機能との対応も難しいという問題はあるが、乳幼児や意識障害患者、痴呆患者などパターンリバーサル刺激での画面注視が難しい場合に行う方法。

(6) フラッシュ刺激による検査
1. 刺激方法
 フラッシュ刺激は図形反転刺激が行い得ない乳幼児や高度の視力障害者、意識障害や痴呆を有する患者に有用である。キノセン管、またはLED(light-emitting diodes)ゴーグルを用いる。キノセン管刺激では、Ganzfeld型刺激装置を用いる方法が推奨されている。0.5〜1.0Hzの刺激頻度とする。

2. 記録方法
1) 記録電極
 記録電極はMO、RO、LO、Czに置き、基準電極は両耳朶連結電極(A1A2)とする。接地電極はFz。
2) 導出モンタージュ
 a)LO-A1A2 b)MO-A1A2 c)RO-A1A2 d)Cz-A1A2
3) 記録用増幅器、加算回数と解析時間
 全視野刺激図形反転視覚誘発電位の場合と同じ。

3. 記録波形
 刺激から250msec以内に、一連のピークが出現する(I、II、III、IV、V、VI、VIIまたはN1、P1、N2、P2、N3、P3、N4)。

 

 


4. 岡山大学医学部附属病院中央検査部での記録および結果表示

・記録条件
記録フィルタ帯域 0.8〜300Hz
加算回数 100回
解析時間 400msec
刺激頻度 1Hz
・ モンタージュ
(1) P4-O2
(2) P3-O1
(3) O2-AA
(4) O1-AA 接地電極はFpz。
・ 記録波形

 

 

(日本脳波筋電図学会による"誘発電位測定指針"より)

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