脳波( Electroencephalogram ; EEG )

(1) 定義:
 大脳の神経細胞(群)の電気活動を体外に導出し、記録したもの。通常、大脳皮質の多数のニューロン群(神経網)の総括的な活動を対象として、これを体表に装着した電極を用いて記録する頭皮上脳波を指す。頭皮上で見ているものは主に大脳皮質の電気活動であるが、深部の活動も一部反映される。

(2) 検査の意義:
 上記の電気活動をとらえて増幅器にかけ、波形として描き出したもの(脳波 ; 数uV〜数百uV , 周波数は0.5Hz〜数百Hz)から、機能的異常、器質的な障害を明らかにし診断に役立てる。
ex) 脳の働き、てんかん、脳動脈硬化症、脳血管障害、脳腫瘍、意識障害、等。

(3) 記録:
 電極を装着した被検者をシールドルーム内のベッドへ仰向けに寝かせ、安静覚醒閉眼時および賦活中(開閉眼試験、閃光刺激、過呼吸、睡眠、等)の脳波を記録する。記録時間は、約1時間。

1. 安静覚醒閉眼時(Awake record)
 基礎律動(安静覚醒閉眼時の脳波像の中で、最も主体をなす律動 ; Background Activity )および、その出現性、規則性、左右差、混在する異常波を見る。
脳波は過齢とともに刻々と変化していくが、正常成人の基礎律動は、後頭部に見られるα波であり、これに若干のβ波が混在している。

2.開閉眼試験
 開閉眼による脳波の反応を見る。
ex) αブロッキング、閉眼sensitive、等。

3. 閃光刺激(Photic stimulation ; PS)
 暗室内で被検者の眼前20-30cmで、視野の中央にランプを置き両眼を均等に照射する。刺激頻度は、3-30Hzで10秒間隔で行い、脳波の変化を見る。覚醒状態で実施する。
ex) 光駆動反応(driving response)光過敏性(photosensitivity)、等。

4. 過呼吸(Hyperventilation ; HV)
 閉眼したまま20-30回/分程度の割合で深呼吸を3分間続けさせ、終了後2分程度の記録をし、脳波の変化(基礎律動の変化、突発性異常の出現)を見る。
ex) build-upre-build-up欠神発作(3Hz棘徐波複合)、等。

5. 睡眠(Sleep record)
 自然睡眠による方法と、誘発(薬物)睡眠による方法があるが、自然睡眠が最も望ましい。いずれにしても異常所見の賦活効果の高い睡眠初期のsleep stage 1〜2を含む10-20分の記録をし、脳波の変化を見る。
ex) 年齢発達(hump、sleep-spindle、等)、突発性異常、持続性異常、等。

(4) 記録波形:
 正常成人女性(20Y)の覚醒時および睡眠時の脳波を以下に示す。

覚醒時脳波

睡眠時脳波

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・脳波の周波数分類:

周波数分類 δ波 (0.5)〜4.0Hz 徐波
θ波 4.0〜8.0Hz
α波 8.0〜13.0Hz  
β波 13.0〜(30.0Hz) 速波

・αブロッキング(alpha blocking): alpha attenuation
 覚醒時脳波記録中に開眼させる(視覚刺激を与える)ことによってα律動(基礎律動)が抑制される現象。

・光駆動反応(driving response):
 周期的閃光刺激により、刺激サイクルと同一あるいは調和関係にあるサイクル数の波が後頭部優位に出現する。正常者においても出現する生理的反応である。

・光過敏性(photosensitivity):光突発反応(photo-paroxysmal response ; PPR)
 てんかん、特に小発作やミオクロニー発作をもつてんかんでは、閃光刺激によって、棘徐波複合あるいは多棘波複合などの突発性異常波を誘発する。誘発される異常波はたいてい全般性、対称性、同期性のものである。

・build-up:
 過呼吸賦活を行うことによって脳波(基礎律動)が徐波化し振幅の増大を示す(同時に同期性の亢進)こと。小児ほど著明に起こる。正常成人では著明な変化を示すのは稀であるが、過呼吸開始1分以内に著明なbuild upを示したり、過呼吸終了後も30秒以上続くのは一応異常と考える。

・re-build-up:
 過呼吸終了後に(build upによる徐波が消退してから)再び現れる徐波化をいう。もやもや病で現れやすい。本症に対する実施には慎重を要する。

・欠神発作(absence):
 過呼吸賦活を行うことによって賦活されやすい意識消失発作。両側同期性3Hz棘徐波複合の出現を見る。

・睡眠段階(sleep stage):
 脳波は覚醒から睡眠へ、また睡眠の深さに応じて多彩に変化する。睡眠の深度を以下の表のように分類する。

脳波像 慣用表現 国際分類 生理学的区分
低振幅脳波(興奮)

α波(覚醒)

徐α波、α波断続(弛緩)
覚醒期 Stage W

α波が50%time以上

覚醒
α波消失、平坦化

低振幅θ波、β波
入眠期
(傾眠期)
Stage 1
α波が50%time未満
低振幅のさまざまな周波数の脳波
非レム睡眠
(NREM)

(Stage 3,4を徐波睡眠)

頭頂鋭波(瘤波) 浅眠期
(軽睡眠期)


中等度睡眠期


深睡眠期
紡錘波、K複合
(背景脳波は低〜中等度振幅徐波)
Stage 2
12〜14Hz紡錘波(持続0.5秒以上)かK複合の出現
紡錘波と高振幅δ波の混在 Stage 3
δ波(2Hz以下、75μV以上)が20〜49%time
高振幅δ波が優勢、連続
(紡錘波消失)
Stage 4
δ波(2Hz以下、75μV以上)が50%time以上
低振幅θ波、β波
(急速眼球運動出現、筋緊張低下)
REM睡眠期 Stage REM
低振幅のさまざまな周波数の脳波
REM:(+)
EMG:最低レベル
レム睡眠