世界では多くの言葉が話されています。それぞれに精密なしくみ、長い歴史があります。言語科学とは、このような世界のさまざまな言葉がどのようなしくみで働いているのか、言語間には共通の特徴があるのか、どのように変化していくのか、社会・文化とどのように関わっているのか、人はどのように言語を習得するのかといったことをテーマとする学問です。
このコースには言語学・日本語学・英語学・フランス語学に関係する科目があります。韓国語・東アジアの諸言語、トルコ語およびチュルク諸語、フィリピン諸語、現代日本語、日本語史、英語、英語史、フランス語を扱う、多彩なスタッフを擁しています。授業では、こうしたアジアやヨーロッパの諸言語のしくみに触れ、その構造や意味のあり方や歴史的な変化の様相、言語間の接触と交流、言語と社会や文化との関係のあり方などを明らかにすることをめざしています。
少し具体的に述べてみましょう。日本語のピンと英語のpinを比較したときに、音声分析装置を使うとどんな違いが見られると思いますか?全くかけ離れた言語の間に、似たような規則が見られるのはなぜだと思いますか?フィールド調査をしてみると日本語の方言はどんな風に違うと思いますか?
こうした問題を扱った授業を展開しています。
音声分析装置による音声の波形です。日本語のピンと英語のpinの違いがくっきりと顕れます。
トルコのサフランボルで出会った子供たち。
韓国語など東アジアの諸言語、トルコ語など西・中央アジアの諸言語、フィリピン諸語など東南アジアの諸言語を中心に、世界のさまざまな言語のしくみについて学ぶことにより、言葉の多様性と普遍性、その構造や歴史、言語間の接触などについての理解を深めます。世界のさまざまな言語の中で日本語はどのような姿に見えるでしょうか。このほか言語学では、パソコンを使った授業、音声分析、母語話者が参加する授業などユニークで多彩な授業を展開しています。
辻先生の授業風景
トルコ人留学生を交えたトルコ語の授業。
現代日本語
母語を研究するには、客観的かつ相対的な視点をもつことが大切です。世界の言語のなかに日本語を置いてみる。学習者の立場から日本語を捉え直してみる。様々な環境のなかにある日本語の多様性に目を向けてみる。こうした視点によって、日本語の本当の姿が次々に明らかになってきています。みなさんは、日本語には後置詞(英語の前置詞にあたるもの)があることや2つの過去形をもつ方言があることをご存知でしょうか?
日本語史
日本語が古代から現代にかけて、どう変化してきたのか、その展開を文献資料や現代語・方言の分析を通して探ります。その際、日本文学・中国文学などとも連帯する必要があります。人麻呂や紀貫之の表記法、清少納言の言語観といった個人の営み、現代仮名遣いなどの言語政策、ケータイ小説の表記や言葉など、脈々と続く日本文化との関係も重視することで、豊穣な世界が拡がるのではないかと思います。
中国広州で開催された国際シンポジウムの会場。日本語研究は海外でも活発に行われています。
『きのふはけふの物語』という笑話集の写本です。
皆さんが今まで「そういうもの」として学んできた英語の文法について、「なぜそうなのか」を考えます。そうして英語や日本語など個々の言語の違いを超えた共通の文法を探る理論について探究します。
また英語の表面的現象の背後に存在する興味深い規則性を解明していきたいと思っています。英語の不思議な特性に注目し、英語の動詞の意味が文に与える影響について考えています。授業では、英語という言語の本質を探究する目的で書かれた学術論文に取り組んでいます。
また英語の歴史的な変化について研究するのが英語史です。例えば、一語動詞lookがhave/take a lookと表現されますが、現代英語でのそれぞれの役割・相違を考察するだけではなく、どのように歴史的に発達したのかという仮説を立て、実証的にデータを使用して明らかにする学問です。
万巻の書を読み千里の道をゆく。
世界の生成文法研究の最前線の研究が満載された研究者必携の言語学雑誌です。
現代フランス語を、英語や日本語と対照させながら学んでいきます。皆さんはフランス語は英語と似たようなものだ、また日本人の自分には縁遠い言葉だと思っていませんか?
実はフランス語は、英語とは、疑問文や否定文の作り方、冠詞や過去時制の使い方など、違いもたくさんあります。またハとガの区別にあたるものを表せるなど、日本語との意外な共通点もあります。フランス語を切り口に、言葉の多様性と一般性を探っていきましょう。
パリの朝焼け
パリ第8大学での授業風景
1年次前期開講の「人文学への招待」は、このコースに所属する担当教員がオムニバス形式によって行なう講義で、言語科学専修コースの教育分野の全般を知るよい機会となっています。そして、1年次後期開講の「人文学入門演習」では言語に関する文献の読解や言語の分析を行うことにより、言語研究への理解・関心を高めていきます。2年次では概説を複数受講しながら、言語学・日本語学・英語学・フランス語学など各学問分野の基礎的知識を習得していきます。
言語科学専修コースでは、アジア諸言語やヨーロッパ諸言語などの様々な言語に関する多彩な授業が展開されています。2年次以降、こうした様々な学問分野の講義・演習を受講し、言語研究に関する知見を広めながら、自分の専門分野を絞っていくことになります。3年次後期から課題演習が始まります。この授業は卒業研究の一環として位置づけられるもので、卒業論文作成に向けた活動がいよいよ本格化し、そこでの研究成果を4年間の集大成となる卒業論文として仕上げるということになります。
| 授業科目 | 講義題目 |
|---|---|
| 人文学への招待 | 言語科学入門 |
| 言語学概説 | 言語学の基礎 |
| 日本語学概説2 | 日本語史:近現代語の諸相と展開 |
| 英語学概説 | 英語の意味・機能・構造 |
| フランス語学概説 | フランス語学の基礎 |
| 言語学演習1 | 音響音声学 |
| 言語学講義2 | 日英語対照研究 |
| 言語学演習3 | トルコ語研究初級 |
| 日本語学講義1 | 上代日本語研究 |
| 日本語学講義2 | 現代日本語文法論 |
| 日本語学演習 | 近世語研究 |
| 日本語学演習 | 現代日本語における社会言語学の方法 |
| 英語学講義 | 英語の歴史 |
| 英語学講義 | 語彙意味論と統語論のインターフェイス |
| 日本語学演習 | 生成文法統語論 |
- 母音の無声化に関する音響音声学的考察
- トルコ語の形態統語法の諸問題について:複数形lerとlarの出現傾向
- 人間中心の英語・状況中心の日本語ー英語と日本語の他動詞・自動詞の使い分けについて
- 中国語の”把”構文における「動詞+結果補語」構造の特徴
- 和歌山県北部方言における否定表現に関する社会言語学的研究
- 東三河方言の文末表現について
- 「なんか」の機能と用法
- 指示詞系感動詞の歴史的変遷
- ベビートークに関する言語学的考察
- スポーツ実況中継の談話分析
- 中期英語から初期近代英語における助動詞canの変遷について
- The Directional Preposition and the Aspectual Behaviors
- Anaphors and Binding
