業績集

2000年(平成12年)

一酸化窒素増で細胞死滅
      変形性関節症 発症メカニズム解明
岡大研究チーム



 手や足の関節が変形し、痛みを伴う「変形性関節症」の発症過程で,体内に一般的に存在する一酸化窒素が過剰になり、軟骨細胞の自滅減少(アポトーシス)を起こさせていることを岡山大学整形外科(井上一教授)などの研究チームが突き止めた。変形過程の詳しいメカニズムが明らかになったのは初めてで、効果的な薬の開発も期待されている。
 同整形外科の西田圭一郎助手と栗林医院(高松市)の佐々木和浩医師らのチームは、一酸化窒素を生み出す特別な酵素の働きに着目。イヌやウサギの軟骨細胞、組織を使い実験した結果、炎症状態では、酵素の働きで通常より多く一酸化窒素が生み出された部分で細胞死を確認した。
 この過程を検証するため、同関節症の手術を受けたヒトから取り出した患部の軟骨組織を調べたところ、細胞死が起きていた。さらに組織を分析した結果、死滅していた細胞部分で一酸化窒素が発生したことを示すタンパク質の存在を認めた。
 一連の研究からチームは「増えた一酸化窒素で軟骨細胞が自滅。死んだ細胞がもとになって関節の変形につながっている可能性が強い」と結論づけた。
 一酸化窒素は、血液循環や免疫反応に欠かせないが、炎症を起こすと過剰に生まれるとされている。
 西田助教授は「酵素による一酸化窒素の発生を防ぐ薬を作れば、症状の進行を抑えることも可能だ」としている。


別疾患にも応用可能

 富山医科歯科大整形外科の木村友厚教授の話 軟骨の変性で従来指摘されていた一酸化窒素と軟骨細胞死の関係を明らかにした貴重な研究。薬の開発以外に、軟骨を壊す別の関節疾患の発症解明にも応用できる。


変形性関節症

 膝や股(こ)関節、指先の関節が変形し,痛みを引き起こす。原因は分かっていないが、六十代以上に多い。治療法として,薬物療法や理学療法などがあるが根治療法はない。国内の患者数は約五百万人に上ると推定されている。


山陽新聞 2000年(平成12年) 8 月31日 木曜日