岡山大学整形外科教室は開講とともに、グループに分けられ各々において研究が続けられており、中でも小児股関節脱臼(先天性股関節脱臼)は、第2代教授の田邉剛造名誉教授がライフワークとして取り組まれてきた分野です。特にオリジナルの手術法である広範囲展開法(田辺法)は、1974年から小児グループで引き継がれ数々の研究や成書の発刊(先天性股関節脱臼の診断と治療)も行われてきました。現在では、他施設でも施行される難治性股関節脱臼症例にも対応しうる観血的整復術として認識されており、手術見学にも多くの小児股関節外科医に来て頂いております。少子高齢化に従い手術症例は減少していますが、逆に治療経験を持つ整形外科医師も減少しているため貴重で責任の多い分野です。また大腿骨頭すべり症やペルテス病などの小児股関節疾患のみならず、筋性斜頚、内反足、下肢の矯正や骨延長の治療も旭川療育園の赤澤啓史臨床教授と連携し、指導を仰ぎながら行っております。
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先天性股関節脱臼 | 広範囲展開法(田辺法) |
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内反足の治療 | 筋性斜頸の手術 |
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変形矯正・仮骨延長術 | 仮骨延長術+MIPO法 |
岡山大学整形外科では、股関節疾患に対して前グループリーダーの三谷茂先生(現 川崎医科大学 骨・関節整形外科 教授)の時代から、小児から成人まで小児・股関節グループが一貫して診療を行っています。小児股関節疾患でも長期間の経過観察において、寛骨臼形成不全、変形性股関節症へと進行し症状が出現し手術加療が必要になることがあります。当科では、小児股関節疾患では(保存的治療症例も含めて)高校卒業まで定期経過観察を行っています。また成人に達した患者さんが、30年・40年後に来院された場合でも過去のX線フィルムがほぼ保存されているため、長期での経過をみることができ、アドバイスや治療も全般で可能です。他の施設では小児股関節外科と成人股関節外科での連携が途切れてしまうこともあるのに対して同一施設で患者さんに対応できることが特徴です。寛骨臼形成不全、変形性股関節症は、患者さんごとに年齢、体格、生活・仕事環境、病期が異なります。患者さんごとに画像診断と総合的な判断により保存的治療を含めて治療方針を決定します。50歳未満の比較的若年者では、病期に応じて関節温存術を提案します。
寛骨臼形成不全に対しては、主に寛骨臼回転骨切り術(寛骨移動術)を施行していますが、骨頭の変形がある症例に対しては棚形成術を施行する場合もあります。寛骨臼形成不全を伴わない関節唇単独損傷や股関節インピンジメント症候群(femoro-acetabulr impingement:FAI)に対しては、主に股関節鏡下手術を行っております。特発性大腿骨頭壊死に対して若年者では大腿骨骨切り術や筋付き腸骨移植術も施行しています。人工股関節全置換術はもっとも頻度が高い手術ですが、まったく治療歴もない変形の少ない症例から小児期に治療歴をもつ高度変形や脚短縮のある症例まで治療を行っております。個々の症例における股関節の状態に応じて最適と考えられる手術アプローチ、機種選択を術者が術前計画で判断し施行しています。臨床研究ではナビゲーションシステムの臨床成績の比較など(Yamada K et al, Journal of arthroplasty 2018)も行っています。また2008年より院内骨バンクを立ち上げており、骨欠損症例に対する同種骨を使用した再置換術も70例以上施行し安定した成績が得られております。
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寛骨臼形成不全(初期)に対する寛骨臼移動術 | 寛骨臼形成不全(骨頭変性症例)に対する 棚形成術 |
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末期股関節症に対する Chiari+大腿骨内反骨切り術 |
広範囲大腿骨頭壊死症に対する筋付き腸骨移植 |
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股関節鏡による関節唇縫合術や余除骨切除による関節内治療 | |
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各症例に応じてアプローチや使用インプラントを選択して全人工股関節置換術を施行 | |
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他院BHA後に高度骨盤側への陥入と 骨欠損の症例に対して同種骨移植と 支持プレートによる再置換術 |
当科で骨切り後人工関節術後 32年後の症例に対して同種骨を用いた 大腿骨再建を伴う再置換術 |
2018年4月からの小児・股関節グループ 週間予定
月曜日(午前)遠藤裕介(山田和希)、赤澤啓史(小児専門 月1,2回不定期)、鉄永智紀
火曜日(午前)鉄永智紀
水曜日 手術日
木曜日(午前)遠藤裕介(山田和希)
金曜日 手術日
スポーツ股関節障害(股関節鏡症例)の紹介は月、木の午後に山田和希が対応しますのでよろしくお願いします。