研究グループ

腫瘍グループ

腫瘍グループについて

 岡山大学整形外科は日本国内有数の骨軟部腫瘍治療センターで、中国・四国地域を中心とした多数の骨軟部腫瘍の患者様が来院されている。ここでは、骨肉腫やユーイング肉腫の患者様などを中心に、年間100名以上が治療を受けている。

 骨軟部腫瘍の診断・治療は、近年大幅に進歩した。それに伴い当施設での患者様の予後や術後機能も、過去20年程度で大幅に改善している。例えば、整形外科の悪性腫瘍の代表である骨肉腫は、1970年代には5年生存率は10%代であったが、最近では80%にまで到達している。これには、強力な術前・術後化学療法の普及が大きく影響している。術前に腫瘍の縮小化を図ることで患肢温存率も95%近くにまで上昇した。特に当施設では、来院された患者様に早急に診断を付けて、治療を開始できるように心がけている。

 画像診断では、MRIによる局所的な病態の把握は言うまでもなく、最先端のダイナミックMRIやタリウムシンチなどによる良悪性の鑑別診断(300例を超える経験を持つ)や化学療法の効果判定を行っている。また近年の分子生物学研究の進歩に伴い、従来の病理組織診断に加えて腫瘍の遺伝子診断が重要なものとなっている。これを実施することにより、早い場合には組織検査を行った同日の夕方には遺伝子診断が確定し、治療に移ることができる場合がある。

 治癒率の上昇とともに、1990年代以降は整形外科的な再建手術がクローズアップされるようになった。生存率の改善に伴って、腫瘍を切除後の患肢の機能が重要な問題となっている。患者様には特定の術式に固執するのではなく、我々の豊富な経験を踏まえて多数の選択肢を示し、患者様自身に選択していただくことをモットーとしている。最も一般的な再建方法は、人工関節置換術であるが、人工物である金属と生体組織の筋肉や腱の癒合方法が問題となる。これらの再建を確実に行えるように、ポリプロピレンメッシュを用いた再建を常に行っている。

プロピレンメッシュを用いた再建
脛骨骨腫瘍切除後
上腕骨骨腫瘍切除後

 また、切除した骨腫瘍を加温または液体窒素処理した後、血管柄付き腓骨移植などを行って固定する再建法も行っており、全例で骨癒合に成功している。上腕骨では本邦では初の術式である、鎖骨を回旋させて上腕骨部に移行させる再建法も行っている。

脛骨骨肉腫切除後再建
鎖骨を用いた上腕骨再建
加温処理骨+血管柄付き腓骨移植
 

 骨盤骨腫瘍の切除においては、Hip transposition法を用いる事により手術時間の短縮、術後感染の低減、良好な可動域の実現を可能としている。

脛骨骨肉腫切除後再建
Hip transposition 法

 最近では形成外科医との積極的なコラボレーションで、高度な再建手術を次々成功させている。

 腫瘍グループとしては、過去15年間の国際雑誌への骨軟部腫瘍の研究や治療成績等の報告を中心とした総英語論文数は170編を越えている。1993年度より厚生労働省の骨軟部腫瘍研究班の班員として参加し、2003年より厚生労働省の高悪性度骨軟部腫瘍に対する標準的治療法の確立に関する研究班に加わり、軟部肉腫に対する効果的な化学療法の研究を行っている。2004年からは、さらに厚生労働科学研究費補助金による治験推進研究事業である「再発あるいは治療抵抗性のc-kitあるいはPDGFR 陽性肉腫に対するイマチニブ第Ⅱ相試験」に参加し、医師主導型治験を開始している。さらに、2003年には「ヒストンデアセチラーゼ阻害剤の軟部肉腫(特に滑膜肉腫)に対する用途特許」の日本出願を行い、その後2004年にアメリカなどへ国際特許出願を行った。2007年からは消化器外科と共同で、骨軟部肉腫に対する改変アデノウイルスを用いた治療を研究している。

 骨軟部腫瘍の研究と治療を通して、一人でも多くの骨軟部腫瘍患者様が病気から開放され機能的な生活に復帰できることが、我々の夢である。

改変アデノウイルスを用いた新規治療の開発

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