扁桃病巣感染症

以下の原稿は平成9年5月大阪で開催された日本耳鼻咽喉科学会第98回総会で口演したものです。(スライドは近日掲載予定です。)

 IgA腎症扁摘症例の長期予後

目的:IgA腎症は慢性の経過をたどる疾患であり、20年後には38%前後が末期腎不全に至ると報告されています。一方耳鼻科領域より扁摘後の尿所見の改善、血清IgA値の低下などが報告されていますが、はたして扁摘が長期的にIgA腎症の予後改善に貢献しているかどうかはいまだに不明です。今回我々はIgA腎症扁摘例の長期経過例の腎機能保持率、腎生存率について検討し、扁摘の臨床的有用性について考察しましたので報告します。

対象:当科にて1983年1月より1996年2月までの13年間に腎生検にてIgA腎症と確診し扁摘を行った症例は79例であり、それらの症例のアンケートによる追跡調査を行いました。その結果、追跡が可能で、腎病理所見が入手可能であったのは65例でした。腎生検時の年齢別分布は20代を中心に10代から30代までに多い傾向を示しました。これは従来報告されているIgA腎症の年齢分布と同様の結果でした。

 今回はこれらの65例の中から腎生検後5年以上経過している40例の長期経過例を対象としました。

 5年以上経過例40例のうちわけは男性21例で女性19例でした。これらの40例のデータの平均値を示します。年齢は25.8歳、腎生検から扁摘までの期間は11.1カ月、経過観察期間は8年9カ月、血清IgA値は381.7mg/dl、Ccrは86.0ml/min、一日尿蛋白量は0.56g/日、ステロイド使用例、高血圧例はともに10%でした。 

 スライドには既に報告のある内科的治療による IgA腎症での長期予後を示します。これらの報告は、我々の報告と同様、腎生検後の観察期間が平均約8年から10年とするものですが、いずれも腎生存率はおよそ80%前後と報告されています。今回の我々の97.5%という報告はこれらと比較しても優れた腎生存率を示しています。

 既に示しました通り、IgA腎症の予後はその病理学的進行度が強く関連していると考えられています。従って病理学的分類で最も頻度が高いとされる微小変化群が検討対象の内どのくらいの割合で存在しているかによって予後が変わってくると推測されています。そこで、1995年の竹林らの報告と比較してみますと、微小変化群の割合は1020例の中で44.8%であり、われわれの45%とほぼ同等でありました。経過観察期間がやや短いものの腎機能保持率は70.2%に対して95%、腎生存率は79.2%に対して97.5%であり、やはり扁摘症例の方が腎機能保持率、腎生存率が優れているという検討結果が出ています。

 こうした治療法間での比較は各施設間での病理学的診断の違いや、保存療法の違いによって影響を受けることが予測されるため、厳密には2重盲検法によるコントロールスタディが必要になると考えられます。しかし、少なくとも今回の我々のレトロスペクティブな検討の結果からはIgA腎症に対する扁摘の効果が、特にその腎生存率の点で高いことが示されており、有益な治療法の一つとして考慮されるべきものであると考えられます。IgA腎症の場合、内科的には現在10年予後、20年予後が問題とされていますので、今後はさらに長期の経過観察による腎機能予後を検討することが重要と考えております。

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