謹啓

近年、科学の分野では、「21世紀は脳の時代」とも云われ、医学・薬学系学者はもとより、理学・工学・コンピューター制御関係など、多くの研究者が人類に残された最後のブラック・ボックスである脳の機能解明に向って凌ぎを削っております。一方、臨床医学の面でも、先進国社会の超高齢化とともに、脊髄小脳萎縮症や筋萎縮性側索硬化症といった神経変性疾患や認知症、脳卒中をはじめとする脳疾患の病態解明や再生医療などの治療法開発は重要な社会的課題となっております。
本シンポジウム開催責任者の阿部康二らは長年の研究により、岡山県西方で広島県福山市を流れる芦田川流域出身者に脊髄小脳萎縮症+筋萎縮性側索硬化症+認知症を合併した極めてユニークな遺伝性疾患を発見し、発見地にちなんで「Asidan」と名付けました。この阿部らにより日本の芦田川流域で発見された脊髄小脳変性症+Motor Neuron Disease+Frontal Dementia=Asidan (SCA36)は、その後スペインならびに台湾でも患者の存在が報告されてきました。またこのAsidanは遺伝子のintron 1に存在するhexanucleotide expansionであるという点でALS+Frontal Dementia=C9orfとの臨床的・遺伝子異常的共通点があるなど、神経内科学上だけではなく神経科学全般にまたがる興味深い特徴があります。さらに最近になり南九州でも大家系の存在が明らかとなりました。
このような状況を受けて、このたび本疾患の発見地域である芦田川地域(福山市)で国際シンポジウムを開催させて頂く運びとなりました。幸い今回はスペイン家系の発見者であるMaria-Jesus Sorbido教授のグループと台湾家系の発見者である臺北榮民總醫院神経内科の宋乗文教授のグループからもご参加の快諾を得ることになりました。そこで本学問領域に関する世界の最先端研究者が一堂に会して、原因解明と創薬にも繋がる最新情報をいち早く情報交換し、さらに発展途上国の若手研究者への教育的効果も期待して、このたび本疾患の発見地である福山市において第1回シンポジウムを開催する運びとなりました。
本シンポジウムが、皆様のご協力で盛り上がり、時代を画する有意義なものになりますよう、多数の研究者のご参加を心よりお待ちしております。

謹 白

第1回国際Asidan病シンポジウム
会長 阿部 康二
(岡山大学大学院脳神経内科学 教授)