]線の色?を使い分ける
―「見える光」の波長と]線の波長のお話し―
光の色と散乱
私たちの目に見える光は、電磁波(注1)と呼ばれる波の一種で、その波長の違いにより、赤や、橙、黄、緑、青、藍、紫など様々な色として見ることができます。赤色は波長が長く700nmくらい、青色は450nmくらいの電磁波です。(注2)
同じ光でありながら、波長が2倍近く違う赤色と青色は、空気による散乱の受けやすさが大きく異なります。まず、空の色を例に、光の散乱について見ていきたいと思います。
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| (図1)太陽の光にはたくさんの色が含まれています。 各色の光はある波長をもった電磁波です。(略図) |
空はなぜ青いの? ―散乱されやすい青―
日中において、晴天の空が、青いのはなぜでしょう。宇宙が太陽に照らされて、青く見えているのでしょうか? いえ、宇宙空間に色はないはずです。
通常、太陽の光は「白い」光と私たちは感じていると思いますが、太陽の光が虹を作るように、あるいは、プリズムで太陽の光を様々な色に分離できるように(図1)、太陽の白い光は、赤から青紫の色の混合の結果 「白」く見えます。晴天の空が青く見えるのは、太陽から発せられた白い光の中の青色成分のみが、地球を取り囲む空気により散乱(進行方向を変えながら進む)され、それを繰り返しながら、空のあらゆる方向から私たちの目に降り注いでくるからです。青の光は、空気で散乱されやすいのです。
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| 波長の短い青は散乱しやすく空全体に広がります。 (大山の空) |
夕暮れの空はなぜ赤いの? ―直進が得意な赤―
さて、赤い光はどうでしょう。丸い地球とそれを取り巻く大気の層を想像してみてください。夕方、水平線近くに傾いた太陽の光は、私たちのところへ届くまでに、昼間より長い空気層を通過しないと届かないことが想像いただけるでしょうか(図2)。夕方、あたりが暗くなってくるのは私たちと太陽の距離が離れたからではありません。昼間より長い空気層が、私達と太陽の間にあるために、まだ太陽が見えているうちに、あたりが徐々に暗くなってきます。それにつれ、散乱されやすい青い光は私たちのところへあまり届かなくなりますが、空気で散乱しにくい赤色に近い光が、私たち、あるいは、私たちの上に浮かぶ雲を照らして赤色に染まる美しい景色を作ってくれます。
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| (図2)夕方、長い距離の空気層を通過してくる太陽の光の説明図 |
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| 波長の長い赤い光は散乱されにくく、水平線のかなたから届いてきます。 (鳥取県の海岸線より美保湾を望む) |
さて、ここまで、目に見える光の色の空気による散乱について見てきましたが、]線のほうはどうでしょう。
そっくりというほどではありませんが、実は、波長による]線の性質の違いにも、目に見える光と似たような状況があるのです。
]線の色を使い分ける??
胸部]線写真など、病院での検査に用いられている]線は電磁波のなかまです。太陽の光の青よりも もっと波長が短く、目に見えないため色はありませんが、やはりX線にも短い波長のもの、長い波長のものがあり、撮影部位によって波長を使い分けています。
長い波長の]線と、短い波長のX線の性質は、どのように異なるでしょう。短くまとめますと、長い波長のX線は「体によく吸収されて透過力が小さい」、短い波長の]線は 「散乱しやすいが、透過力が強い」という性質があります。
長い波長の]線はよく吸収されるため、同じような密度をもつ2つの物質を通過する]線は、密度に小さな差があれば通過してくる]線の量にも違いがでてきます。そのため、乳腺など、小さな密度差しかないものを撮影するときに使用すると、写真のコントラストがよくなるという特長があります。(注3)
一方、短い波長の]線は透過力が強いという有用な性質をもつため、一つには、体の厚い部分の撮影に使用されます。もう一つには、コントラストを必要以上に上げすぎないために使用します。たとえば、胸部写真では「肋骨や心臓・血管」と「肺内の空気」という、密度の大きく異なった組織が混在する部位の撮影であるため、波長のより短い]線が利用されています。短い波長の]線を使うことにより、コントラストが適度に抑えられ、骨や心臓の陰で、見えにくくなる領域を減らすことができます。
]線の波長と撮影部位の大まかな対応は次の表のようになります。
| 使用する]線の波長の長さ | 検査の種類 | |
| 長い ↑ (波長) ↓ 短い |
特に長い波長を使用して撮影する検査 | 乳腺の撮影(マンモグラフィー)等密度差の小さい部位の撮影 |
| 長い波長を使用して撮影する検査 | 四肢の骨撮影 | |
| 中間的な波長を使用する検査 | 胸椎や腰椎、腹部や頭部など体の厚い部分 | |
| 短い波長を使用する検査 | バリウムによる胃透視など、造影剤を使用する検査 | |
| さらに短い波長を使用する検査 | 胸部(密度差の大きい部位の撮影)。 CT(少ない密度差でも検出できる装置) |
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| 次は 実際の写真の一例です。 | |
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| 長い波長の]線を使って撮る手の写真。 コントラストの高い骨の輪郭線ではなく 内部構造などを出すために 比較的長い波長が使われる。 |
短い波長の]線を使った胸部写真。 密度差の大きい部位の例。 |
]線の撮影では、写真のコントラストや透過力・散乱などを考慮しながら、最適な撮影となるよう、波長のことを念頭において撮影を行っています。
- (注1)
- 電磁波には、赤外線や紫外線、]線のほかに、テレビやラジオの電波、携帯電話や無線LAN、電子調理器に使われるマイクロ波など、波長などで分類される多くの種類があります。
- (注2)
- nmの単位は「ナノ・メートル」と読みます。1nmは1mの10億分の1の長さです。
- (注3)
- 波長の長い]線を使用した時、被写体を通過した後の]線コントラストがよくなる様子を次の図にしめします。
左が長い波長を使った場合で、右が短い波長の場合です。 波長の長い場合は、くさび型の被写体の薄い部分を通過する]線と厚い部分を通過する]線の量の差が大きくなります。
実際に写真として観察する場合には、近年のデジタル化により、撮影後のコントラストの調整がある程度可能になっています。
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放射線室 中井
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更新履歴
(掲載 : 2011年10月 28日)







