・シラバスについて

 この研修会はシラバスの問題も関係しているようですので少し時間をとって話します。いま、シラバスをまとめて本にすることを日本の大学でやっていますが、ICUではそうしていません。それから、シラバスのフォーマットも作っていません。シラバスというのは、教員が勝手に作るものです。大体、シラバスを拝見して、どこの大学でもそうですが、私が感ずる大きな問題点は、シラバスが教員の営みを中心に構成されている。教員が何をしたいかということがシラバスに書いてあることです。試験の評価をどうするかということについても、書くことは書いてあるんですが、教員がどういう試験をするか、どういう評価をするかという教員の立場から書いてあります。シラバスというのは本来そういうものではなくて、リベラルアーツの場合で言えば、学生が自己学習をするそのための支援活動ですから、学生がしなければならないことを書くのがシラバスです。学生の視点で作るわけです。シラバスというのはその先生の授業経過によってまちまちですから、一概にフォーマットを決めて書くなんてことはできませんし、束ねて渡すこともほとんど意味がありません。ICUでは、シラバスはホームページに出すことにしています。シラバスというものは授業構造を表しているわけです。授業というのは個性がなければいけません。フォーマットを作ってシラバスを規制してしまって、そのシラバスに従わなければいけないとなったら、これでは授業は硬直化してしまいます。本質的に教員がそのシラバスを作ることに反発しますね。反発しなかったら、その先生は本質的ではないのです。なぜなら知の営みというのは自由なんですから、自由な発想が大事なんですから。それでシラバスを俺は書かんという先生がいるわけです。本当にその先生は本質的な立場に立ってシラバスを書かない、と言ってるのかどうかということは別に問題にしなければなりませんが。
 また、成績評価についても新任の先生方に学長からお願いしていることがあります。 すなわち、最終試験だけでごまかすようなことをしないように、途中で何回も評価を繰り返して形成的な評価をきちんとしていただくことを要請します。評価するということと、評定ということとは違います。評定というのは成績をつけるということですが、評価というのは学生の学習がどのように進行してるかということを判断するためのデータです。そういうデータを綿密にとっていただきたいということをお願いいたします。それから、GPAは2.5を標準にすることもお伝えします。授業調査(学生による授業評価)を必ず行ってほしいということを伝えます。
 ICUでは授業評価を、あくまでもボランティアベースで十五、六年間実践してきました。期が熟してきましたので、多少の反対があるのは覚悟して制度化しました。個人の結果を公開することも制度化しました。ただ、これを私が学長として教授会へ提案するときに、一つの抜け道を作りました。どうやって公開するのかということまでまとめて教授会にかけたら、この提案は通りません。ですから、評価公開の方法は学部長に一任するとしたのです。学部長に責任を預けちゃったわけです。この結果、公開は制度的には成立したわけです。今、学部長は頭を痛めています。どうやっても批判がでるでしょう。しかし、何らかの意味でそれぞれの教員の授業評価を公にするということを定めたのです。
 それから、授業は絶対に休講しないということにしています。例えば私どもの大義名分には学会出張というのがあります。しかし、学会出張であっても必ず補講をすることにし、休講の通知には補講計画を必ず書き入れることにしています。さらに、1週間以上の出張はまかりなりません。外国へ行く場合でも、1週間以内に帰ってきていただく。1週間以内の補講計画を全部詳細に書いて学部長に出していただきます。そういうようなことを新任の先生方には初めにお願いをしております。
 それから先ほど申しましたように、リベラルアーツの自己学習支援では、アドバイザーの機能は非常に大事ですから、アドバイザーの役割ということを皆さんに周知していただくために、FDハンドブックというのを作りました。FDハンドブックの中に、授業運営の仕組み、アドバイザーとしての機能を全部まとめてあります。それを先生方に読んでいただき、ときにそれを題材にしてフォーラムを開くということをしています。





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