○岡山大学研究用病原体等安全管理規則

平成16年4月1日

岡大規則第25号

(趣旨)

第1条 この規則は,岡山大学(以下「本学」という。)における研究用病原体等の取扱い及びその安全確保に関し必要な事項を定めるものとする。

(定義)

第2条 この規則において,次の各号に掲げる用語の意義は,それぞれ当該各号に定めるところによる。

 病原体等 細菌,真菌,ウイルス,原虫,寄生虫及びそれらが産出する毒素等をいう。

 病原性 病原体等が何らかの機構により,人あるいは動物に危害を及ぼすことをいう。

 特定病原体等 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成10年法律第114号。以下「感染症予防法」という。)第6条第21項の「特定病原体等」のうち,二種病原体等,三種病原体等及び四種病原体等をいう。

 指定実験室 特定病原体等又は第11条に規定するレベルがレベル3及び4である病原体等を用いて実験を行う室をいう。

 管理区域 特定病原体等又はレベル3及び4の病原体等の安全管理に必要な指定実験室その他の室を含む特定の区域をいう。

 病原体等取扱者 病原体等を実験に利用若しくは保管又は供与を行う者をいう。

(学長の責務)

第3条 岡山大学長(以下「学長」という。)は,本学における病原体等の取扱いの安全確保に関して総括する。

2 学長は,感染症予防法に基づき,「特定病原体等所持者」として,特定病原体等の所持にかかわる「許可申請」及び「届出」等を行い,「感染症発生予防規程」を届出し「病原体等取扱主任者」を選任する。

3 学長は,感染症予防法に基づき,「特定病原体等所持者」として「教育・訓練」及び「記帳」並びに「滅菌譲渡義務者」として「滅菌等」を実施し,特定病原体等の「保管」,「使用」,「運搬」,「滅菌」等にあっては,厚生労働省令に定める「施設の基準」に従い施設を維持し又は「保管等の基準」に従って必要な措置を行う。

4 学長は,感染症予防法に基づき,事故発生時(盗取,所在不明等)にあっては「事故届」を行い,災害時にあっては「応急措置」を行う。

(管理部局長の責務)

第4条 病原体等を取り扱う施設を管理する部局の長(以下「管理部局長」という。)は,当該部局の施設内において行われる病原体等の取扱いの安全確保に努めなければならない。

(所属部局長の責務)

第5条 病原体等取扱者の所属する部局の長(以下「所属部局長」という。)は,当該病原体等取扱者の健康管理に努めなければならない。

(病原体等取扱者の責務)

第6条 病原体等取扱者は,この規則及び関係法令等に定める事項を遵守しなければならない。

(病原体等取扱主任者)

第7条 二種病原体等を取り扱う場合は,病原体等取扱主任者を置かなければならない。

(病原体等取扱主任者の責務)

第8条 病原体等取扱主任者は,この規則及び関係法令並びに当該部局の規程に従うものとする。

(委員会)

第9条 病原体等の取扱いの安全かつ適切な実施を確保するため,岡山大学研究用病原体等安全管理委員会(以下「委員会」という。)を置く。

2 委員会は,次の各号に掲げる事項を所掌する。

 病原体等の病原性等のレベルの分類に関すること。

 病原体等の利用,保管及び供与の承認等に関すること。

 実験室及び管理区域の安全設備及び運営に関すること。

 事故発生時,災害時等における措置に関すること。

 その他病原体等取扱いの安全確保に関すること。

3 委員会は,次の各号に掲げる者で組織する。

 病原体等を取り扱う部局の教授,准教授及び講師のうちから学長が指名した者

 組換えDNA実験安全管理委員会委員長

 研究・イノベーション共創管理統括部長

 その他学長が必要と認めた者

4 委員会に委員長を置き,学長が委員の中から指名する者をもって充てる。

5 委員長は,委員会を招集し,その議長となる。

6 委員長に事故あるときは,委員長があらかじめ委員の中から指名した者がその職務を代理する。

7 委員長が必要と認めるときは,関係職員の出席を求め,その意見を聴くことができる。

(取扱責任者)

第10条 第13条第1項に定める届出又は同条第2項に定める申請ごとに,病原体等取扱者のうちから取扱責任者を定めるものとする。

2 取扱責任者は,次の各号に掲げる業務を行うものとする。

 病原体等の取扱いに関し,適切な管理・監督に当たること。

 病原体等取扱者に対し,当該病原体等の取扱いについて必要な指導を行うこと。

 病原体等の取扱いの安全確保に関し,必要な事項を実施すること。

(病原体等のレベルの分類)

第11条 病原体等を人への病原性及び動物間における感染性の観点からレベル1から4までに分類するものとする。

 レベル1 健常なヒト又は動物に重要な疾患を起こす可能性のないもの。

 レベル2 ヒト又は動物に病原性を有するが,実験者,その他職員等,家畜等に対し,重大な災害となる可能性が低いもの。

 レベル3 ヒトに感染すると通常重篤な疾病を起こすが,一つの個体から他の個体への伝播の可能性は低いもの。

 レベル4 ヒト又は動物に重篤な疾病を起こし,かつ,罹患者から他の個体への伝播が,直接又は間接に容易に起こり得るもの。有効な治療及び予防法が通常得られないもの。

(実験室の安全設備及び運営に関する基準等)

第12条 管理部局長は,別表に定める基準に基づき,実験室の整備を行うとともに,必要な措置を講じなければならない。

2 管理部局長は,別表に定める基準のほか,管理区域の運営に関し必要な事項について定めるものとする。

3 委員会は,別表に定める基準のほか,レベル4の病原体等の取扱いに関して必要な事項について定めるものとする。

(病原体等の取扱い手続)

第13条 病原体等取扱者は,レベル2の病原体等(特定病原体等を除く。)を新たに用いて実験しようとするとき又は新たに保管しようとするときは,あらかじめ所定の様式により管理部局長を経由して学長に届け出なければならない。ただし,既に届け出た病原体等種については,病原性に大きな違いがない場合,新たに届け出る必要はないものとする。

2 病原体等取扱者は,特定病原体等又はレベル3及び4の病原体等を新たに用いて実験しようとするとき若しくは新たに保管しようとするとき又は他の大学等へ供与しようとするときは,あらかじめ所定の様式により管理部局長を経由して学長に申請し,その承認を得なければならない。

3 病原体等取扱者は,前項の申請事項の一つに変更の必要が生じた場合は,新たに管理部局長を経由して学長に申請し,承認を得なければならない。

4 学長は,前2項の申請があったときは,委員会に諮問し,その審査を経て,その申請を承認するか否かの決定を行うものとする。この場合において,特定病原体等について承認の決定をしたときは,学長は,感染症予防法に基づく手続きを遅滞なく行わなければならない。

5 学長は,前項前段の決定を行ったとき(感染症予防法に基づき特定病原体等の所持にかかわる許可申請を行ったときは,申請が許可されたとき)は,その結果を速やかに管理部局長に通知するものとする。

6 学長は,第1項の届出又は第2項若しくは第3項の申請を行った病原体等取扱者が属する所属部局長が管理部局長と異なるときは,病原体等取扱者の健康管理に資するため届出又は承認の内容を所属部局長へも通知するものとする。

(病原性の病原体等の運搬)

第14条 病原性の病原体等を運搬する場合は,特定病原体等の運搬に準拠した三重包装の容器を用いた方法によらなければならない。

(指定実験室等の表示)

第15条 管理部局長は,管理区域の出入口に,厚生労働大臣が指定する国際バイオハザード標識を表示しなければならない。

2 管理部局長は,各指定実験室の出入口並びに特定病原体等又はレベル3及び4の病原体等の保管室の出入口に,厚生労働大臣が指定する国際バイオハザード標識に所定の事項を付記し,これを表示しなければならない。

(レベル3から4までの病原体等を用いる病原体等取扱者の要件)

第16条 指定実験室においてレベル3及び4の病原体等を用いる病原体等取扱者は,次の各号に掲げる条件を満たす者でなければならない。

 用いる病原体等の病原性,起こり得る汚染の範囲及び安全な取扱方法,指定実験室の機構及び使用方法,事故及び災害の発生時における措置等について,十分な知識を有し,かつ,技術的修練を経ている者

 第21条又は第22条に規定する健康診断を受け,異常の認められなかった者

(病原体等の処理)

第17条 レベル1及び2の病原体等(これらに汚染されたと思われる物を含む。次項において同じ。)は,当該病原体等に最も有効な消毒滅菌方法に従い処理しなければならない。

2 レベル3及び4の病原体等は,第13条第2項の申請により承認された消毒滅菌方法に従い処理しなければならない。

(事故の措置)

第18条 次の各号に掲げる場合は,これを事故とみなし,第1号から第4号までの事故を発見した者は,直ちに取扱責任者に通報しなければならない。

 外傷その他により,レベル3及び4の病原体等が病原体等取扱者の体内に入った可能性がある場合

 管理区域内の安全設備の機能に重大な欠陥が発見された場合

 レベル3及び4の病原体等により,管理区域内が広範に汚染された場合

 第21条又は第22条に規定する健康診断の結果,レベル3及び4の実験に用いた病原体等による異常と診断された場合及びレベル2の病原体等にあっても,実験に用いた病原体等による健康障害であることが事故直後の報告等により明確に特定できる場合

 第26条第3項に規定する報告があった場合

2 前項の通報を受けた取扱責任者は,必要な措置を講じるとともに管理部局長及び所属部局長に報告しなければならない。

3 前項の報告を受けた管理部局長は,所要の応急措置を講じるとともに,直ちに学長に報告しなければならない。

4 学長は,前項の報告を受けたときは,遅滞なく警察署等に届け出なければならない。

5 前2項及び第26条第3項の報告を受けた学長は,委員会に所要の措置を講じることを命ずるとともに,必要があると認めるときは,危険区域を指定し,当該区域の使用を一定期間禁止することができる。

6 学長は,前項の危険区域の指定を行ったときは,事故及び当該指定の内容を職員等に通知するとともに,委員会その他の適当と認める者に対し事後調査を行わせるものとする。

7 前項の事後調査を行う者は,危険区域の安全性の回復を確認したときは,速やかに学長に報告しなければならない。

8 学長は,前項の報告を受けたときは,危険区域を解除し,職員等にその旨通知しなければならない。

(緊急事態の措置)

第19条 学長は,地震,火災等の災害又は犯罪行為による重大な被害が発生し,必要があると判断した場合は,直ちに緊急対策本部を設置しなければならない。

2 委員会は,前項の緊急対策本部が設置されるまでの間,緊急事態に即応した所要の措置を講ずるとともに,被害の状況及び講じた措置の内容等を速やかに学長に報告しなければならない。

3 地震,火災等の災害又は犯罪行為による重大な被害が発生した場合及び大規模地震対策特別措置法(昭和53年法律第73号)第9条第1項に規定する警戒宣言(以下「警戒宣言」という。)が発せられた場合に各指定実験室において講じなければならない処置は,この規則に定めるもののほか,管理部局長の定めるところによる。

4 各指定実験室の病原体等取扱者は,地震,火災等の災害又は犯罪行為による重大な被害が発生したとき又は警戒宣言が発せられたときは,直ちに所要の処置を講じなければならない。

(緊急対策本部の構成等)

第20条 前条第1項に規定する緊急対策本部は,本部長,委員会及びその他学長が必要と認める者をもって構成する。

2 緊急対策本部の本部長は,学長をもって充てる。

3 緊急対策本部は,次に掲げる事項について指揮又は処理する。

 病原体等の逸出の防止対策に関すること。

 汚染防止並びに汚染された場所及び物の措置に関すること。

 被汚染者の処置に関すること。

 危険区域の指定に関すること。

 危険区域の安全性調査及び危険区域の解除に関すること。

 緊急事態に関する広報活動に関すること。

 その他緊急事態における病原体等の安全管理に関し必要なこと。

4 学長は,病原体等に関する安全性が確認され,緊急事態が解消したときは,緊急対策本部を解散する。

(定期の健康診断)

第21条 学長は,管理区域での業務に従事する病原体等取扱者に対して取り扱う病原体等が人体に病原性があるとされている場合には,国立大学法人岡山大学職員労働安全衛生管理規程(平成16年岡大規程第21号)第16条第1項第3号による健康診断(以下「定期の健康診断」という。)を受けさせなければならない。

2 学長は,病原体等取扱者がその取り扱う病原体等に感染の疑いのある場合には,次の各号に定める検査を実施しなければならない。

 取り扱う特定の病原体等に対する抗体価測定等

 取り扱う病原体等により発症する恐れのある症候の臨床的診断

2 定期の健康診断は,少なくとも年1回実施する。

3 管理区域での業務に従事する病原体等取扱者は,定期の健康診断を受けなければならない。

(臨時の健康診断)

第22条 学長は,必要と認める場合には,病原体等取扱者に対して臨時の健康診断を受けさせることができる。

(健康診断の記録)

第23条 学長は,健康診断の結果,健康管理上必要と認められる事項について,当該病原体等取扱者ごとに記録を作成しなければならない。

2 前項の記録は,当該病原体等取扱者の異動又は退職の後,原則として10年間,これを保存しなければならない。ただし,取り扱った病原体等の潜伏期間が短いものについてはこの限りではない。

(健康診断後の措置)

第24条 学長は,健康診断の結果,当該病原体等取扱者にレベル2から4までの病原体等による感染が疑われるときには,直ちに安全確保のために必要な措置を講ずるものとする。

(血清の保存)

第25条 学長は,病原体等取扱者の健康管理の一助とするため,特定の病原体等を取り扱う病原体等取扱者を対象とした「職員等の血清保存実施要項」を別に定め,血清を保存することができる。

(病気等の届出等)

第26条 病原体等取扱者は,実験に用いた病原体等による感染が疑われる場合は,直ちに取扱責任者を通じて管理部局長及び所属部局長に届け出なければならない。

2 前項の届出を受けた管理部局長は,直ちに当該病原体等による感染の有無について調査を行わなければならない。

3 管理部局長は,前項の調査の結果,当該病原体等に感染したと認められる場合又は医学的に不明瞭である場合は,直ちに学長に報告しなければならない。

(雑則)

第27条 この規則に定めるもののほか,実験の安全確保に関し,必要な事項は,委員会の議を経て別に定める。

1 この規則は,平成16年4月1日から施行する。

2 従前の規則により届出又は承認を得ている病原体等を実験に利用又は保管している者は,第13条第1項の届出をし,又は同条第2項の申請により承認を得たものとみなす。

(平成19年2月22日規則第10号)

この規則は,平成19年4月1日から施行する。

(平成21年2月25日規則第6号)

1 この規則は,平成21年2月25日から施行する。

2 この規則の施行の際現に改正前の第13条第1項の届出をしている特定病原体等を実験に利用又は保管している者は,この規則の施行の日に,改正後の第13条第2項の申請により承認を得たものとみなす。

(平成31年3月28日規則第5号)

この規則は,平成31年4月1日から施行する。

(令和6年1月17日規則第1号)

この規則は,令和6年4月1日から施行する。

(令和6年3月27日規則第14号)

この規則は,令和6年4月1日から施行する。

別表(第12条関係)

病原体等を用いる実験室の安全設備及び運営の基準

レベル1

(1) 病原体等実験室を使用する(特別の隔離の必要はない。)

(2) 一般外来者の立入りを禁止する必要はない。

レベル2

(1) 病原性の病原体等用の病原体等実験室を使用する。

(2) エアロゾル発生のおそれのある実験は生物学的安全キャビネットの中で行う。

(3) 実験中は,一般外来者の立入りを禁止する。

レベル3

(1) 廊下への立入り制限及び2重ドア又はエアロックにより外部と隔離された指定実験室を使用する。

(2) 壁,床,天井,作業台等の表面は洗浄及び消毒が可能なようにする。

(3) 排気系を調節することにより,常に外部から指定実験室内に空気の流入が行われるようにする。

(4) 指定実験室からの排気は高性能フィルターで除菌してから大気中に放出する。

(5) 実験は生物学的安全キャビネットの中で行う。ただし動物実験は生物学的安全キャビネット又は陰圧アイソレータの中で行う。

(6) 作業者名簿に記載された入室承認者以外の立入りは禁止する。

(7) その他指定実験室からの病原体等の逸出を未然に防止するための適切な措置を講ずる。

レベル4

(1) 独立した建物として,隔離域とそれを取り囲むサポート域を設けた指定実験室を使用する。

(2) 壁,床,天井はすべて耐水性かつ気密性のものとし,これらを貫通する部分(給排気管,電気配線,ガス,水道管等)も気密構造とする。

(3) 作業者の出入口には,エアロックとシャワーを設ける。

(4) 指定実験室内の気圧は隔離の程度に応じて気圧差を設け,高度の隔離域から,低度の隔離域へ,又低度の隔離域からサポート域へ空気が流出しないようにする。

(5) 指定実験室への給気は1層のHEPAフィルターを通して,指定実験室からの排気は2層のHEPAフィルターを通して行う。この排気除菌装置は予備を含めて2組設ける。

(6) 実験用区域とサポート域の間に実験器材の持ち込み及び取出し用として,両面オートクレーブ及び両面ガス(エチレンオキサイド又はホルマリン)滅菌装置を設ける。

(7) 指定実験室からの排水は,121℃以上で15分以上加熱滅菌し,冷却した後一般下水へ放出する。

(8) 実験は完全密閉のグローブ・ボックス型安全キャビネットの中で行う。

(9) 作業者名簿に記載された入室承認者以外の立入りは禁止する。

(10) その他指定実験室からの病原体等の逸出を未然に防止するための適切な措置を講ずる。

注: 組換えDNA実験に用いられるP1,P2,P3の実験室を,研究用病原体等安全管理委員会の承認を得た上で,それぞれレベル1,レベル2,レベル3の実験室として使用してもよい。

岡山大学研究用病原体等安全管理規則

平成16年4月1日 岡大規則第25号

(令和6年4月1日施行)

体系情報
第2編 則/第5章 研究・産学連携等
沿革情報
平成16年4月1日 岡大規則第25号
平成19年2月22日 規則第10号
平成21年2月25日 規則第6号
平成31年3月28日 規則第5号
令和6年1月17日 岡大規則第1号
令和6年3月27日 岡大規則第14号