○岡山大学動物実験規則
平成20年2月21日
岡大規則第6号
(目的)
第1条 この規則は,「動物の愛護及び管理に関する法律」(昭和48年法律第105号。以下「法」という。),「実験動物の飼養及び保管並びに苦痛の軽減に関する基準」(平成18年環境省告示第88号。以下「飼養保管基準」という。)及び「研究機関等における動物実験等の実施に関する基本指針」(平成18年文部科学省告示第71号。以下「基本指針」という。)に基づき,日本学術会議が作成した「動物実験の適正な実施に向けたガイドライン(平成18年6月)」を参考に,科学的観点,動物愛護の観点及び環境保全の観点並びに動物実験等を実施する教職員・学生等の安全確保の観点(以下「科学的観点等」という。)から,岡山大学(以下「本学」という。)における動物実験等の実施並びに実験動物の飼養又は保管に関し必要な事項を定め,もって,適正な動物実験等の実施等を図ることを目的とする。
(適用範囲)
第2条 この規則の規定は,本学において実施される哺乳類,鳥類及び爬虫類の生体を用いた全ての動物実験等並びにこれら実験動物の飼養又は保管について適用する。
二 本学教育学部附属の幼稚園,小学校,中学校及び特別支援学校における情操の涵養を目的とした動物の飼養又は保管
三 馬術競技を行うことを目的とした動物の飼養又は保管
(基本原則)
第3条 動物実験等については,法,飼養保管基準,基本方針その他の法令等(以下「法令等」という。)に定めがあるもののほか,この規則の定めるところによるものとする。
2 動物実験等の実施に当たっては,法及び飼養保管基準に即し,代替法の利用(Replacement),使用数の削減(Reduction)及び苦痛の軽減(Refinement)の3Rの原則に基づき,適正に行わなければならない。
3 実験動物の飼養又は保管に当たっては,法及び飼養保管基準に即し,科学上の目的を達することができる範囲において,飢え及び渇きからの自由(Freedom from Hunger and Thirst),不快からの自由(Freedom from Discomfort),痛みや負傷及び疾病からの自由(Freedom from Pain, Injury or Disease),本来の行動がとれる自由(Freedom to behave normally),恐怖及び抑圧からの自由(Freedom from Fear and Distress)の5つの自由の指標に基づき,適正に行わなければならない。
一 動物実験等 次号に規定する実験動物を教育,試験研究又は生物学的製剤の製造の用その他の科学上の利用に供することをいう。
二 実験動物 動物実験等の利用に供するため,施設等で飼養又は保管している哺乳類,鳥類又は爬虫類に属する動物(施設等に導入するために輸送中のものを含む。)をいう。
三 飼養保管施設 実験動物を恒常的に飼養若しくは保管し又は動物実験等を行う施設(設備を含む。)をいう。
四 動物実験室 実験動物に実験操作(第6条に規定する岡山大学動物実験委員会が法令等の趣旨を踏まえ,科学的な合理性があると認めた一時的な保管を含む。)を行う実験室(設備を含む。)をいう。
五 施設等 飼養保管施設及び動物実験室をいう。
六 動物実験計画 動物実験等の実施に関する計画をいう。
七 動物実験実施者 動物実験等を実施する者をいう。
八 動物実験責任者 動物実験実施者のうち,動物実験等の実施に関する業務を統括する者をいう。
九 管理者 実験動物及び施設等を管理する部局の長をいう。
十 実験動物管理者 実験動物に関する知識及び経験を有する者で,管理者を補佐し,実験動物の管理を担当する者をいう。
十一 飼養者 実験動物管理者又は動物実験実施者の下で実験動物の飼養又は保管に従事する者をいう。
十二 管理者等 学長,管理者,動物実験責任者,動物実験実施者,実験動物管理者及び飼養者をいう。
(学長の責務)
第5条 学長は,本学における動物実験等の適正な実施に関して総括する。
(動物実験委員会の設置)
第6条 動物実験等の適正な実施を確保するため,岡山大学動物実験委員会(以下「動物実験委員会」という。)を置く。
2 動物実験委員会に関して必要な事項は,学長が別に定める。
(動物実験計画の立案)
第7条 動物実験責任者は,動物実験計画の立案に当たっては,動物実験等により取得されるデータの信頼性を確保する観点から,次の各号に掲げる事項に留意しなければならない。
一 研究の目的,意義及び必要性
二 代替法を考慮して,実験動物を適切に利用すること。
三 実験動物の使用数削減のため,動物実験等の目的に適した実験動物種の選定,動物実験成績の精度と再現性を左右する実験動物の数,遺伝学的及び微生物学的品質並びに飼養条件を考慮すること。
四 苦痛の軽減により動物実験等を適切に行うこと。
五 苦痛度の高い動物実験等(致死的な毒性試験,感染実験,放射線照射実験等)を行う場合は,動物実験等を計画する段階で人道的エンドポイント(実験動物を激しい苦痛から解放するための実験を打ち切るタイミング)の設定を検討すること。
(動物実験計画の申請及び承認)
第8条 動物実験責任者は,動物実験等を実施しようとする場合は,動物実験計画書(様式1)を学長に提出し,その承認を受けなければならない。
2 学長は,動物実験計画書の提出があったときは,動物実験委員会に諮るものとする。
3 学長は,動物実験委員会の審議の結果に基づき,動物実験計画の承認の可否を決定し,その結果を動物実験責任者に通知するものとする。
4 動物実験実施者は,動物実験計画について学長の承認を得た後でなければ,動物実験等を行うことができない。
(実験操作)
第10条 動物実験実施者は,動物実験等の実施に当たって,法令等及びこの規則に則するとともに,特に次の各号に掲げる事項を遵守しなければならない。
一 適切に維持管理された施設等において動物実験等を行うこと。
二 動物実験計画書に記載された事項及び次に掲げる事項を遵守すること。
イ 適切な麻酔薬,鎮痛薬等の利用
ロ 実験の終了時期(人道的エンドポイントを含む。)の配慮
ハ 適切な術後管理
ニ 適切な安楽死の方法の選択
三 安全管理に注意を払うべき実験(物理的,科学的に危険な材料若しくは病原体又は遺伝子組換え動物等を用いる実験)については,関係法令等及び本学における関係規則等に従うこと。
四 物理的,化学的に危険な材料又は病原体等を扱う動物実験等について,安全のための適切な施設や設備を確保すること。
五 動物実験等の実施に先立ち,必要な実験手技等の習得に努めること。
六 侵襲性の高い大規模な存命手術に当たっては,経験等を有する者の指導下で行うこと。
(実験操作終了後の処置等)
第11条 動物実験責任者は,実験操作を終了又は中止した後,実験動物を処分する場合は,動物の殺処分方法に関する指針(平成7年総理府告示第40号)に準拠し,致死量以上の麻酔薬の投与又は頚椎脱臼等によって,苦痛を与えないよう速やかに処置しなければならない。
2 動物実験責任者は,実験動物の死体については,人及び他の実験動物の健康及び生活環境を損うことのないよう,適切に処置しなければならない。
(他機関への委託)
第12条 動物実験責任者は,本学以外の機関に動物実験等の実施を委託しようとする場合は,当該機関において,基本指針又は他省庁の定める動物実験等に関する基本指針に則して動物実験等が実施されることを,あらかじめ確認しなければならない。
(動物実験計画の完了又は中止等の報告)
第13条 動物実験責任者は,動物実験計画を完了又は中止したときは,動物実験報告書・自己点検票(様式3)を学長に速やかに提出しなければならない。
2 動物実験責任者は,動物実験計画が複数年度にわたるときは,年度ごとに動物実験報告書・自己点検票(様式3)を学長に提出しなければならない。
(飼養保管施設の設置)
第14条 飼養保管施設の設置を行おうとする管理者は,飼養保管施設設置承認申請書(様式4)を学長に提出し,その承認を受けなければならない。
2 学長は,飼養保管施設設置承認申請書の提出があったときは,申請された施設を動物実験委員会に調査させるものとする。
3 学長は,動物実験委員会の調査の結果に基づき,飼養保管施設設置の承認の可否を決定し,その結果を第1項の管理者に通知するものとする
4 動物実験実施者及び飼養者は,学長の承認を受けた飼養保管施設でなければ,実験動物の飼養若しくは保管又は動物実験等を行うことができない。
(飼養保管施設の要件)
第15条 飼養保管施設は,次の各号の要件を満たさなければならない。
一 適切な温度,湿度,換気,明るさ等を保つことができる構造等とすること。
二 実験動物の種類や生理,生態,習性等及び飼養又は保管する数等に応じた飼育設備を有すること。
三 床や内壁などの清掃,消毒等が容易な構造で,器材の洗浄や消毒等を行う衛生設備を有すること。
四 実験動物が逸走しない構造及び強度を有すること。
五 臭気,騒音,廃棄物等による周辺環境への悪影響を防止する措置がとられていること。
六 実験動物管理者が置かれていること。
七 その他動物実験委員会が必要と認めるもの。
2 学長は,動物実験等の適切な実施を図るため,飼養保管施設の設置数の上限を定めることができる。
(動物実験室の設置)
第16条 飼養保管施設以外において,動物実験室を設置しようとする管理者は,動物実験室設置承認申請書(様式5)を学長に提出し,その承認を受けなければならない。
2 学長は,動物実験室設置承認申請書の提出があったときは,動物実験委員会に調査させるものとする。
3 学長は,動物実験委員会の調査の結果に基づき,動物実験室設置の承認の可否を決定し,その結果を第1項の管理者に通知するものとする。
4 動物実験実施者は,学長の承認を受けた動物実験室でなければ,動物実験等を行うことができない。
(動物実験室の要件)
第17条 動物実験室は,次の各号の要件を満たさなければならない。
一 実験動物が逸走しない構造及び強度を有し,実験動物が室内で逸走しても捕獲しやすい環境が維持されていること。
二 実験動物の排泄物や血液等による汚染に対して清掃や消毒が容易な構造であること。
三 常に清潔な状態を保ち,臭気,騒音,廃棄物等による周辺環境への悪影響を防止する措置がとられていること。
四 その他動物実験委員会が必要と認めるもの。
(施設等の維持管理及び改善)
第18条 管理者は,実験動物の適正な管理並びに動物実験等の遂行に必要な施設等の維持管理及び改善に努めなければならない。
(施設等の変更・廃止)
第19条 施設等を変更・廃止しようとする管理者は,施設等(飼養保管施設・動物実験室)の変更・廃止届(様式6)を提出し,あらかじめ学長の承認を得るものとする。
2 学長は,施設等(飼養保管施設・動物実験室)の変更・廃止届の提出があったときは,動物実験委員会に諮るものとする。
3 学長は,動物実験委員会の審議の結果に基づき,施設等の変更・廃止の承認の可否を決定し,その結果を第1項の管理者に通知するものとする。
4 管理者は,学長の承認を得なければ,施設等の変更・廃止を行うことができない。
5 管理者は,施設等の変更・廃止に伴って実験動物を処分する必要がある場合は,動物実験責任者と協力し,飼養又は保管中の実験動物を他の飼養保管施設又は適正に実験動物を管理している他の機関に譲り渡すよう努めるものとする。
(標準作業手順の作成と周知)
第20条 管理者及び実験動物管理者は,飼養保管施設ごとに飼養又は保管の標準作業手順を定め,動物実験実施者及び飼養者に周知するものとする。
(実験動物の健康及び安全の保持)
第21条 実験動物管理者,動物実験実施者及び飼養者は,飼養保管基準及びこの規則を遵守し,実験動物の健康及び安全の保持に努めなければならない。
(実験動物の導入)
第22条 管理者は,実験動物を導入するときは,法令等に基づき適正に管理されている機関より導入するものとする。
2 実験動物管理者は,実験動物の導入に当たり,適切な検疫,隔離飼育等を行うものとする。
3 実験動物管理者は,導入した実験動物の飼養環境への順化・順応を図るための必要な措置を講じるものとする。
(給餌・給水)
第23条 実験動物管理者,動物実験実施者及び飼養者は,実験動物の生理,生態,習性等に応じて,適切に給餌・給水を行うものとする。
(健康管理)
第24条 実験動物管理者,動物実験実施者及び飼養者は,実験目的以外の傷害や疾病を予防するため,実験動物に必要な健康管理を行うものとする。
2 実験動物管理者,動物実験実施者及び飼養者は,実験動物が実験目的以外の傷害を負い,又は疾病にかかった場合,適切な治療等を行うものとする。
(異種又は複数動物の飼育)
第25条 実験動物管理者,動物実験実施者及び飼養者は,異種又は複数の実験動物を同一の飼養保管施設内で飼養又は保管する場合,その組合せを考慮した収容を行うものとする。
(記録の保存及び報告)
第26条 管理者は,実験動物の入手先,飼育履歴,病歴等に関する記録を整備し,保存しなければならない。
2 管理者は,年度ごとに,飼養又は保管した実験動物の種類,数等について,学長に報告するものとする。
(譲渡の際の情報提供)
第27条 管理者は,実験動物を譲渡するときは,その特性,飼養保管の方法,感染性疾病等に関する情報を提供するものとする。
(輸送)
第28条 管理者等は,実験動物を輸送するときは,飼養保管基準を遵守し,実験動物の健康及び安全の確保並びに人への危害防止に努めなければならない。
(危害防止)
第29条 管理者は,実験動物が逸走した場合の捕獲の方法等をあらかじめ定めておかなければならない。
2 管理者は,人に危害を加える等の恐れのある実験動物が施設等外に逸走した場合には,速やかに関係機関へ連絡しなければならない。
3 管理者は,実験動物管理者,動物実験実施者及び飼養者に対する実験動物由来の感染症及び実験動物による咬傷並びにアレルギー等による危害について,予防及び発生時の必要な措置を講じなければならない。
4 管理者は,毒へび等の有毒動物の飼養又は保管をする場合は,人への危害の発生の防止のため,飼養保管基準に基づき必要な事項を別途定めなければならない。
5 管理者は,人に危害を加える等のおそれがある実験動物について個別の識別を行うことを目的に,入れ墨あるいは名札,脚環又はマイクロチップ等の識別装置の装着を技術的に可能な範囲で講じなければならない。
6 実験動物管理者,動物実験実施者及び飼養者は,相互に実験動物による危害の発生防止に必要な情報の提供等を行わなければならない。
7 管理者等は,実験動物の飼養及び保管並びに動物実験等の実施に関係のない者が実験動物等に接触しないよう,必要な措置を講じなければならない。
(人と動物の共通感染症の対応)
第30条 実験動物管理者,動物実験実施者及び飼養者は,人と動物の共通感染症に関する十分な知識の習得及び情報の収集に努めなければならない。
2 管理者は,人と動物の共通感染症の発生時において必要な措置を迅速に講じることができるよう,公衆衛生機関等との連絡体制を整備しなければならない。
(緊急時の対応)
第31条 管理者は,地震,火災等の緊急時に実験動物に対して採るべき措置に関する計画をあらかじめ作成し,実験動物管理者,動物実験実施者及び飼養者に対して周知を図らなければならない。
2 管理者等は,緊急事態が発生したときは,実験動物の保護及び実験動物の逸走による人への危害防止並びに施設等の環境保全に努めなければならない。
(教育訓練)
第32条 学長は,実験動物管理者,動物実験実施者及び飼養者に対し,次の各号に掲げる事項に関する所定の教育訓練を行わなければならない。
一 法令等,本学の関係規則その他関連する法令等
二 動物実験等の実施方法に関する基本的事項
三 実験動物の飼養又は保管に関する基本的事項
四 安全確保,安全管理に関する事項
五 人と動物の共通感染症に関する事項
六 その他適切な動物実験等の実施に関する事項
2 学長は,教育訓練の実施日,教育内容,講師及び受講者名の記録を保存しなければならない。
(自己点検・評価・検証)
第33条 学長は,動物実験委員会に,本学の動物実験等の実施状況並びに飼養保管基準及び基本指針等その他関連する法令等への適合性に関し,定期的に自己点検・評価を行わせなければならない。
2 動物実験委員会は,前項の自己点検・評価を行ったときは,その結果を学長に報告しなければならない。
3 動物実験委員会は,管理者,動物実験実施者,動物実験責任者,実験動物管理者,飼養者等に,自己点検・評価のための資料を提出させることができる。
4 学長は,自己点検・評価の結果について,学外の者による検証を受けるよう努めるものとする。
(情報公開)
第34条 学長は,本学における動物実験等に関する情報(動物実験等に関する規則,実験動物の飼養又は保管の状況,自己点検・評価,検証の結果等)を,毎年1回程度公表する。
(準用)
第35条 第4条第2号に定める実験動物以外の動物を使用する実験等については,飼養保管基準の趣旨に沿って行うよう努めるものとする。
(雑則)
第36条 この規則に定めるもののほか,必要な事項は,学長が別に定める。
附則
1 この規則は,平成20年3月1日から施行する。
2 この規則の施行の際現に実施されている動物実験等は,この規則の施行の日に,第8条第1項の承認があったものとみなす。
附則(平成23年12月20日規則第25号)
この規則は,平成24年1月1日から施行する。
附則(平成27年1月27日規則第3号)
この規則は,平成27年2月1日から施行する。
附則(平成29年6月30日規則第13号)
この規則は,平成27年7月1日から施行する。
附則(平成29年11月28日規則第18号)
この規則は,平成29年12月1日から施行する。
附則(令和4年7月26日規則第21号)
この規則は,令和4年7月26日から施行する。