国立大学法人 岡山大学

LANGUAGE
ENGLISHCHINESE
MENU

抗酸化酵素の働きが弱まると、発達期の脳に神経細胞死がおきることを発見

2023年03月17日

◆発表のポイント

  • 私達のからだはミトコンドリアで効率よくエネルギーを生みだし、様々な生命活動を維持しています。
  • エネルギーを産生するとき、活性酸素種が発生します。哺乳動物において、活性酸素種を消去する抗酸化酵素の働きが弱くなると、脳に神経細胞死がおきることを発見しました。
  • 酸化ストレスによる神経細胞死は、様々な脳の病気の共通病態基盤と考えられています。本モデル動物は、神経細胞死のメカニズムの解明に役立つと期待されます。

 岡山大学学術研究院教育学域の大守伊織教授らのグループは、同大学学術研究院医歯薬学域の大内田守准教授、東京大学医科学研究所真下知士教授らとの遺伝子変異ラットを用いた共同研究により、発達期に脳神経が変性して細胞死を生じる現象を発見しました。このラットは活性酸素種から細胞を守るために働く遺伝子に変異を持っています。このラットでは、離乳後の3週齢から中脳に神経細胞死が発生し、病変部位では酸化ストレスマーカーが上昇しており、ミトコンドリアの変性が確認されました。病変部位の代謝を網羅的に調べると、病変部位では発達段階において特異的に糖代謝が上昇していることがわかりました。
 本研究成果は、神経疾患専門の国際科学雑誌Neurobiology of Diseaseに掲載されました。酸化ストレスが原因となる神経疾患は、周産期の仮死等で生じる脳性麻痺、神経変性疾患、てんかん、発達障害などの様々な難病が含まれます。この貴重なラットを用いることによって、これらの神経難病の病態解明つながることが期待されます。

◆研究者からひとこと

このラットは、私が京都大学に勤務していた頃、同じく京都大学に在籍していた真下知士先生(現・東京大学医科学研究所教授)との雑談中に、「幼いときにケージ内を走りまわる変わったラットがいるんだけど、解析してみない?」と話の弾みで頂く事になったラットでした。解析を進めるにつれて画期的なラットであることがわかり、共同研究者の真下知士先生には非常に感謝しております。
大守教授が飼育しているラット

■論文情報
論 文 名:Thioredoxin deficiency increases oxidative stress and causes bilateral symmetrical degeneration in rat midbrain.
掲 載 紙:Neurobiology of Disease
著  者:Iori Ohmori, Mamoru Ouchida, Hirohiko Imai, Saeko Ishida, Shinya Toyokuni, Tomoji Mashimo.
D O I:10.1016/j.nbd.2022.105921.
U R L:https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0969996122003138?via=ihub

■研究資金
 本研究は、独立行政法人日本学術振興会(JSPS)「科学研究費助成事業」(基盤C・22K07914、研究代表:大守伊織)(基盤B・16H05354,研究代表:大内田守)、新学術領域研究(研究領域提案型)「学術研究支援基盤形成」・16H06276,研究代表:井上純一郎,今井浩三)および、財団法人てんかん治療研究振興財団の支援を受けて実施しました。

■関連出願特許
名  称:遺伝子改変非ヒトモデル動物
出願番号:特願2017-238612号
出 願 日:2017年12月13日
登  録:第6650649 号 2020 年1月23日
出 願 人:大守伊織、大内田守、真下知士

<詳しい研究内容について>
抗酸化酵素の働きが弱まると、発達期の脳に神経細胞死がおきることを発見


<お問い合わせ>
岡山大学 学術研究院教育学域 特別支援教育
教授 大守伊織
(電話番号)086-251-7688

年度