国立大学法人 岡山大学

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インク成分は内分泌かく乱作用を有し、がん悪化に寄与?

2021年09月02日

◆発表のポイント

  • インクに含まれる成分である重合開始剤が細胞実験でエストロゲン作用を示したことから、小動物を用いて実験した結果、乳がんを悪化させる可能性を見出しました。

 岡山大学病院薬剤部の河崎陽一薬剤主任と同薬剤部の千堂年昭教授(現:就実大学薬学部特任教授)は、インクを作る時や、歯の詰め物(歯科用樹脂)を作る時など昔から幅広く利用されている重合開始剤という化学物質の毒性評価を行いました。その結果、乳がん細胞を埋め込んだマウスに重合開始剤を曝露すると乳がん組織が徐々に増大することを見出しました。また、一部の乳がん治療薬が増大効果を抑制することが分かりました。これらの結果より、体内に入った重合開始剤は、乳がん組織に到達しエストロゲン作用を発揮したことが示唆されました。
 本研究成果は、現在幅広く使用されている重合開始剤の安全性の再評価において重要な意味を持ちます。今後も汎用されている重合開始剤の未知の作用を評価し、化学物質の安全基準作りに貢献していきます。なお、本成果は8月27日、米国の毒性学雑誌「Current Research in Toxicology」に掲載されました。

◆研究者からのひとこと

生活を豊かにするために様々なモノが進化しています。しかし、その裏ではヒトの健康を脅かす化学物質が知らず知らずに利用されていることもあります。利便性と危険性のバランスを評価する上で、化学物質の未知の作用を見出すことは非常に大切です。これからも安全な生活を確保するために、化学物質の生体に対する作用の研究を続けていきます。
河崎薬剤主任

■論文情報
論 文 名:Three photoinitiators induce breast tumor growth in mouse xenografts with MCF-7 breast cancer cells
掲 載 紙: Current Research in Toxicology
著   者: Yoichi Kawasaki, Toshiaki Sendo
D O I: 10.1016/j.crtox.2021.08.004
U R L: https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2666027X21000311

<詳しい研究内容について>
インク成分は内分泌かく乱作用を有し、がん悪化に寄与?

<お問い合わせ>
 岡山大学病院 薬剤部
 薬剤主任 河崎 陽一
 (電話番号)086-235-7792
 (FAX)086-235-7795

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