国立大学法人 岡山大学

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植物細胞で進化的に保存された極性成長メカニズムを解明 〜ゼニゴケの裏側の仮根細胞のひ・み・つ〜

2018年03月02日

 岡山大学大学院自然科学研究科の本瀬宏康准教授、大谷健人大学院生(当時)、高谷彰吾大学院生、高橋卓教授のグループは、神戸大学大学院理学研究科の石崎公庸准教授、京都大学大学院生命科学研究科の河内孝之教授、西浜竜一准教授のグループと共同で、基部陸上植物のゼニゴケを用いて、植物細胞が極性をもって一定の方向に安定して成長するメカニズムを明らかにしました。この仕組みは陸上植物の進化の過程でも保存され続けており、初期の根系と考えられる仮根の伸長に必要であることを解明しました。
本研究成果は3月2日英国時間午前0時30分(日本時間午前9時30分)、英国の科学雑誌「 Development 」に掲載されました。
 現在、陸上には多種多様な植物が生息しています。これらの陸上植物は、淡水性の藻類から、コケのような植物を経て進化したと考えられています。初期の陸上植物は、現生のコケ植物と同様に根を持たず、仮根細胞によって地面に固着し、水分や栄養分を得ることで陸上環境に適応していたと考えられます。仮根細胞は地面に接した裏側(腹側)の表皮細胞に局所的な成長点が形成され、この部分が先端成長することによりフィラメント状(細長い糸状)に伸長します。しかし、どのような仕組みで仮根細胞が伸長するのか、また、その仕組みはより進化が進んだ被子植物などでも共通なのか、不明のままでした。
 本瀬准教授らの研究グループは、陸上植物の進化の初期に分岐し、祖先的な形質を保持している苔類のゼニゴケを用いて、NIMA関連キナーゼ(MpNEK1)が仮根細胞の伸長方向を制御していることを明らかにしました。
 本研究成果は、どのように細胞が伸長する方向を決定し、安定化しているかについて、新しく普遍的な理解をもたらします。また、NEKタンパク質はヒトやコウジカビなどほとんどの真核生物に普遍的に存在し、細胞分裂や神経細胞の形成、鞭毛・繊毛の形成を制御しており、その欠失はさまざまな疾患の要因になります。本研究成果は、これらの生理過程に重要なヒントを提供すると考えられます。


図1. ゼニゴケ幼植物体
2週間程度、寒天培地上で生育したゼニゴケ. 扁平な葉状体が分岐しながら成長する. 葉状体の裏側から平滑仮根が放射状に伸び出している.


図2. ゼニゴケの葉状体と仮根
土植えで1ヶ月生育したゼニゴケを横から見たもの. 葉状体の裏側から仮根が長く伸びだしているのが見える.


図3. ゼニゴケ野生株のまっすぐ伸長した仮根(上)とMpNEK1を欠失したゼニゴケのねじれた仮根(下)
シアン:微小管と色素体


図4. 仮根先端部へのMpNEK1の局在
緑と白:MpNEK1,
マゼンタ:微小管と色素体


図5. 仮根細胞が先端成長により真っすぐ伸びる仕組み(仮説)
仮根細胞は先端部が局所的に成長することで細長く伸長する. MpNEK1タンパク質(緑)は、先端成長を行っている頂端部に局在し、微小管(青)を局所的に再編成し、その構造を制御する. これにより成長点が確立・維持され、仮根細胞が真っすぐ伸長する. また、微小管構造や成長点の確立により、MpNEK1が先端に局在化し、成長点が安定化されると考えられる(MpNEK1と微小管・成長点のフィードバックループ).

<論文情報等>
論文名:英 語 An evolutionarily conserved NIMA-related kinase directs rhizoid tip growth in the basal land plant Marchantia polymorpha.
掲載誌: Development
著 者:Otani K, Ishizaki K, Nishihama R, Takatani S, Kohchi T, Takahashi T, Motose H
DOI: doi: 10.1242/dev.154617


発表論文はこちらからご確認いただけます。



<詳しい研究内容について>
植物細胞で進化的に保存された極性成長メカニズムを解明
〜ゼニゴケの裏側の仮根細胞のひ・み・つ〜



<お問い合わせ>
岡山大学大学院自然科学研究科(理)
准教授 本瀬 宏康
(電話番号)086-251-7857
(FAX番号)086-251-7857

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