国際農村開発学分野
国際農村開発学分野 (International Rural Studies)
教員
教授 :金 枓哲 Prof. Dr. Doo-Chul KIM E-mail:kim@(@以下はokayama-u.ac.jp を付けてください。) 専門分野: 農村地理学,環境地理学,韓国地域研究,ベトナム地域研究 |
准教授 :本田 恭子 Assoc. Prof. Dr. HONDA Yasuko E-mail:yhonda@(@以下はokayama-u.ac.jp を付けてください。) 専門分野:環境社会学,農村社会学 |
主な研究テーマ
グローバル化が進む現代社会における開発と環境問題の関連性を,国内外の農村における現地調査に基づき社会経済的側面から解明するとともに,「持続可能な開発」を行う方策を,地域に住む人々の立場から考察するための教育研究を行う。
地域資源管理と内生的住民組織論
森林,干潟,湖など様々な自然資産には本来的な所有者がなく,地域住民の誰もが利用することのできるものが多くあります。「共有資源」と呼ばれる,このような自然資産の利用と管理には,「見えざる手」のような市場経済の仕組みがうまく機能せず,個々の生活を良くするための努力が環境破壊につながってしまうケースも少なくありません。自然資産を持続可能な資源とするためには,地域コミュニティによる利用と管理が不可欠であり,健全な地域コミュニティの核を成すのが「内生的住民組織」です。 私たちは,日本・韓国・中国・ベトナムの農村地域を歩く!見る!聞く!ことで,地域コミュニティによる地域資源の持続的管理の在り方を解明しています。 |
ベトナム・サパ地区の少数民族が耕す棚田(2011年7月7日撮影) |
市民コモンズとしての広域的な地域資源管理システム
農業者の減少・高齢化により,農地や農業用水路といった地域の資源の管理が困難になっていることから,これらの資源を地域内外の人々の共有財産として位置づけて様々な利活用(例:アメニティ利用、エネルギー生産)を促し持続的な管理へつなげていくことが求められています。私たちは,主に中国地方をフィールドに,これまで地域でどのような資源管理が行われてきたか,今後どのような形の資源管理が適切かを調べています。
また、地域資源の新たな活用法として、エネルギー生産にも着目しています。中国地方には、終戦後、電力不足の解消や地域振興のため農村地域が主体となって小水力発電所を建設する動きがみられ、いくつかは現在も住民主体で運営されています。これらの発電所の実態調査を通じて、持続可能な社会の実現と地域資源を生かした農村地域の活性化に貢献します。私たちは、中国地方を中心に、資源管理の実態と今後の在り方を解明しています。 |
地域で長年運営されてきた小水力発電
|
最近の主な業績
- Quy Le Ngoc Phuong, Doo-Chul Kim (2023), “Sedentarization program and everyday resistance to state intervention in Vietnam’s upland”, in Pushkar Pradhan, Walter Leimgruber(eds.) Nature, Society, and Marginality: Case Studies from Nepal, Southeast Asia and other regions, Springer, pp.237-250.
- Doo-Chul KIM, Tuyen Thi Duong, Quang Nguyen, Hung The Nguyen (2022), “Does an Agricultural Products’ Certification System Reorganize Vegetable Farmers? A case of VietGAP in Lam Dong Province, Vietnam”, in Holly R. Barcus, Roy Jones, and Serge Schmitz(eds.) Rural Transformations: Globalization and its Implications for Rural People, Land, and Economies, Routledge, pp. 200-216.
- DUONG Thi Thu Ha, KIM Doo-Chul (2022), “Why the Land Consolidation of Vietnam is Incomplete: A Case Study of Binh Dao Commune, Central Vietnam”, Geographical Review of Japan Series B, Vol. 95, No.2, pp.1-14.
- Doo-Chul Kim (2021), “Depopulation, aging, and rural restructuring in Japan”, Journal of Depopulation and Rural Development Studies(AGER), 33. pp. 107-123.
- Quang Nguyen, Doo-Chul Kim (2020), “Reconsidering rural land use and livelihood transition under the pressure of urbanization in Vietnam: A case study of Hanoi”, Land Use Policy, 99. 1-13.
- 本田恭子「再生可能エネルギーと農村」中塚雅也・山下良平・斎尾直子編「農村計画研究レビュー2022―10年間の農村計画学を読み解く―」筑波書房、2022年
- 本田恭子「コミュニティ・エネルギーを体現する地域社会の形成」小林久編『再エネで地域社会をデザインする』京都大学学術出版会、2020年
- 本田恭子・松岡崇暢・岩本光一郎「中国地方の小水力発電の運営実態と固定価格買取制度の影響 : 事業者の種類に着目して」農村計画学会誌,36,317-322,2017年
- 本田恭子『地域資源保全主体としての集落―非農家・新住民参加による再編を目指して―』(財)農林統計協会,2013年
- 本田恭子・岡本彩花・ 金枓哲「地域性と女性のライフステージが 農村女性グループに与える影響 ―岡山県内のJA女性部フレッシュミズ部会を事例に―」地域地理研究,26(2),23-43,2022年