ABO式血液型, ABO blood group


臨床的意義
 血液型については、一般社会人でもよく知っている。その場合、遺伝や性格などが取り上げられることが多いが、医療の分野で血液型検査が必要となるのはもっぱら輸血の場合である。健康診断などで輸血を前提としない血液型検査があるが、これは医療の対象とはならない。一方、輸血における人為的事故のうち過半数が血液型不適合輸血といわれ、よく知っているはずの検査でありながら、不注意から重大な事故を起こすことがあり得る。輸血療法において、赤血球の溶血反応による副作用や、溶血による輸注赤血球寿命の短縮、それによる輸血効率の低下などを防止するため、輸血は赤血球に限らずすべて血液型の一致した同型輸血が原則である。血液型は、ABO式血液型以外にも多くあるが、そのすべてが一致している必要はなく、ABO式血液型とRh式の一致した血液が必要とされる。したがって、この検査の目的は、日常に必要とされる輸血を安全かつ効率的に行うために行われる検査である。患者血球の抗原を調べるオモテ試験、患者血清中の抗A、抗B抗体の存在を調べるウラ試験の両方を実施し、その結果の一致により血液型を判定するが、一致しない場合もある。特に新生児では一致しない例を多くみる。オモテ・ウラ試験不一致の原因として以下のような状態が考えられる。まず、赤血球側の原因として、@抗原性が弱い場合、A悪性腫瘍による抗原性の低下、B自己免疫疾患による血球の抗体感作、C汎凝集反応、DABO不適合輸血、E胃癌、卵巣腫瘍などによる抗A、抗B血清の中和などである。血清側の原因としては、@不規則性抗体の存在、A低γグロブリン血症による抗体欠如、B骨髄腫やデキストラン投与後の連銭形成、C新生児の胎盤通過性母親由来抗体の存在、D新生児(抗A、抗B抗体の未産生)、EO型血液を他の血液型患者へ輸血後などが考えられる。さらに人為的な原因として、技術的な問題では、@抗血清の力価低下、A血球浮遊濃度が不適当、B溶血反応の見落とし、C遠心法が不適当、D試験管の振り方が悪い、E反応温度と時間の誤り、ABO式、Rh式とも反応温度が低くないか注意する、Fフィブリン析出、G細菌汚染などがある。事務的な問題もあり、@試験管の取り違え、A記載ミスなどが起こり得る。輸血事故の原因は、技術的な判定ミスより事務的ミスによることが多いので、実際の検査以上に事務的業務も慎重に行う必要がある。

採取容器:試験管(薄紫)

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