髄液総蛋白, TP (total protein in cerebrospinal fluid )

臨床的意義
髄液中の蛋白の組成のほとんどは血清に由来し、その濃度は血液脳関門により一定に維持されていると考えられているが、一部中枢神経組織内で産生されているとの報告もある。 髄液蛋白はさまざまな中枢神経系の病態を反映するため、日常検査における必須項目の1つとされる。疾患によっては増加する蛋白組成が異なることがある。 腰椎穿刺による髄液蛋白の基準値は、健常成人で10〜52.6 mg/dLと幅があるが一般的には50 mg/dL以上が病的増加とされている。 但し、新生児・小児では年齢により基準値がかなり変動するので注意が必要である。また、脳室穿刺による髄液蛋白は腰椎穿刺に比較して低く、その30%程度にとどまる。 この理由として、脳室では直接髄液が産生され、入れ替わりが速いのに対して腰椎部では遅く、血液脳関門を介した蛋白透過性が高いためと考えられる。

測定機器:日本電子BM6050(平成26年3月24日より)
     日本電子BM1650(平成18年7月18日より平成26年3月20日まで)
     オーションマスター(平成17年3月28日から平成18年7月14日まで)
     コバスミラプラス(平成17年3月25日まで)

測定方法:ピロガロールレッド法(平成18年7月18日より)
     ブロモピロガロールレッド発色法(平成17年3月28日から平成18年7月14日まで)
     ピロガロールレッド法(平成17年3月25日まで)

測定試薬:自動分析装置用試薬-ARワコーマイクロTP-AR/2-PM(富士フィルム和光純薬株式会社(平成18年7月18日より)
     アークレイ(平成17年3月28日から平成18年7月14日まで)
     和光純薬(平成17年3月25日まで)

基準値(文献参照値)
検体 基準値
腰椎髄液 15〜45 mg/dL
後頭下液 15〜25 mg/dL
脳室液 15〜15 mg/dL
小児の基準値
小児は成人よりも低値であり年齢とともに軽度増加傾向がみられる。

異常値を示す疾患
1.血液髄液関門が正常で血漿蛋白異常を反映する場合
中枢神経系疾患と関係なく、血漿中の蛋白変化が髄液にも認められるもの。M蛋白、ネフローゼ症候群、肝硬変など。
2.血液髄液関門の破壊により、血漿蛋白が混入する場合
1)髄液または脈絡叢の毛細血管の透過性が増加する場合。髄膜炎、頭蓋内腫瘍、脳卒中など。髄膜炎では、細菌性が著明に増加し、中等度が結核性、真菌性でありウイルス性では軽度(100mg/dL以下)の増加である。
2)くも膜下に機械的閉塞がある場合には、その部分から末梢部にうっ滞する髄液に同様の変化がみられる。脊髄腫瘍、癒着性くも膜炎など。
3.免疫グロブリンの局所産生による場合
血清蛋白に比して著しくγ分画が増加し、中枢組織に浸潤するIg産生細胞によって産生された免疫グロブリンが髄液中に放出されると考えられる。蛋白が増加するときは、細胞数も増加が認められる。 しかし細胞数増加のない場合もあり、これを蛋白細胞乖離と呼び、Guillain-Barre症候群において特徴的な所見である。

採取容器:茶)生化学一般用分離剤入り試験管

関連項目
プレアルブミン

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