尿一般定性,尿沈渣

検査法および使用機器
  尿定性: US-3500(栄研化学株式会社)(令和4年3月22日から)
      US-3100Rplus(栄研化学株式会社)(平成24年4月25日から令和4年3月21日まで)
      ユリフッレトS9UB測定機器AUTION MAX AX−4280(アークレイ)(平成24年4月24日まで)

尿定性測定項目
  比重、pH、蛋白、糖、ケトン体、潜血、ウロビリノゲン、ビリルビン、白血球、亜硝酸塩、色調、混濁

臨床的意義
<尿定性>
 比重:通常比重は1.010〜1.025で尿の希釈、濃縮の状態を知ることができる。
    糖尿、蛋白尿では1.030以上の高比重尿、尿崩症では1.006以下の低比重尿、腎機能不全では1.010に固定する等張尿を呈することがある。
 pH:尿のpHは4.5〜8.0で、食事や運動等の生理的要因や病的要因によって変動する。
   酸性尿:アシドーシス、発熱、肉類摂取、酸性薬剤等
   アルカリ性尿:アルカローシス、野菜摂取、尿路感染症、アルカリ薬剤等
 蛋白:尿中には少量の蛋白が排泄されているが、試験紙法等の検査では検出されない程度の量である。試験紙法で検出される主な蛋白はアルブミンである。
    @生理的蛋白尿:発熱、運動、起立性、入浴
    A病的蛋白尿
    腎前性:ヘモグロビン尿、ミオグロビン尿、BJ蛋白、心不全等
    腎性:糸球体性(糸球体性腎炎、ネフローゼ症候群、膜性腎症、IgA腎症、糖尿病性腎症等)
       尿細管性(Fanconi症候群、水銀・カドミウム・重クロム酸中毒、腎毒性薬剤による腎障害等)
    腎後性:尿管・膀胱・尿道の炎症、結石、腫瘍等
 糖:正常人では2〜20mg/dL、1日に40〜85mgは排泄されるが、試験紙法等の検査では検出されない。血中濃度が腎の排泄閾値を越えると尿中に出現する。
   尿糖陽性の疾患
   糖尿病、IGT、甲状腺機能亢進、末端肥大症、クッシング症候群、副腎髄質腫瘍、脳血管障害、脳腫瘍、飢餓、妊娠、慢性消耗性疾患、感染症等
 ケトン体:ケトン体はアセトン、アセト酢酸、β-ヒドラキシ酪酸の総称で、正常人では血中、尿中ともに検出されない。糖尿病や絶食が続くと脂肪の分解が起こり、血中、尿中のケトン体が増加しケトーシスとなる。さらにケトン体が著増すると体が酸性に傾きケトアシドーシスとなる。
     ケトン体陽性の疾患:コントロール不十分な糖尿病、下痢、嘔吐、絶食、発熱、脂肪の過食等
 潜血:潜血反応は尿中の遊離ヘモグロビン、ミオグロビン、赤血球と反応して陽性となる。
    @糸球体性血尿:糸球体基底膜の破綻による。糸球体性腎炎、膜性増殖性腎炎、IgA腎症等
    A尿細管・間質性血尿:主として尿細管基底膜の破綻による。間質性腎炎、腎盂腎炎等
    B尿路系血尿:泌尿器科的血尿。尿路の腫瘍、結石、炎症、外傷等
    ビリルビン・ウロビリノゲン:胆汁として排泄された直接ビリルビンが還元されてウロビリノゲンとなる。一部は腸内循環で肝に戻り酸化されビリルビンとなる。そのうち一部が尿中に排泄される。
       Urb↑・Bil(−):溶血性貧血、便秘、腸閉塞
       Urb↑・Bil(+):肝細胞障害
       Urb↓・Bil(+):胆汁鬱滞、閉塞性黄疸
 白血球:腎・尿路系の感染症や尿路結石などの炎症性病変があることを示す。
 亜硝酸塩:食物の代謝産物である硝酸塩は、大腸菌・腸内細菌科に属する細菌、緑膿菌、腸球菌などによって還元され、亜硝酸塩となる。尿中亜硝酸塩は細菌による硝酸塩の還元によってのみ生成されるため、細菌尿の診断に用いられる。
 色調:通常淡黄〜麦わら黄色で透明。その他 血尿、ミオグロビン尿、ビリルビン尿、細菌尿等が観られる。
 混濁:細菌尿、結晶・塩類尿などに観られる。

尿定性検査半定量値報告(平成21年6月11日より平成24年4月24日まで)

検査項目 判定の解釈および測定範囲
タンパク 定性値 ± 1+ 2+ 3+ 4+
半定量値(mg/dL) 10 20 30 50 70 100 200 300 600 OVER
グルコース 定性値 ± 1+ 2+ 3+ 4+
半定量値(mg/dL) 30 50 70 100 150 200 300 500 1000 OVER

尿定性検査半定量値報告(平成24年4月25日より)

測定項目 判定の解釈
潜血(ヘモグロビン) ± 1+ 2+ 3+
0.03 0.06 0.15 0.75 mg/dL
蛋白質 ± 1+ 2+ 3+ 4+
15 30 100 300 1000 mg/dL
ブドウ糖 ± 1+ 2+ 3+ 4+
50 100 250 500 2000 mg/dL

一致率(令和4年3月15日)
尿定性検査:US-3500 v.s US-3100Rplus

一致率 ±1ランク一致率
タンパク質 66.1% 100.0%
ブドウ糖 97.3% 100.0%
ケトン体 99.7% 100.0%
潜血 89.5% 99.5%
ウロビリノーゲン 98.7% 100.0%
ビリルビン 100.0% 100.0%
白血球 93.8% 99.8%
亜硝酸塩 99.8% 100.0%
PH 75.6% 100.0%

比重

平成24年4月25日
尿定性検査:US-3100RPlus v.s. AX4280

一致率 ±1ランク一致率
タンパク質 89.2% 100.0%
ブドウ糖 100.0% 100.0%
ケトン体 99.3% 100.0%
潜血 84.2% 100.0%
ウロビリノーゲン 99.3% 100.0%
ビリルビン 100.0% 100.0%
白血球 84.2% 100.0%
亜硝酸塩 100.0% 100.0%
PH 38.8% 98.6%
混濁 90.6% 100.0%

比重

尿沈渣:UF-5000(シスメックス)(令和4年3月22日から)
    UF-1000i(シスメックス)(平成24年4月25日から令和4年3月21日まで)
    UF-110i(シスメックス)(平成24年4月24日まで)

<尿沈渣>
 赤血球:非糸球体型(dysmorphic):糸球体性腎炎、遺伝性腎炎、全身性疾患
     糸球体型(isomorphic):尿路腫瘍、結石、膀胱炎
 白血球:好中球:腎尿路系疾患全般 急性炎症 尿中は好中球が95%
     好酸球:アレルギー性膀胱炎、間質性腎炎、尿路変更術後、尿路結石
     リンパ球:慢性炎症、腎移植後拒絶反応時,腎尿路系結核
     単球:慢性炎症、薬物性腎障害による腎炎
     異型細胞:悪性リンパ腫、白血病
 扁平上皮:尿道炎、尿路感染症(トリコモナスや細菌などの感染)、機械的損傷(尿道結石症やカテーテル挿入後)、エストロゲン治療中にみられる。
 移行上皮:腎盂、腎杯から尿管、膀胱、内尿道口までの炎症,結石症、腫瘍、カテーテル挿入などの機械的損傷を受けたときにみられる。膀胱鏡後尿、結石症が除外された場合で、多数かつ集合性に見られ同時に血尿を伴う場合や、50歳以上の患者に於いては悪性細胞存在の疑いをもって検査を進めることが重要である。
 尿細管上皮:急性尿細管壊死と慢性経過を示す腎疾患がある。腎疾患系では尿蛋白陽性を伴う場合が多いが、糸球体疾患以外は尿蛋白陰性の場合もある。変性脱落は尿蛋白との関連性はほとんどなく、尿細管の腎虚血や薬物の作用により障害を受けると考えられている。尿中NAG活性の測定は定量的尿細管上皮細胞の障害を知る。
 封入体細胞:種々のウイルス感染疾患との関連性が示唆されている。細胞質内封入体細胞は、腎盂腎炎、膀胱炎、回腸導管術後、膀胱癌や健常人でも認められる。
 円柱:尿細管腔で蛋白成分がかたまった現象
    1)原尿流圧の減少
    2)尿の濃縮亢進
    3)アルブミン濃度の上昇
    4)PHの低下
   <含有成分が示す糸球体・尿細管の病態>
    赤血球円柱:糸球体・尿細管由来の出血
    白血球円柱:尿細管・間質の炎症
    上皮円柱:中毒症・虚血性尿細管壊死・腎実質性疾患
    脂肪円柱:尿細管の脂肪変性・腎実質性疾患

検査法および使用機器
尿沈渣:尿中有形成分測定機器 フローサイトメトリー法 UF-5000(シスメックス)
    鏡検法 蛋白(1+)以上、赤血球の定性とフローの結果が不一致、円柱の出現率が高い場合、病的円柱、小さい細胞、酵母の出現および機器的信頼性が低い結果の場合に行います。
    染色法:Sternheimer法(S染色)  ラボステインS(武藤化学)

結果表示

分類 単位
フローサイトメトリー 鏡検法
RBC /HPF * /HPF
WBC /HPF * /HPF
上皮 /HPF * /HPF
円柱 /LPF * /WF
細菌

*1μL当たりの数値をそれぞれの単位当たりに換算して表示

一致率(令和4年3月15日)
尿沈渣検査:UF5000 v.s.UF1000i

項目 ±1ランク一致率(%)
RBC:赤血球 98.9
WBC:白血球 99.8
EC:上皮細胞 99.2
CAST:円柱 98.7
BACT:細菌 99.4

平成24年4月25日
尿沈渣検査:UF110 v.s. UF1000
<目視一致率>

RBC 目視 V.S. UF-110 95.0%
目視 V.S. UF-1000 96.0%
WBC 目視 V.S. UF-110 95.8%
目視 V.S. UF-1000 97.3%
EC 目視 V.S. UF-110 96.5%
目視 V.S. UF-1000 98.3%

<目視一致率フラグなし>
RBC 目視 V.S. UF-110 98.4%
目視 V.S. UF-1000 99.4%
WBC 目視 V.S. UF-110 99.4%
目視 V.S. UF-1000 99.4%
EC 目視 V.S. UF-110 99.4%
目視 V.S. UF-1000 100.0%

<UF110V.S.UF1000>
RBC UF-110 v.s. UF-1000 97.3%
WBC UF-110 v.s. UF-1000 99.8%
EC UF-110 v.s. UF-1000 97.3%

尿沈渣検査(目視法)成分名称のカルテ表記(追加成分は赤字記載) 2022年3月22日より

名称 カルテ表記 名称 カルテ表記
変更後 変更前 変更後 変更前
円柱 CAST CAST 結晶・塩類 X'TAL・EN X'TAL・EN
硝子円柱 ガラス GLS 薬物 ヤクブツ MEDICINE
顆粒円柱 カリュウ GRA 尿酸アンモニウム ニョウサンNH2 NH2-URIC
上皮円柱 ジョウヒ EPI 尿酸Na ニョウサンNa URIC Na
脂肪円柱 シボウ FAT ヘマトイジン ヘマトイジン
ロウ様円柱 ロウヨウ WAX 不明結晶 フメイ FUMEI
赤血球円柱 セッケッキュウ RBC 細胞系・その他 CEL・OTHE CEL・OTHE
白血球円柱 ハッケッキュウ WBC 異型細胞 イケイサイボウ ABNOR-CE
Bence Jones蛋白円柱 BJタンパク BJP 異型細胞? イケイサイボ? ABNCELL?
幅広円柱 ハバヒロ BROAD ウイルス感染細胞 VIRUSCEL VIRUSCEL
塩類・結晶円柱 エン・ケッショウ EN・X'TAL 細胞質封入体 INCE.BDY INCE.BDY
空胞変性円柱 クウホウヘンセイ KUHO 核内封入体 INCO.BDY INCO.BDY
フィブリン円柱 フィブリン FIBURIN 卵円形脂肪体 O.F.B O.F.B
ヘモジデリン円柱 ヘモジデリン HEMOJIDE 脂肪球 シボウキュウ FAT-GLOB
結晶・塩類 X'TAL・EN X'TAL・EN 腸粘膜上皮 チョウジョウヒ CHOUJOHI
シュウ酸Ca シュウサンCa CA-OXALA 皮膚保護剤 ヒフホゴザイ HIFUHOGO
無晶性リン酸塩 リンサンエン UN-X'TAL 糞便成分 ベンセイブン FUNBEN
無晶性尿酸塩 ニョウサンエン ムショウセイニョウサンエン SPERM SPERM SPERM
リン酸アンモニウムMg リンサンNHMg NHMG-PKO 性腺分泌物 セイエキセイブン SEISEN
尿酸 ニョウサン URIC ACI マクロファージ マクロファージ MACPHAGE
ビリルビン ビリルビン BILIBIN トリコモナス トリコモナス TRICHO
リン酸Ca リンサンCa CA-PHOSP マルベリー小体 マルベリBDY
炭酸Ca タンサンCa CA-CARBO マルベリー細胞 マルベリCEL
2.8DHA 2.8DHA 2.8DHA 円柱上皮細胞 エンチュウCEL ENNCHUU
コレステロール コレステロール CHOLESTE ヘモジデリン顆粒 ヘモジデリン HEMOSIDE
シスチン シスチン CYSTIN デンプン粒 デンプンリュウ DENPUN
ロイシン ロイシン LEUCIN 分類不能細胞 ブンルイフノウ
チロシン チロシン TYROSINE

変更内容 2022年3月22日より

検査名 変更内容 検査名 変更内容
尿沈渣検査
(目視法)
円柱類の記載法 1-4/WF
5-9/WF
10-19/WF
20-29/WF
30-49/WF
50-99/WF
100-999/WF
>=1000/WF
実数/WF
30-49/WF
50-99/WF
>=100/WF
細胞成分名 分類不能細胞
ブンルイフノウ
不明細胞
FUMEI

採取容器:尿専用容器

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