リン酸化タウ蛋白: Tau protein phosphorylation

測定法: EIA 法

外注会社:LSIM (旧MCM平成26年3月31日まで)

臨床的意義
認知症は、単に老化に伴う記憶力や精神機能の低下といった誰にでも起きる現象では無く、後天的に脳の器質的障害により、病的に知能が低下した状態を指します。国内では 65 歳以上の高齢者の 1 割程度が認知症とされ、特に 85 歳を越える高齢者では急激に 発症率が上昇することから、今後高齢化社会を向かえる日本では大きな社会問題になっています。認知症を引き起こす病態として、血栓により一部の脳細胞が壊死する脳血管性認知症と、びまん性に細胞が壊死し、脳が萎縮するアルツハイマー型認知症などがあります。特に後者では神経原線維変化や老人斑などの特徴的な病理所見が認められます。これら脳の器質的な変化はタウ蛋白やアミロイドβ蛋白質などの沈着が原因とされます。タウ蛋白は神経軸索内に存在する分子量約5万の蛋白で、細胞骨格を形成し細胞内の蛋白質の輸送や細胞内小器官輸送機能を有する微小管を構造的に安定化させます。脳内にもっとも多く存在することから、神経変性疾患では、脳脊髄液中に多量に放出されます。また、リン酸化酵素によりタウ蛋白が過剰にリン酸化されると微小管結合能を失い、遊離したタウ蛋白同士がお互いに結合し、不溶性の凝集体を形成します。この凝集体がアルツハイマー型認知症に特徴的な神経原線維変化の原因物質とされ、同認知症患者の脳脊髄液中にはリン酸化タウ蛋白が過剰に存在することから、アルツハイマー型認知症の診断マーカーとして利用されています。アミロイドβ蛋白質(Aβ) は、40 前後のアミノ酸残基からなる疎水性のペプチドで、カルボキシ基末端側の断端の違いにより、大まかにはAβ40とAβ42とに分けられます。特にAβ42は不溶性・凝集性が強いため蓄積しやすく、また、神経細胞毒性も強いと考えられています。また、アルツハイマー型認知症に認められる老人斑はAβの蓄積(特にAβ42)が原因と考えられており、認知症発症に強く関わる検査として注目を浴びています。なお、タウ蛋白はクロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)診断で保険点数が適用されますが、弊社では検体取り扱い等の問題があるためCJDの診断を目的とする患者検体は受託できません。しかしながら、アルツハイマー型認知症の診断にはCJDを否定することが有用であることから、CJDの除外診断目的としてタウ蛋白検査も併せてご案内させていただきます。


基準値:  
設定なし pg/mL

採取容器:LSI(25


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