アミノ酸, amino acid
平成26年6月9日より外注(LSIM)

臨床的意義
 
アミノ酸は同一分子内にアミノ基とカルボキシル基をもつ両性物質の総称であり、蛋白合成あるいはアンモニア、尿素などに分解される。また一部のアミノ酸(特にアラニン)は糖新生に用いられる。血漿遊離アミノ酸は主体アミノ酸プールの一部を構成し、血漿遊離アミノ酸は血漿への流入(食事のアミノ酸量、吸収速度、生体蛋白の分解速度、必須アミノ酸合成速度)と流出量(生体組織のアミノ酸摂取速度、蛋白合成速度、分解速度)によって支配され、動的平衡状態にある。アミノ酸濃度の測定は生体内アミノ酸、蛋白の動態
や代謝異常を推定する重要な検査法である。尿中アミノ酸量はoverflow型か、renal型(再吸収障害)かを区別するのに有用。臨床的意義としては、先天性代謝異常、肝障害の重傷度、栄養状態の把握などに有用である。

測定原理: HPLC法
 
除蛋白したサンプルをph2〜3の酸性の緩衝液でアミノ酸を酸性にし、陽イオン交換樹脂に吸着させ展開液のph、イオン強度を低い状態から高い状態にしていくと、アミノ酸は酸性、中性、塩基性の順に遊離してくる。これに発色試薬であるニンヒドリンを加え加熱すると、アミノ酸を含む物質は発色する。発色したアミノ酸を570nm、440nmで測定する。

測定機器: 
JLC500(日本電子)(平成26年6月8日まで)

異常値を示す疾患(*尿中にも↑)

先天性アミノ酸代謝異常    フェニルケトン尿症 *Phe↑
先天性アミノ酸代謝異常    高チロシン血症 *Tyr↑
先天性アミノ酸代謝異常    メープルシロップ尿症 Val↑ Leu↑ Ile↑
先天性アミノ酸代謝異常    高シトルリン血症 *Cit↑
先天性アミノ酸代謝異常    ヒスチジン血症 His↑
肝疾患(劇症肝炎・肝硬変) Val↓ Leu↓ Ile↓(BCAAの低下)Tyr↑ Phe↑ Trp↑(AAAの上昇) Met↑
腎疾患(腎不全) 必須アミノ酸↓ 非必須アミノ酸↑ Tyr↑
内分泌・代謝疾患       糖尿病(ケトアシドーシス) Ile↑ Leu↑ Val↑ Phe↑ Tyr↑Ala↓ Ser↓
インスリノーマ Ala↑ Val↓ Leu↓ Ile↓
栄養障害 多くのアミノ酸は↓
術後・火傷など Phe↓ Tyr↓ Leu↑ Ile↑ Val↑


基準値

参考値(血漿) nmol/mL 参考値(血漿)LSI:nmol/mL 参考値(尿)LSI:
μmol/L
Taurine 43〜89   35.2〜70.0  132.8〜2045
Phosphoethanoiamine ND  ND 5.9〜76.6
Asparic acid < 5 < 3.2 < 18.8
Hydroxyproline < 42 5.4〜18.2 < 11.7
Threonine 81〜219 89.2〜205.0 29.5〜455.8
Serine 98〜174 91.5〜161.8 74.0〜817.2
Asparagine 69〜134 40.8〜76.5 24.2〜316.9
Glutamic acid 10〜60 10.8〜44.4 5.1〜84.6
Glutamine 657〜877 488.2〜733.1 93.7〜1184
Sarcosine ND ND ND
α-aminoadipic acid ND ND 10.1〜72.4
Proline 123〜308 89.6〜258.8 < 11.5
Glycine 139〜335 153.2〜362.1 263.3〜3386
Alanine 176〜558 239.9〜510.2 47.8〜803.5
Citruline 19〜46 20.4〜44.8 < 21.7
α-amino butyric acid 8〜27 11.0〜25.7 2.2〜27.9
Valine 170〜315 158.4〜287.7 8.0〜78.9
Cystine 28〜62 36.5〜56.0 8.6〜124.7
Cystathionine < 7 ND 3.4〜50.1
Methionine 19〜45 19.2〜32.7 2.6〜37.8
Isoleucine 43〜114 41.3〜84.9 3.0〜28.8
Leucine 82〜176 80.9〜154.3 6.0〜61.8
Tyrosine 53〜104 50.2〜82.6 21.5〜255.1
Phenylalanine 45〜83 45.7〜76.5 11.8〜104.5
β-Alanine < 10 < 7.7 < 56.9
β-Amino-Iso-butyric acid ND < 3.7 18.4〜1695
γ-Amino butyric acid ND ND ND
Monoethanolamine < 9 6.0〜10.7 100.1〜937.9
Hydroxylysine ND ND < 11.6
Ornithine 34〜80 43.2〜95.7 3.6〜29.0
Tryptophan 39〜89 41.4〜65.5 20〜150
Lysine 113〜254 118.7〜257.0 23.6〜2000
1-Methylhistidine < 15 < 12.8 50〜535.2
Histidine 65〜117 67.9〜97.1 200.6〜2367
3-Methylhistidine < 15 2.9〜6.8 100〜500
Anserine ND ND <62.3
Carnosine ND < 6.3 2.1〜33.0
Arginine 63〜163 46.0〜121.7 3.4〜47.8
フィッシャー比 2.3〜4.3  

フィッシャー比(分岐鎖アミノ酸/芳香族アミノ酸のモル比)

ヘパリン加全血放置によりNH3、Asp、Glu、Tau、Orn、が増加し、Arg、Cysは減少する。

生理的変動 
・ すべてのアミノ酸は日内変動を示すが、蛋白の摂取量に異なるがTyr、Phe、Trp、が変動が大きい。
・ 男性が女性より高値の傾向がある。
・ 加齢によりCys、Glu、Gln、Gly、Cit、Met、Tyr、Orn、Lys、His、Arg、が高値をとる傾向がある。

採取容器: (緑)ヘパリンNa入り試験管

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