血糖, ブドウ糖(グルコース), blood sugar, glucose 

臨床的意義
【血 糖】血糖は生体のエネルギー源として、最も重要な物質であり、その濃度は腸管からの糖の吸収、肝における糖新生とグリコーゲンの合成・分解、末梢組織の糖利用、腎からの排泄などの諸因子によって左右され、その調節には自律神経と各種ホルモンが密に関係しています。血糖低下にはインスリン、血糖上昇にはエピネフリン・グルカゴン・成長ホルモン・副腎皮質ホルモン・ATCH・甲状腺ホルモンなどが関係し、これらの拮抗および協調作用によって、血糖値が微妙に調節されています。

【尿 糖】血液中のグルコースは腎糸球体で濾過され尿細管で再吸収されますが、いき値(160〜180mg/dl)を超えた高血糖になると、腎で再吸収されず、糖尿病で代表されるようにグルコースの尿中排泄量が異常高値になります。血糖値が基準範囲内にもかかわらず、腎機能が低下して、いき値が下がり、糖尿になることがあります。

【髄液糖】髄液中の糖値は血糖値の約2/3程度で、血糖値に並行して増減するので、異常の場合には血糖値と対比して判定する必要があります。病的状態においては、さらに脈絡叢およびクモ膜下腔毛細管の透過性・髄液の糖分解速度等の変化によって、増減します。

高値を示す疾患
【血 糖】糖尿病、インスリン分泌の減少、低活性インスリン分泌、抗インスリン因子の過剰、インスリンレセプターの異常

【尿 糖】糖尿病、二次性糖尿病、腎性糖尿病、大量の糖質摂取、肝疾患、肥満、アドレナリンやインスリンの異常分泌などによる糖同化いきの低下、グリコーゲンの分解促進、急性膵炎、急性肝障害、甲状腺機能亢進症、下垂体機能亢進症、副腎機能亢進症

【髄液糖】糖尿病、脳腫瘍、脳出血、尿毒症、日本脳炎*、灰白脊髄炎*
     (*は正常または軽度に高値となります)

低値を示す疾患
【血 糖】膵性・膵外性・免疫機構の関与するもの

【髄液糖】髄膜炎(細菌および細胞の糖分解作用、ウイルス性は通常低値ならない)、帯状ヘルペス脳炎、クモ膜下出血(血中酵素の解糖作用)

測定方法: GOD(glucose oxidase)固定化酵素電極による最大反応加速解析法

測定原理(GOD電極法)
GODを固定化した酵素膜と金陰電極および銀塩化銀陽電極を組み合わせ、GOD反応により消費される酸素量を測定します。
1)酵素の作用により電極表面で、下記のGOD反応が起こります。
               GOD
グルコース + O2 + H2O → グルコン酸 + H2O2
この反応で、反応液中の酸素が消費されます。

2)この酸素消費量を金陰極と銀塩化銀陽極からなる電極により、電流量として測定します。電極内部では、下記の反応が起こり、電流が流れ、この電流量は酸素分圧に比例します。酸素消費量は検体中のグルコース濃度に比例します。

金陰極     : O2 + 2 H2O + 4e− → 4OH− 
銀−塩化銀陽極: 4Ag + 4Cl → 4AgCl + 4e−

さらに、本法では、酸素消費量の変化をニ次微分することによって反応加速度を求め、この加速度の最大値を検知して、グルコースを測定しています。反応加速度もまた検体中のグルコース濃度に比例します。

測定機器および測定時間
Glucoroder−NX(株式会社エイアンドティー製造、株式会社シノテスト販売)
約3秒

基準範囲
空腹時血糖: 73〜109 mg/dL (平成27年7月1日より共用基準範囲へ変更)
         
70〜110 mg/dL(岡山県医師会制定:平成16年4月より平成27年6月まで)                      65〜105 mg/dl(平成16年3月まで)

尿糖: 0 mg/dL、髄液糖: 40〜75mg/dL(文献引用)

採取容器: 
(灰)FNa入り試験管

参考文献
1) Glucoroder−NX取扱説明書(株式会社エイアンドティー製造、株式会社シノテスト販売)
2) 越智幸男:グルコース.日本臨床 47(増刊号上巻):457-461,1989
3) 金井泉 金井正光:W糖質.臨床検査法提要 第29版(第9刷):440-449,1990
4) 金井泉 金井正光:5.ブドウ糖.臨床検査法提要 第29版(第9刷):1132-1133,1990
5) 堺秀人:(4)糖尿.検査と技術 20(増刊号):32-33,1992
6) 佐々木禎一:(1)グルコース(ブドウ糖).検査と技術 20(増刊号):68-69,1992

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