デルタ肝炎ウイルス抗体, HDV (Delta hepatitis virus)
受託中止平成15年5月26日より


測定法: EIA法

外注会社:大塚

臨床的意義
 1977年Rizzettoらは、HBs抗原陽性者の肝細胞内にHBc抗原とは異なる新しい抗原と、血清中にこれに対応する抗体を発見し、デルタ抗原およびデルタ抗体として報告した。当初は、B型肝炎ウイルス(HBV)の部分抗原と考えられていたが、デルタ抗原保有者の血中からHBVとは異なった肝炎を引き起こす感染性粒子が同定され、デルタ肝炎ウイルス(HDV)と呼ばれるようになった。HDVは、HBVをヘルパーウイルスとして増殖する肝炎ウイルスである。HBVを外殻とし、core部分にRNA genomeとデルタ抗原を包含する二重構造を示す。HBV感染と同時、あるいは、HBVキャリアに重感染する2つの感染経路があり、感染ルートは、HBVと同じく輸血、針汚染、性行為、母子間などが主体と考えられるが、HDV感染はHBV感染よりはるかに強い感染力をもつ。このため、欧米の麻薬常習者には注射器を介して広く浸淫しており、HBs抗原陽性者の50%以上に及ぶとした報告もある。一方HBVキャリアの比率が高く、絶対数も多い東南アジアや日本では、D型肝炎の頻度は比較的低く、特に我が国では1%未満の頻度と考えられている。我が国では、HDV抗体の診断は、非常に高抗体価のHDV抗体しか捕捉しないRIA法での報告であるが、諸外国では非常に低力価のHDV抗体まで引っかけてくるEIA法での報告であり、検査法を統一したうえでの頻度の比較が必要である。HDV感染の診断を目的とする。まず、HBs抗原陽性者についてHDVの関与を疑いHDVマーカーの検査を行う。我が国では、D型肝炎の頻度が低く見逃されやすいが、HBeAg陰性HBV-DNA陰性B型肝炎、B型劇症肝炎などの原因としてHDV感染を考慮し、HDVマーカーの検索を行うべきであろう。HDV抗体は、HDV感染の結果出現するトータルの抗体であり、HBV感染でのHBc抗体やC型肝炎ウイルス(HCV)感染時のHCV抗体、特にcore抗体と感染マーカーとしての意義は同じである。HDV抗体は、感染初期には出現せず、HDV持続感染状態なら高力価、一過性感染なら低力価、あるいは一過性の抗体保有となる。RIA法によるHDV抗体測定法は、比較的強陽性の抗体反応しか捕捉できず、陽性者はHDVキャリアと考えてよい。EIA法によるHDV抗体測定法は、感度が鋭敏で陽性率も高く、HDV一過性感染例も捕捉するが、特異性の立証に問題がある。IgM型HDV抗体は、他のウイルス感染と同様、感染初期から出現し、IgG型HDV抗体出現までのウインドウ期間を埋めるHDV初感染マーカーである。感染後、数年間陽性を持続する。しかし、HDV重複感染後に慢性活動性肝炎へ移行した場合は、継続的に検出される。

基準値: (-)

採取容器:茶)生化学一般用分離剤入り試験管

関連項目

HBs抗原
HBe抗原
HBe抗体
HBV-DNA

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